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  • 2011/06/23 掲載

日産自動車の躍進支えたIT戦略、数々の課題を抱える“フルアウトソーシング”からの脱却

日産自動車 部長 金子淳史氏

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かつて情報システムのアウトソーシングを、信頼するほぼ1社に集中していた日産自動車。しかしトラブル件数は減らず、障害時の復旧にも時間がかかり、コスト構造も不明瞭だったという。そこで目指したのが、フルアウトソーシングから適材適所でサービスプロバイダを選択するアウトタスキングへのチェンジだ。この課題に対して、日産自動車はどのように取り組んだのか。日産自動車 グローバル情報システム本部 ゼロエミッションシステム部 部長の金子淳史氏が明らかにする。

数多くの問題を抱えていた従来のアウトソーシング体制

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日産自動車
グローバル情報システム本部
ゼロエミッションシステム部
部長
金子淳史氏
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 1999年、日産自動車は大きな経営危機に直面していた。カルロス・ゴーン氏がCOOに就任し、「日産リバイバルプラン」に着手し始めた時期である。当然情報システム部門にもコスト削減の要求があり、これを解決する方法として、同部門では翌2000年からフルアウトソーシング体制を採り始めることになる。

 ガートナー ソーシング サミット 2011で登壇した金子氏は、当時の状況を次のように振り返る。

「外部のアウトソーサ、つまりプロフェッショナルに相談したところ、我々に任せれば未来は明るいといわれた」(金子氏)

 具体的には、10年契約で非常に安価、環境変化にも柔軟に対応できる、常に最新の技術で最新の運用ができる、といったメリットが提示された。また最新技術を使って改善していくので、そこで得られたコスト削減分はお互いシェアすることで、Win-Winになるともいわれた。

「ところが2~3年後、本当にそうなのだろうかというさまざまな事象が露呈し始めた」(金子氏)

 たとえばコストについては、本当に安いのかという疑問が出てきたため、色々なベンチマークを行ってみたところ、必ずしもそうではないことが分かった。そこでコスト構造を説明して欲しいと要求したが、契約上、それはできないと断られたという。

 また最低支払保障ラインというものが設定されており、作業が目標ポイントまで進んでいなくても、契約で決めた金額については、ユーザー企業側が支払わなければならない。

「これは変だ、きちんと仕事をしてもらっていないのに我々はお金を払わなければいけないのか?というごく当たり前の思いも出てきた」(金子氏)

 システムの品質についてもトラブル件数が一向に減らず、復旧にも時間がかかる。よくよく考えてみれば、改善につながるSLA(Service Level Agreement:サービス品質保証契約)もなかった。

 またサービスプロバイダの提供するメインフレーム以外のマシンについては、すべて日産側でアップデートしていかなければならない。また、運用改善は売上高減につながるため、アウトソーサ側の経営層は消極的である。オフショア化も検討したが、お金も時間もかかる、とアウトソーサ側から言われ、結果的に改善が進まない。

「契約期間が残り3年になった時、この先、どうしようかと考え始めた」(金子氏)

【次ページ】3つのフェーズでアウトタスキングへ移行
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