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  • 2015/11/12 掲載

建設機械メーカーのコマツ、“ダントツ”なイノベーションを起こす4つの戦略

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2兆円企業目前となった大手建設機械メーカーの小松製作所(以下、コマツ)。2003年には3%を切っていた営業利益率が、2015年現在では10%を超えている。同社が推進した構造改革の方向性は大きく2つで、1つが成長とコストを分離すること、そしてもう1つが販売価格を改善することだ。また、コマツでは構造改革に加えて、さまざまなイノベーションを創出してきた。その根本には4つの戦略があるという。コマツの構造改革や商品開発戦略について、コマツ 代表取締役会長 野路 國夫氏が明らかにした。
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コマツが着手した構造改革とは?

 かつては3%を切っていた営業利益率を2ケタにまで伸ばした大手建設機械メーカーのコマツ。同社が取り組んだ構造改革は、成長とコストの分離と、販売価格の改善だ。

 「成長とコストの分離については、変動費の改善、固定費の削減、ERPの導入の大きく3つに取り組んだ」と語ったのは、TOKYO イノベーションリーダーズサミットに登壇したコマツ 代表取締役会長 野路 國夫氏だ。

「売上高が以前のほぼ2倍になったにもかかわらず、固定費は5割で変わっていなかった。通常生産量が2倍になれば、相対的に固定費の比率は下がるはずだ。そこで(注1)SVM(Standard Variable Cost)管理という手法を用いて、徹底的に変動費を改善した。また固定費そのものを削減する改革も行い、関係会社や機種数の削減、国内/海外工場の再編、販売在庫や補給部品倉庫の統廃合などを実施した」(野路氏)

(注1)SVMとは、売上高からSVC(Standard Variable Cost:購買品や社内加工費等の変動費)と販売直接費を差し引いた額である。

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小松製作所 代表取締役会長 野路 國夫氏

 コマツにとって、固定費の削減効果が最も高かったのがERPの導入だ。「ERPによって全世界で生産管理システムが統一され、どの国の工場からでも、全世界のマーケットに製品を販売できるようになった」(野路氏)

 次に販売価格の改善は、いわば”ブランドマネジメント活動”で、優良顧客を開拓して、その数を増やしていくことを目的とするものだ。野路氏は「コマツのダントツ商品、ダントツサービス、そしてダントツソリューションを開発して、販売する。これにより、もっと高く買ってくれるお客様をたくさん増やすことを目指した」と語った。

技術革新と顧客価値創造がなければイノベーションは起こせない

 構造改革に加え、コマツが推進してきたのがイノベーション創出だ。コマツには商品開発戦略における4カ条がある。これは、同社がイノベーションを起こすための基本となる戦略だ。

1. イノベーションによって成長すること
2. 重要キーコンポーネントは国内で開発すること
3. オープンイノベーション(=技術革新と顧客価値創造)
4. 開発と生産は同一の場所で行うこと

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 このうち、野路氏がまず触れたのが、重要キーコンポーネントの国内開発と開発/生産場所の一本化だ。エンジンや油圧計、ミッションなどのキーコンポーネントは、コマツの技術だけでなく、素材メーカーや部品メーカーなど優秀なパートナー企業の技術力があって初めて作ることができる。

「国内にはそうしたパートナーがたくさんいる。だから重要キーコンポーネントは国内で開発することに決めた。また開発技術者と生産技術者が同じ場所にいることで、両者が“擦り合わせ”をしながらより品質の高い商品を開発することが可能となる」(野路氏)

 イノベーションによる成長については、「ICTの進化によって、擦り合わせだけではもうイノベーションは起こせないと考えた。そこで開発戦略にオープンイノベーションという項目を入れた」と説明する。

「コマツでは、技術革新と新たな顧客価値創造とが一緒になって初めて、イノベーションを起こすことができる商品やサービスが生まれる。他社には真似のできない技術を商品に織り込み、そしてビジネスモデルを変える。たとえば、技術革新のスピードがまだ追い付いていないのに、理想的な顧客価値の創造だけを考えていても時代にはマッチしない。技術革新と顧客価値創造の2つをしっかりと見ていく必要がある」(野路氏)

 また野路氏は経営陣が技術のトレンドをきちんと把握しておかなければならない点も強調する。

「技術の詳細まで詳しく理解する必要はないが、技術のトレンドが2020年、あるいは2030年にどうなっているのかを知らなければならない」(野路氏)

 そのために、経営陣は現場に足を運ぶことが非常に重要だという。ここで野路氏のいう現場とは自社の生産現場だけでなく、顧客企業やパートナー企業も含めての現場だ。野路氏は続ける。

「その上で、大前提として自社のコア技術だけはしっかりと持っていなければ話にならない。これがなければ、すぐに競合他社に追い付かれてしまう。コアの技術を持って、オープンイノベーションに挑むこと。これが非常に大切だ」

【次ページ】技術革新と顧客価値創造がなければイノベーションは起こせない
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