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  • 2024/06/21 掲載

進化した食品製造ロボ、繊細な食品も扱える秘密【FOOMA JAPAN 2024】

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食品製造プロセスの機械化に関する恒例の展示会「FOOMA JAPAN 2024」が開催された。食品分野独自の課題は依然としてあるものの、ロボットは精度も速度も徐々に向上しており、使い方次第では現場戦力になる。そもそも求められている基本的な役割は他産業と同様で、労働集約的なピック&プレイスの自動化と、そのためのハンドや動作教示を容易にする技術である。食品製造ロボットの現在地について、不二精機やFingerVision、Thinker、コネクテッドロボティクスなどのスタートアップの取り組みを見てみよう。
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FingerVisionの視触覚センサー搭載ハンド
(写真:筆者撮影)

不二精機のネタ載せまでできるすしロボット

 国内トップシェアを持つおにぎりマシンや、麺をほぐして定量盛り付けられる機械で知られる不二精機は、今回のFOOMAでは従来の機械に加え、ライスバーガー成形ライン、省スペースの弁当盛り付け機や、一気通貫でご飯、少量パスタ、そしてカツを斜めに切って盛り付けて弁当を完成させるラインなどを出展した。

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不二精機 自動弁当盛り付けライン
(写真:筆者撮影)

 最大4枚の刃物を使い、単にカツを切るのではなく「斜めに切って」盛り付けるのである。

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食材の斜め切りカットと搬送を行うライン
(写真:筆者撮影)

 よく弁当にのっている、あの形態だ。任意の角度で斜めに切って盛ることで、よりボリュームがあるように見せられるのだ。カツ以外にもチキンも同じように切って盛り付けることができる。よくぞここまでと思ったが、このような工夫がないと現場には使われることがないということだろう。

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全自動でこの弁当が盛り付け可能
(写真:筆者撮影)

 気になる生産個数は現時点では1時間あたり600個で、今後、スピードアップさせていく。もっとも、人が不要なので、現時点でも人がおさえられない時間帯でもラインを動かして生産できる強みはある。

 2022年のFOOMAのときに筆者が「感動した」と書いた「おにぎり達人」も健在で、オーダーにしたがって人がマシンを使ってどんどんおにぎりを作って提供しており、当然のことながら今回も行列ができていた。

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不二精機 すしネタ自動盛り付けシステム
(写真:筆者撮影)

 驚いたのは、以前出展されていたロボットを使ったすしネタ自動盛り付けシステムが一気に進化して、実用的なものになっていたことだ。シャリ玉を作るだけのロボットではない。すしネタを事前にセットして冷蔵で保存しておいたトレーからロボットがネタを2つ同時に取って、シャリ玉の中心を認識して的確に置いていくのだ。速度は1皿あたり5秒。最大生産能力は1時間で1000枚だという。

不二精機 寿司ネタ自動盛り付けシステム

 不二精機 常務執行役員で営業管理本部 統括の島田 政昭氏は「スピードアップと確実性を大幅に向上させた。シャリ玉の中心にバッチリ載せられる。ハンドも2貫載せできる新しい方法にたどり着いた」と語る。デモではまず失敗しなかった。

 比較的、人の近くで動かすことになるシステムだが、協働ロボットではなく産業用ロボットを使っているのは動作速度の問題だ。今回のデモではレーザーセンサーを使って安全対策を施していた。実際にはロボットは天づりにし、システムを丸ごとケースに入れるかたちで人と仕切って運用することを想定しているとのことだった。実際に顧客から声がかかれば店舗での検証を踏まえて提供できるという。

 トレーにネタをセットする手間は必要だが、動かし始めれば、人と比べても遜色ない速度ですしを作っていくことができる。回転ずしのバックヤードで動かすのはもちろん、あえて見せるかたちにするのも面白そうだ。さまざまな可能性がありそうに思えた。

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2貫載せできるハンドは独自開発
(写真:筆者撮影)

 なおこのロボットは、以前本連載でも紹介したロボットスタートアップのZen-Saiと共同開発しているものだ。Zen-SaiはFOOMAでは不二精機のこのロボットのほか、串刺し機で知られるコジマ技研のブースでは以前から共同開発している食材供給ロボットを出展していた。串刺し機に食肉を提供していくロボットである。

「視触覚」を使って「ちょうどいい」力加減で食材を握る

 今回、一般メディアで1番露出していたのはFingerVisionだったのではなかろうか。FingerVisionは独自の「視触覚」センサを使って多品種・不定形の食材を扱えるハンドを開発しているスタートアップだ。透明素材の指先の中にカメラがあり、持ったものが滑る様子を画像で見て力や滑りの分布を判断する仕組みである。

FingerVision 触覚センサ付き具材盛付ロボット

 触覚センサ付き具材盛り付けロボットのデモでは外部カメラを使って卵焼きやシューマイのようなバラ積み食材を認識してつまんでトレーに入れていく様子を見せていた。ハンド部は取り外して水洗いも可能だ。さまざまなロボットアームのハンドとして使うことができるので、ほかのロボットスタートアップからも同社のハンドを使いたいといわれていた。

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FingerVisionの「視触覚」センサー。滑りをカメラで検知する
(写真:筆者撮影)

 同社のハンドの特徴は「ちょうどいいくらいの力加減」でものが持てるところだ。ぎゅっと握ると崩れてしまう、だし巻き卵や、唐揚げ、エビフライや巻きずしなどをトレーの任意の場所に並べていくこともできる。つかみそこなったときの検知にもこのセンサを使っている。

巻きずし盛付ロボット

 FingeVisionは経済産業省の「ロボットフレンドリー」事業の食品Technical Committeeにも参画している。この事業は、製造業の中でも最も人手がかかっているのが食品製造業であり、中でも機械化が最も遅れていて、生産性が製造業平均の1/3程度と低いのが弁当・惣菜製造であることから、そこを何とかロボット化しようというものだ。惣菜製造業のうち約半数の数十万人が盛り付け工程に従事していることから、盛り付けにフォーカスした事業となっている。

 FingeVisionのハンドを使ったシステムも、すでに複数の工場で稼働しているという。具体的にはスーパー「ベルク」の弁当・おかずを製造しているおかず工場のホームデリカと協力し、弁当盛り付けロボットシステム高速化に取り組んでいる。2024年3月の発表会では、いなりずしであれば、1時間あたり最大4000個の盛り付けができるとされた(当時のリリース)。

FIngerVision イシダ 盛付作業自動化ロボット

 FingerVision CEOの濃野 友紀氏によれば、製造業向けとして、より小型のハンドも開発中とのことだ。人間の指くらいのサイズになるという。 【次ページ】「繊細な」ウズラ卵やせんべいもピッキング

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