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食品製造技術の展示会「FOOMA JAPAN 2023」が開催された。今回も、人と一緒に働ける協働ロボットを中心にさまざまなロボット活用が提案されていた。ロボットがお惣菜を扱ったり、冷凍ハンバーグを移載したりしている様子は展示会映えする。さまざまな技術的ハードルも克服されつつある。しかしながら実際の食品製造現場でのロボット活用は順調に進んでいるとは言い難い。提供側の提案は今ひとつ芯を食っておらず、現場は現場で、さまざまな理由で最新技術の導入には二の足を踏んでいる。次の一手には何が必要なのだろうか。
協働ロボットを使った変種変量への対応
日本食品機械工業会が主催する食品製造総合展「FOOMA JAPAN 2023」が、2023年6月6日~9日の日程で行われた。出展社数は969、会期4日間の来場者数は10万人を超えた。
食品工場では「人手不足」と「廃棄ロス低減」が大きな課題となっている。これに対して自動機械やロボット活用は今や当たり前の選択肢の1つ。今回もロボット出展は目立った。
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THK ピッキングハンド「PRS-A+」による卵の取り扱い
特に安全柵なしで使える協働ロボットの活用提案は多く、昨年とほぼ同様、あるいはその発展版のソリューションを提案している会社も見られた。できれば、本誌上での
前回のレポート と合わせてご覧いただきたい。
以前から食品分野に対して積極的な安川電機は、今回は子会社のアイキューブデジタル、FAMSと連携。協働ロボットを使った原料取出しシステムやAI「Y's-Eye」活用の検品、植物工場での活用を提案していた。原料取出しシステムは棚からロボットが原料を取出して供給するシステムで、工場のセル生産システムを食品分野に適用したような仕組みだ。実際の食品製造でも、コンビニなどの変化する生産オーダーに対しては、このようなやり方で次々と変化する原料を供給することで変種変量に対応する必要があるのだという。
「高頻度の段取り替え」は、食品製造の悩みの種の1つだ。ロボットを使うことで省人化でき間違いが減るだけでなく、動作データを蓄積できる。原料取出しシステムなら在庫管理を見える化することで変種変量により対応しやすくできるし、植物工場であれば品質を安定化させられるというわけだ。
安全性と動作速度を両立させる人との協働作業
デンソーウェーブはCOBOTTA PROを使った人との協働計量作業をデモンストレーションしていた。実際の現場で人が2人向き合って作業している工程のうち、片方をロボットに置き換えたもので、作業内容は組み合わせ計量器を使い、計量器が指示した柔軟食材をロボットがソフトハンドを使ってピッキングして、規定量の重さにそろえる。いわゆる不定形食材の計量だ。今回はめんたいこを模したものが使われていた。実際にこうやって作業しているそうだ。
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デンソーウェーブ COBOTTA PROを使った協働計量作業
ロボットには、人と接触する可能性のあるハンド周辺をまるごと「タッチセンシングソフトカバー」で覆うことで、高速動作しながらも、もし接触したら必ず停止するようにして安全性を担保した。協働ロボットは安全柵なしで使うことができるが、本当に「協働」しようとすると、いわゆる協働モードに入って速度を遅くせざるを得なかったが、それでは結局十分なタクトタイムが出せず、現場から「使えない」と言われることになってしまう。かといって安全は絶対なので、ないがしろにはできない。そこでタッチセンサーを使おうというわけだ。
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デンソーウェーブ TechMagic 惣菜定量盛り付け
このほか、スタートアップのTechMagicの惣菜盛り付け用ハンドをブースでデモしていた。アイスクリームをすくうディッシャーのようなハンドで、合わせて3Dカメラを活用することで、サラダのような惣菜を高い重量精度で連続盛り付けできるという。狭い場所でも使える協働ロボットとの組み合わせで自動化を提案する。なお、ロボットにつけているジャケットも食品用で、高温調理や丸洗いにも対応する。
TechMagicは自社ブースでもデモを行い、そちらでは別のハンドできんぴらゴボウを扱っていた。TechMagicはキユーピーと資本業務提携したと6月20日に発表している。2030年に「未来型食品工場を共創する」ことを目指すという。
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TechMagic 惣菜盛り付けロボット
なお、惣菜の盛り付けについては、同じくスタートアップのコネクテッドロボティクスも惣菜盛り付けロボット「Delibot」をデモして、注目を集めていた。「Delibot」は現在9台が実際の現場で稼働中だという。2セット4台で1時間あたり1000食の盛り付けができる。「第2回 FOOMAアワード2023」にて優秀賞を受賞した。
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コネクテッドロボティクス惣菜盛り付けロボット「Delibot」
ほかにも続々、食品工場で使える?ロボット
食品は工業製品と違って、すべて形や大きさが異なり個体差がある。食品分野では不定形物を扱うことが必須だ。ロビットはレタスの芯などをカットする工程を自動化する「CUTR」の実動デモを紹介していた。カット位置を加工対象に合わせて変化させられる。パラメーターを変えることで除去率も変えられる。前回のFOOMAでは横向きで作業させていたが、下からアプローチさせることになったとのこと。
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ロビット 自動カットソリューション「CUTR」実働デモ
アールティはRGBと距離画像から食品のような不定形物3D認識を行う推論モデル作成モジュールと、オブジェクト検出モジュールを搭載した「NEKONOTE Vision(ネコノテビジョン)」を紹介。ピック&プレイスに提案する。アノテーションツールもあって、ユーザーが不定形物認識用モデルを作成することもできるという。同社が販売中のロボット「Foodly」を2台使ったデモを行っていた。
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アールティ 不定形認識「NEKONOTE Vision」
透明素材と小型カメラで指先の変形を検知する独自技術「視触覚」を持つFingerVisionは、スタートアップゾーンのほか、山善のブースで、一連のラインの中でエビフライをピックアップして弁当に入れるデモを行っていた。弁当は日替わりやリニューアルも多く、さまざまな食材に対応できないと設備稼働率が下がってしまう。同社の技術は指先の滑りを検知できるので、多様な食材に対応し、傷付けずにピック&プレイスができるという。
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山善ブース FingerVision 弁当・惣菜 盛り付けロボット
【次ページ】パレットへの積みつけや重量物の対応はロボットの得意分野
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