- 2025/04/16 掲載
無法地帯だった「横浜の町工場」が大激変、5年かけた「職場と人材」の大改革とは
連載:爆売れ工場のつくり方~日鉄工営編~
前編はこちら(この記事は後編です)
「無法地帯」と化した5年前の日鉄工営
日鉄工営が社内改革に取り組んだ約5年前の状況については、前編でも紹介した通りだ。「現場で働く現場社員が一番偉い」という組織風土があったことで「働いてれば良い」という風潮が蔓延。申請なく深夜労働を行う、現場工事で従業員が工具を忘れたときに申請なく高額な工具を購入するなど、無法地帯のような状況が続いていた。また、残業代目当てなどで「徹夜してでも仕事をする」社員もいたため、従業員の長時間労働は当たり前だった。残業代の支払いが高騰して原価率が高まり、結果として売上から設備投資に回す原資が足りない状況にあった。
この上、従業員の平均年齢は50歳代と高齢化も進んでいた。紺野氏は「もともと、この業界は高齢化が進んでいて、当社には今でも75歳の職人もいます」と話す。

代表取締役社長
紺野 亙氏
ただ本人が働きたいと思えば何歳でも働くことは、別に悪いことではない。問題なのは、先述したような「これまで社員がやりたい放題の環境で働いてきた環境」にあり、「これを放置することはコンプライアンス違反をはじめ、会社側にも、従業員側にも、お互いにリスクがある」ことだろう。
そのため、「就業規則を含めたルールを整備し、守らない社員には指導をしました。中には変化についていけず退職していった方もいました」。そして同社は「若返り」に向けた定期採用の仕組みも整備していった。
平均年齢「50→30歳代」、「若者採用に効いた」施策とは
同社は2021年、新卒の定期採用を本格化した。森氏は「これまで定期採用の枠組みがなかったところ、2021年から定期採用を本格的に開始し、初年度に大卒4名、高卒4名を採用しました」と語る。
企画業務部 部長補佐
森 玲菜氏
初年度に採用した新卒従業員は「コロナ禍での採用ということもあり、現在、残っているのは2名です」ということだが、2023年は高卒4人2024年高卒2人、と、新卒採用自体は継続している。
本来、町工場などの中小企業は若手採用に苦労する。だが同社では、「コンスタントに採用できています」(森氏)という。その一因として、紺野氏は「大卒、高卒初任給で言うと、大手一部上場の企業の平均水準にあります」と話す。
何より、「従業員用に住宅を借りて寮を完備していること」が採用面で大きな好影響を及ぼしているという。なぜなら、地方からの人材を積極的に採用することができるからだ。寮完備で本人負担は月2万円という条件であれば、「中小企業の割に給与条件は悪くないということで、地方の工業高校などから応募だけで20人くらい集まった年もあります」ということだ。
しかし、若い年代の気質や、長期的な“組織の新陳代謝”を見越して、新卒採用自体はある程度、継続しなければならない。そのため新卒採用を本格化しているわけだが、その結果、従業員の平均年齢は30歳代にまで下がった。
新卒社員の定着率についても好調で、「2024年に採用した2人はともに残っています。システム変革に伴う社内風土の変化によって、これまでなかなか若い人が定着しにくかった職人の世界でも、徐々に変化が生まれつつあります」(紺野氏)という。
では、人材定着の取り組みについて、さらに詳しくみていこう。 【次ページ】「社内風土の大改革」の中身
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