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  • 2024/12/20 掲載

どんどん増える「清掃ロボ」、アイリスオーヤマ・森ビル・日建設計が導く現場改革

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止まらない人手不足と省人化ニーズを背景に、サービスロボットの導入が本格的に進み始めている。配膳ロボットの次に期待される分野は「清掃」だ。ロボットは万能機械ではなく、人と協働する道具である。そのため、道具を有効活用するには既存業務を分析し、ロボットをどのように組み込めば限られた人材を有効に再配分できるのかを考える必要がある。この目的を達成するための環境整備や共通規格の作成も進んでいる。すでに1万台の清掃ロボットを現場に導入したアイリスオーヤマ、ロボット活用に以前から積極的な森ビル、ロボットの活用がしやすいビルノウハウの蓄積を目指す日建設計など、各社の試みから今後の展望を探る。
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アマノの床洗浄ロボット「HAPiiBOT(ハピボット)」。本連載記事でも紹介した中小企業省力化投資補助金の対象で半額が補助される
(写真:筆者撮影)

人手不足はまったなし、普遍的ニーズがある「清掃」ロボット

 配膳に続くロボット普及が期待されている領域が「清掃」である。清掃は公共空間やオフィスビル、店舗、病院、介護施設などだけでなく、工場や物流倉庫、クリーンルームや建設現場に至るまで、あらゆる業務に存在する共通課題であり、普遍的なニーズがある。普及し始めると効果や影響は非常に大きい。

オカムラ/江口 乾湿両用掃除機対応清掃ロボット「STRIVER Ⅱ」 ビルメン2024

 一方、今でも清掃における多くの作業が人手で行われている。先行する床清掃はともかく、トイレや風呂場など手間のかかる水回りの清掃をロボットで行うことは、まだしばらく難しそうだ。しかし今後も人手不足が解消されることは見込めない。

 よって必ず人手を必要とする作業向けに人を確保し続けるためには、人手でなくても作業できる部分はロボットを使って自動化して、人員のシフトを組み替えて、人を回せるようにする必要がある。

i-team i-Walk 手動洗浄機を自動化 ビルメンフェア2024

 ロボットの採用は各所で始まっている。しかしながらコストや現場運用での課題はまだまだ多い。ロボットは万能機械ではない。道具の1つにすぎない。何でもできるわけではない。だが床清掃の大半は十分な速度と品質で、できるようになっており、性能・価格的にも、だいぶこなれたロボットが市場に出てきている。

 運用現場においても、「できないこと」ばかりに目を向けるのではなく、できる部分、コストが見合う部分を見いだせる人たちから、積極的な運用が始まっている。

エムエムインターナショナル/YIJIAHE クラウド管理可能な屋内業務用清掃ロボット「JNNY20」ビルメンフェア2024

 そんな中、清掃や点検など、ビルメンテナンスに関する展示会「ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO 2024」が行われた。前回は各社から大量の清掃ロボットが会場に出展され、筆者自身もとても驚いた。今回ももちろんロボットは出展されていたが、やや落ち着いた印象だ。そうはいっても会場内は来場者たちの熱気であふれていた。

IWITH ROBOTICSが参考出展した「トイレ便器掃除ロボット」 ビルメンフェア2024

 特に、IWITH ROBOTICS(アイウイズロボティクス)が参考出展していた「トイレ便器掃除ロボット」は、多くの人の注目を集めていた。手動で便器にセットすると自動洗浄する。現実に使える環境は限られていそうで、現状ではあくまでプロトタイプという印象だった。なおIWITH ROBOTICSは、販促機能も兼ねた清掃ロボットがファミリーマートに採用されたことでも話題になった企業である。

「アイリスオーヤマ」はロボット定着化を図る

 いくつか講演も聞くことができた。アイリスオーヤマからは、法人向けサービスロボット事業を手がけるアイリスロボティクス 営業本部本部長の草野 耕蔵氏が「人手不足時代に求められるロボット活用~ロボット導入前診断とアフターサービスの重要性」と題したセミナーを行った。同社は2020年1月~2023年12月までの累計で、5000社に対して約1万台のサービスロボットを導入しているという。

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アイリスロボティクス 営業本部本部長 草野 耕蔵氏
(写真:筆者撮影)

 生産年齢人口は減少を続けており、2025年からは本格的に労働力人口が減ると考えられている。中には顕著に労働力が不足する都道府県も出てくる。特にビルメンテナンス業界は2030年までに90万人分が不足すると見られている。もちろんほかの職業との人の取り合いも本格的に始まっている。

 一方オーナー側からすれば、値上げ要求は受け入れたくないし、清掃品質は維持したい。清掃業者の経営者は人件費高騰で利益が厳しくなり、人手不足で新規物件を取りに行くことも難しい。現場管理者はスタッフ教育に手間と時間がかかるし、作業がマニュアル化されておらず、スタッフがやめると品質クレームにつながりやすいといった課題を抱えている。現場は現場で、人が休むと回らない。

 というわけでロボットの出番となる。ロボットはプログラムされた範囲では正しく動くし、作業がコントロールできる。労働環境も改善できる。アイリスロボティクスが296社を対象に行ったアンケート調査ではすでに3割の会社がロボットを導入しており、「検討中」を加えると過半数を占めるという。草野氏は「これからロボットはどんどん増える」と語った。

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アイリスオーヤマ 清掃ロボット「Whiz i(ウィズアイ)アイリスエディション」
(写真:筆者撮影)

 導入してない企業はランニングコスト、初期費用、オペレーション、そして求める清掃品質を達成できるのか、安全面やスタッフ教育、そして清掃の場合は顧客先の理解や現場の反発などに懸念を抱いていることが多い。ロボット導入それ自体が直接人件費削減につながりにくいばかりか、むしろ契約先から契約減額を要請されやすそうだと懸念を抱いている場合もある。

 導入コストに関しては、本連載でも紹介した「中小企業省力化投資補助金」などを活用する方法もある。ビルメンテナンスも補助金対象に追加されている。アイリスオーヤマでは「ロボット補助金サポートサービス」を6月から開始している。補助金の申請から実証試験の結果報告等の支援を行うサービスで、導入検討企業側は簡単な申し込み入力だけで済むという。

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累計導入社数5000社を超えたアイリスオーヤマのブースは注目度も高かった。国内販売台数シェアも
(写真:筆者撮影)

 アイリスロボティクスでは「ロボット=無人化」ではなく、あくまで「作業の一部をロボットに任せる」、つまり「拡張」だと考えて最適な運用方法を提案しており、シフト表の作成やコスト削減シミュレーションの作成まで無償で行っているという。草野氏は導入時には機体スペックだけではなくトラブル対応やアフターサポートを重視すべきであり、ロボットオペレーターの育成も重要だと語った。そのために無制限でトライアル機体の貸し出しも行っている。そして営業とは別にカスタマーサクセス部隊を作り、活用定着化をサポートしているという。

アイリスオーヤマ 床洗浄ロボット「BROIT」ビルメンフェア2024

 オーナー側が気にする清掃品質についても、同社では必要であればATP検査を実施している。ATP検査とは、細胞には必ず含まれているATP(アデノシン三リン酸)を指標として生物由来の汚れの程度を調べる検査である。「ロボットを走行させることで3割くらいの削減は10日くらいで見込める」とのことだった。 【次ページ】「森ビル」はエレベーター連携で稼働率向上
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