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  • 2025/02/26 掲載

建設DXの未来、大成建設「T-TerminalX」目指す「工場のような建設現場」

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ゼネコンの大成建設は以前から建設現場のDXを目指し、各種施工支援ロボットや新たな構法技術を開発、発表している。2024年11月には、それらをまとめて建築生産の未来構想の全体像として「T-TerminalX」構想を発表した。目標は2030年代、人とロボットが協働する建築現場の未来イメージだ。2025年2月13日にはロボットのデモを交えて「T-TerminalX」の発表会を開いた。人海戦術が支える建設現場は変えられるのか。その難しさはあるものの、大成建設では「いつかはゲームチェンジが起こる」と考えているという。発表会の中身を詳しく見ていこう。
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大成建設の各種施工支援ロボットや新たな構法技術とはどのようなものか
(写真:筆者撮影)

大成建設の生産技術イノベーション部長が考える「DXの本質」

 建設現場ではさまざまな関係者が設計、搬入、施工、検査など各担当工程を担って、1つの建築物を作っている。基本的には多くの人手で作業が行われているが、今後さらに人手不足がうんぬんという課題は、建設業界も同様である。

 そこで国土交通省は「i-Construction」という構想を2015年ごろから進めてきており、生産性を向上させようとしてきた。建物・建設情報のモデルである「BIM/CIM」をベースとしたシステムの導入と活用、ICTを使ったデータ共有・連携や業務効率化、ロボットやドローン、IoTなど自動化機器を活用した省人化と生産性向上、そして若手への技術継承の効率化などが解決すべき課題として挙げられ、各種取り組みが進行中だ。

 これらもほかの業態と同じだろう。もちろん具体的なソリューションや細部は異なる。だがいま日本が抱えている課題は、どの業界においても、遠目で見るとほとんど共通なのだ。根本的な課題が「人口減少」と「高齢化」にあるからだ。

 このような社会背景の中、大成建設も新たな建設現場のあり方について模索を続けている。そこで重要な役割を果たすのがロボットである。同社は建設現場で人の作業を助けるロボットの開発を行っている。理想としてはBIM/CIM連携して完全自動で進められる現場が思い描かれることが多いが、それはやはりまだまだ先の話で、現段階では夢だ。

 大成建設 建築本部 生産技術イノベーション部長の松崎 重一氏は、「本当はロボットだけの世界で完結する方が簡単。ロボットは自分の位置も覚えている。むしろ人間が介在するとややこしくなる。だが現場には特有の環境があるし、人と協働しなければならない」と語った。また、現時点のロボットの動作速度はかなりゆっくりだが「一通りの動きはできているし、夜間に動かすのであれば、のんびりでいい」と評価して紹介した。

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大成建設 建築本部 生産技術イノベーション部長 松崎 重一氏
(写真:筆者撮影)

 大成建設が生産性向上と就労環境改善を目的として、技術開発と成果を社内へ展開する組織として生産技術イノベーション部を作ったのは2021年。松崎氏が初代の部長として就任し、以後部を率いている。

 松崎氏は「建設業のロボット開発は、単発で花火のように『こんなのができました』と投げるだけで満足してしまっているところがある。受け取る側はどうすれば良いか、分からないだろう。社内外に目指す未来を伝えたい。特に社内の若手には『我々が目指している未来はこうなんだ』ということを見てもらいたい」と「T-TerminalX構想」発表の背景を語った。

【大成建設】ロボットと協働していく未来へ向けT-TerminalX構想を公表

 そして「DXにつながるためには開発者だけではなく最前線の現場社員たちが、全体像を目指す方向を、イメージでも良いから共有して、自分たちの業務に新しい技術は使えないか、こういう技術がほしいという思いが出てこないとDXにはつながらない。新技術をうまく使うためには業務変革も必要になる。それは現場で実践してもらわないといけないし、その気づきを生むことが必要」と続けた。「現場の人間が新しい技術を理解して『これを使えば自分たちの仕事もここが楽になる』と思って、業務のシステムを変えていくことがDXだ。そんな思いで開発を行っている」と述べた。

ロボットが自動でパレット・台車を片付け

 公開された具体的な技術は、四足歩行ロボットを使った巡回監視システム「T-InspectionX」、建設現場用の自律清掃ロボット「T-CleanX」、フォークリフト型ロボットと軽量タイプのパレット型ロボットからなる自律走行搬送ロボットシステム「T-DriveX」など。ざっくりご紹介しよう。

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自律走行搬送ロボットシステム「T-DriveX」の1つ、自動フォークリフト「Rapyu.」
(写真:筆者撮影)

 「Rapyu.(ラピュー)」という愛称をつけられたフォークリフト型ロボットは、住友ナコフォークリフトの車両をベースにラピュタロボティクスと共同開発したもの。特徴は搬送する対象(パレットや台車など)を画像で認識し、特定エリアに自動で片付けるといった作業ができる点だ。9種類の台車を認識・判別できる。

 細かく指示する必要はない。「台車をどの方向から取れ」といった指示も不要だ。「このエリアを片付けておいて」「資材はあちらのエリアにまとめておいて」といった指示だけで、資材をある程度分類して、指定エリアに片付けるような作業が可能だ。

大成建設 Rapyu. (T-DriveX) ランダムピックアップ デモ

 大成建設ではこの機能を「ランダムピックアップ」と呼んでいる。たとえば、明日の仕事のために現場を整えておくような作業を夜間に無人で行わせるといった使い方を想定しているという。現状は職人が残業して行っている作業を自動化できるわけだ。松崎氏は「世界に一つしかない技術だ」と胸を張った。まだ現場に入れるにはハードルがあるが「理論的にはできている」段階に達したという。

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簡単な指示だけでロボットフォークが自動で台車類を片付ける
(写真:筆者撮影)

 この技術は、建設現場以外にも横展開が可能だ。たとえば、物流倉庫にトラックで荷受けした荷物を仮置きした場所から、所定の位置に持っていくといった作業を自動で行わせることができる。ラピュタロボティクスは「ラピュタAFL」という名前で自動フォークリフトを開発し、すでに上市している。

大成建設 Rapyu. (T-DriveX) ランダムピックアップによる分別 デモ

 このほか、長尺の建設資材を運ぶための低床式自動走行ロボット「MogLifter」も開発した。360度全方向に移動可能な球体駆動方式を採用し、柔軟かつ効率良い運搬ルートを取れる。「Rapyu.」等とも連携する。

大成建設 フォークリフト型ロボット「Rapyu.」と低床式自動走行ロボット「MogLifter」 との連携
【次ページ】コンクリートの床でもピカピカにする掃除ロボ
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