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- 2023/06/08 掲載
ロボットへの指示も「AI任せ」の時代に? 製造業での大規模言語モデル活用はどうなる
筆者も活用しているChatGPT
そこら辺の人が書くよりも整った良い文章を吐き出してくれるChatGPTは日本語を含む多言語に対応している。簡単に要約を行ってくれたり、想定年齢層に合わせたテキストの書き換え例を提案してくれることから、筆者のようなライターの仕事でも時々活用させてもらっている。普段書かないテーマの原稿を発注されたときは、まずChatGPTに「書き出し」を書かせ、書き始めるハードルを下げてもらったこともある。文章そのものは結局全部書き直したが、仕事はまずとっかかりが難しいこともあるので、そこを簡単にしてくれる効果は大きい。
ChatGPTは2021年9月までのデータしか持っていない。だがOpenAIの第4世代の言語モデルである「GPT-4」を使える有料プランのChatGPT Plusを使えば検索エンジンを使わせることもできる。ChatGPT Plusでなくても、マイクロソフトの「Bing」を使えば、どこから引っ張ってきた情報なのか、つまり出典もちゃんと教えてくれる。また、ChatGPTから「知らない」と言われた後に「検索エンジンを使ってくれませんか」と続けて頼むと検索結果をシミュレートして教えてくれることもある。
また、「Chat with any PDF」のようなツールを使うとPDFを読み込ませて要約や文書内容についての質問応答を行ってくれる。読み込むべきかどうか判断しづらい数十ページの資料の内容をざっと把握するといった使い方も可能だ。もちろん、その文書が何かのマニュアルであっても構わない。下手な人の解説よりもわかりやすく答えてくれるし、こういう使い方の場合、ChatGPTの問題とされる「ハルシネーション(Hallucination)」、すなわち事実と異なる回答をすることもあまりないようだ。
ともあれ、もっと色々な使い方がありそうに思うので、とにかく触ってみて可能性を探索することをお勧めしたい。有料版の「ChatGPT Plus」ではプラグインが使えるようになっていることはご存じだろう。今は限られた数しか使えないが、将来はあらゆるアプリケーションがChatGPTのプラグインになってしまうのではないかと思ってしまうような勢いだ。
製造業ではどのように活用されるのか
さて、製造業ではChatGPTの活用例はまだ少ないが、少しずつだが集合知的にあちこちで検討され始めている。たとえばカタログを読ませて、適切な部品を選定させることも可能だ。実際にChatGPTに、製造業における生成AIの使い方を質問してみたところ、設計製造と改善、品質管理、製造プロセス最適化、予測保全、顧客サービスの向上に使える、と返事をしてきた。これはChatGPTが言っているだけだが、ChatGPTが実際にできることの1つにコードの生成がある。コードを自動で生成させることで加工の工程を省力化できる可能性がある。たとえばCNC(コンピューター数値制御)工作機械に用いるGコードを出力させることもできる。
また、逆にコードを入力して解析させて、その解説文を日本語で書かせるといったこともできる。簡単に教材も作れてしまうし、とっつきやすい。教育的価値は高い。
そのほか、顧客への応答メールはもちろん、マニュアルなどを書くことにも利用できる。そのまま使うわけにはいかないが、最初に検討するための「下書き」として使うには十分なドキュメントを作ってくれる。
何より、ChatGPTの吐き出す文章は「それっぽい」。文章として非常に整っており、わかりやすい。わかりやすい文章とはこういうふうに書くのだなと改めて思ってしまうほどだ。中身はともかく、本当にそれっぽいドキュメントの体裁を作ってくれるので、それをひな型として中身を書き起こしていく最初のきっかけ作りとしては有用なのではないだろうか。
製造業での活用はまだまだ模索段階だろう。だが生産性向上のために、今後も面白い活用検討が多くの人たちによって進められていくことを期待している。近いうちに面白い例が出てきそうだ。
マイクロソフトによるChatGPT活用のロボット制御とは
物理世界でロボットを制御させる試みもすでに検討されている。マイクロソフトは「ChatGPT for Robotics」というリリースを3月に発表した。ChatGPTを使ってロボットアームやドローンを自然言語で直感的に制御できたというものだ。以前、本連載で紹介だけした話だが、これについてもう少し詳しく触れておきたい。ロボットを動かすには普通はコードを書かないといけない。そのためには、まず、実行するタスクをコードに変換する作業が必要だ。この過程ではロボット工学の深い知識を持つ熟練したユーザーが必要であり、ユーザーは低レベルのコードを書く必要があって、とても高コストで非効率だとマイクロソフトは述べている。そこで、ChatGPTを使うことで一定の設計原則に従ったコードを生成させることを目指し、そのためのプロンプトを考えた。
彼らが取った方策の詳細はリリース本文を見てもらいたいが、以下のようなものである。まず準備段階として、高レベルのロボットAPI、関数ライブラリセットを定義しておく。これにはChatGPTがその動作を推論できるように説明的な名前をつけておく。次にプロンプトにタスクのゴール、前述のライブラリのどのAPIや関数が利用可能なのか、何ができるのか、制約は何かを箇条書きで明示し、状況を与え、どの言語で回答を生成するかを書く。
ChatGPTが結果を出力してきたら、ユーザーはその評価を行い、フィードバックを返す。そうして最終的に実装できるコードを得ることができたという。ChatGPTは、ユーザーからの指示があいまいな場合に説明を求めたり、ドローンの場合はセンサーを使って障害物を避けたり、ジグザグに飛行したりするような、結構複雑なコードまで記述できたそうだ。
【次ページ】ChatGPTの「ライバル」にも注目集まる
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