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  • 2023/08/24 掲載

ゲームエンジン「Unity」がデジタルツインで台頭、川重・京セラ・ニコンが支持するワケ

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リアルとデジタルを連携した産業用メタバース、デジタルツインが注目されるなか、自動車産業やエレクトロニクス、建設・土木などさまざまな分野において、ゲーム開発で培われた技術が使われ始めており、ゲーム開発プラットフォーム「Unity」の存在感が急激に増している。「Unity産業DXカンファレンス2023」ではさまざまな産業応用が紹介され、川崎重工業、京セラ、ニコンからも講演が行われた。ロボット関連システム開発におけるUnityの使われ方をレポートしておきたい。
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Unityを使った産業用アプリ開発が進んでいる
(出典:ユニティ・テクノロジーズ提供)

ゲーム開発用のプラットフォームが産業応用を拡大中

 ゲームの進化は他の産業界にも影響を与えている。各種開発プロセスのなかで、設計データの可視化、レンダリングはもちろん、さまざまなゲームの技術が産業界でも用いられるようになっている。Unityは、もともとはゲーム開発用のプラットフォームだが、今では広く活用され始めている。Unityを使うことでデザイナーとエンジニアが共通言語で作業ができるため、共通理解を作りやすく、一気通貫で開発を行える利点がある。

 ロボット関連システムの開発にも使われており、2年に1度開催される「国際ロボット展」でも、数回前くらいから、Unityで開発・実装されたシミュレータ画面、デジタルツインの画面を、各社展示ブースのモニター展示でよく見かけるようになっている。

 ユニティ・テクノロジーズ側も産業応用に積極的で、2023年4月には産業分野向けの統合パッケージ「Unity Industry」をリリースしている。さらに7月10日には「Unity産業DXカンファレンス2023」が行われた。アプリ開発の6割にUnityが使われているマルチプラットフォームXRアプリの開発や、車両の次世代ヒューマンマシーンインターフェース(HMI)領域での活用の話、建設デジタルツインの話などもあったが、ここでは主にロボットに関係が深いプレーヤーからの講演を中心にレポートしておきたい。

 なお、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンでは「コモさんの『ロボっていいとも!』」と題して、Unityとロボティクスについてエンジニアへのインタビュー形式で取り上げるnoteを以前から不定期に掲載していた(2023年6月に第19回でいったん休載)。併せてご覧いただけるといいかもしれない。

ユニティ・テクノロジーズの考える「DXの本質」と「デジタルツイン成熟度モデル」

 まず前提として、Unityの動向について。ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 執行役員 産業営業本部長の松本靖麿氏の講演では、リアルタイム3D分野のマーケットリーダーとして、ユニティ・テクノロジーズCEOのジョン・リッチティエッロ氏によるビデオメッセージのほか、ユニティの定義するデジタルツインの成熟度モデルや取り組みが紹介された。産業分野向けの体制およびサービスの概要も併せて紹介されたので、まずここからレポートする。なおリッチティエッロ氏からは「多くのデジタルツインは過去しか見てないが、Unityは今の情報を取り込める。AIと組み合わせることでさらにリアルタイム3Dが進化していく」とアピールされた。

 松本氏は「データを含めてデジタルを活用し、競争優位に立つことがDXの本質だ」と述べて、各産業分野の現状と課題を振り返った。建設・土木ではBIM推進が行われているが現場では発展途上で、作業効率の向上、手戻りの現象による効率向上、収益向上が期待されている。鉄道・道路、電気、通信などインフラ分野ではメンテナンス業務が大きな負担になっており、ドローンやAIを使った効率向上、IoTや5G活用が期待されている。

 製造分野では、さらなるオートメーション化がロボット活用により中小企業にも拡大することが予測されている。より複雑なロボット導入が必要となる一方で、導入前のシミュレーションなどに多くの時間が費やされている。自動車ではいわゆる「CASE」を代表として「100年に一度」の変革期となっており、開発段階では次世代HMIの開発など新たなシミュレータ活用、製造、設備更新や、販売時における没入感の高い体験の提供などが課題となっている。小売ではオンラインショッピングへの遷移が加速しており、ロジスティクスの構築が必要だ。このような各産業分野で大きな変革が必要となっており、そこにUnityを活用できるという。

 そしてユニティ・テクノロジーズの考える「デジタルツイン成熟度モデル」を紹介した。自動運転のように、デジタルツインは5つの段階にわけることができるという。まず第1レベルは「バーチャルツイン」。対象物をデジタルに正確に再現する。第2レベルは「コネクテッドツイン」。バーチャルツインにデータを連携させ、リアルタイム・モニタリングやレポーティングなどがキーワードとなる。ユーザーは今後起こり得る事象を予測し、立案できるようになる。

 第3レベルは「プレディクティブツイン」。データ群を有効活用し、物理シミュレーションの結果を元に、将来のパフォーマンスや危険を予測し、早い段階で警告を発することができるようになる。また潜在的な問題を予測し、より良い意思決定を支援する。第4レベルは「プレスクリプティブツイン」。機械学習を使って高度な予測を行い、対応すべき処方箋を提供してくれる。そして第5レベルが「オートノマスツイン」。複数のリアルタイムデータを使い、完全に自律化したデジタルツインを構築する。

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ユニティ・テクノロジーズの考える「デジタルツイン成熟度モデル」
(出典:ユニティ・テクノロジーズ提供)

 松本氏は「これらは順を追って構築されていくもの。一足飛びに構築できるものではない」と述べて、「Unityでは最適ステップでデジタルツイン構築を支援する」と語り、各レベルの実例を紹介した。第1レベルではハリケーンで95%の建物が損壊し、未来の空軍基地を作りたいとしたティンダル空軍基地。デジタルツインを使ったバーチャル検査で資産の可視化が可能になり検査費用を削減できたという。第2レベルのコネクテッドツインではフィンランド・オウル港での貨物の積み込みが紹介された。港全体をデジタル化し、データソースと連携し、貨物管理を行いセキュリティと安全性向上を実現した。第3レベルのプリディクティブツインではバンクーバー国際空港が挙げられた。より効率的な空港の運営ができるようになったという。

 第4レベル・プレスクリプティブツインの例は油田サイトのシュルンベルジェ(Schlumberger)。迅速な解決ができるようにWebGLベースのアプリを提供。遠隔で施設を監視しリアルタイムに警告と推奨処方箋が出てくるので、課題に対し絵迅速な対応ができるようになったという。レベル5の例として挙げられたのはヒョンデ(現代自動車)のシンガポールイノベーションセンター(HMGICS)。ロボットをはじめとした無人技術を使ったスマートファクトリーで、製造プロセスを最適化しコスト削減を狙っている。ほぼ完全に自律化しており、現実のオペレーションがリアルタイム3Dで監視されているだけでなく、ERP、制御システム、WHMなどさまざまなシステムと接続・連携しているという。

Human-Centered Value Chain Innovation
【次ページ】川崎重工業:「産業用メタバース」の活用とパートナー・エコシステム構築の試み
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