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- 2024/12/02 掲載
SFの街が現実に?進化する「都市デジタルツイン」の最前線、6社が挑む革新とは
「都市デジタルツイン」とは
そもそも「デジタルツイン」とは、デジタル上の仮想空間に、現実空間の存在をふたご(ツイン)のようにそっくり再現したものを意味します。「都市デジタルツイン」とはその名のとおり、街をまるごとデジタル空間に再現することです。名前の頭に「都市」がついていますが、東京・大阪などの都市圏だけでなく、人口の比較的少ない地方も対象になることがあります。
今、都市デジタルツインが注目されている背景には、2つの分野への関心の高まりがあります。次世代モビリティと、災害対策です。
まず、次世代モビリティについてです。配送ロボット、自動運転車の普及・推進が見込まれる中、ロボットやクルマ、ドローンなどに、街の構造をいかに正確に把握させるかが大きな課題となっています。
都市デジタルツインを一元化された巨大な「街のデータ集」として活用すれば、AIの活用拡大とあいまって、こうした次世代モビリティ効率的かつ安全に動かせるだろう、というわけです。道路や電車内の混雑状況も把握しやすくなり、エネルギー需給、インフラ整備などの分野で、ヒトにもロボットにも役立つ技術革新が期待されています。
一方、災害対策の分野でも、都市デジタルツインのポテンシャルが注目されています。
都市デジタルツインは建物に加え、地形の情報もことこまかに記録するため、災害が街に及ぼす被害想定も視覚的に表示しやすくなります。たとえば、河川を仮想空間に再現し、その水位を変化させると、どの程度の水量で洪水が起こるか、どの範囲に被害が及ぶのかがイメージしやすくなります。
また、大雨や津波といった自然災害時に比較的安全な場所が分かれば、住民が取るべき避難ルートや、むだのない堤防の立地や高さを考える際にも役立ちます。
そのほかにも、道路や電車内の混雑状況の把握、オーバーツーリズム対策、環境保護、エネルギー需給予測、インフラ整備など幅広い分野で技術開発につながる可能性があります。
2027年に1,140億円の経済効果をもたらす「プラトー」とは
都市デジタルツインを構築するのは相当に手間も資金もかかりますが、こうしたメリットへの期待もあって世界各国で今、デジタル空間に実際の街を再現する試行錯誤が進められています。日本でも、国土交通省が中心となって「PLATEAU(プラトー)」というプロジェクトが進められています。プロジェクトは2020年に始動し、日本全国の都市デジタルツイン化を目指しています。
プラトーの特徴は、3Dの都市モデルを整備した上で、オープンデータ化していることです。一般に開かれたデータにすることで、防災や環境、まちづくり、コンテンツ、モビリティーといった用途で、民間企業が活用できるのが大きな利点となっています。
すでに全国各地でデータ整備が進められ、2022年の約100都市から、2024~2027年には約500都市に拡大すべく自治体などへの整備支援が行われています。同時に、整備済みのデータを活用するため、開発環境を用意したり、ハッカソンなどのイベントを開催したりといった取り組みが進められています。
国が掲げる「PLATEAUビジョン2023」によれば、プラトーの経済効果は2022年の10億円、2023年の30億円から、年々ほぼ倍々で右肩上がりとなり、2027年には1,140億円になると試算されています。 【次ページ】民間事業者6社のビジネス活用例を紹介
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