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ここ数年、多くの企業が生成AI(ジェネレーティブAI)の活用方法を模索するようになったが、そうした中で、工業製品や建物・都市などの設計領域においても「Generative Design(ジェネレーティブデザイン)」と呼ばれる“生成”のアプローチが進み始めている。今後、Generative Designによって設計工程の自動化が進めば、モノづくりは大きく変わっていくかもしれない。本記事では、世界的CAD・PLM・BIMベンダーである、Autodesk(オートデスク)、PTC(ピーティーシー)、Dassault Systèmes(ダッソー・システムズ)などが開発した「設計を自動化するツール」の実力を解説する。
設計が激変する?「Generative Design」とは
Generative Designとは、建築物に関わる使用材料、負荷や制約(重さ、強度などの条件)、製造プロセス(キャスティング、切削、3Dプリンティングなど)といったシステムデザイン要件(ゴール)を指定するだけで、最適な設計を自動生成してくれる技術だ。生成AIと同じように、あらかじめ過去の設計データやノウハウ・知見などを学習させておくことで、学習データから設計を生成するGenerative Designを作ることができる。
このGenerative Designによって製品・建物・製造ラインの設計・デザイン案を自動生成すると、作業時間は大幅に短縮されるほか、付加価値の高い業務へのシフトや、製造ノウハウ・暗黙知の伝承・体系知化に時間を使うことができるようになる。また、市場投入期間の短縮や、製品コストの低減などにつながるほか、人間が気づかなかった設計の提案にもつながるメリットもある。
近年、製造業では、人手不足とともに熟練設計エンジニアが高齢化・退職が進み、技能伝承が課題となる一方、顧客からの製品仕様に対する要望は多様化・複雑化しているほか、納期短縮を求めるようになってきている。そうした厳しい状況の中で、Generative Designが設計品質を維持・向上させる重要なアプローチとして期待されているのだ。
このGenerative Designに関しては、CAD/PLM企業、
BIM企業などが積極的に開発・展開に注力している。ここからは、世界的CAD・PLM・BIMベンダーである、オートデスク(米)、PTC(米)、ダッソー・システムズ(仏)に加え、半導体メーカーNVIDIA(エヌビディア)のGenerative Designの実力を解説する。
Generative Designの“生成”に使われる技術
Generative Designは、企業によっても異なるため一例だが「敵対的生成ネットワーク(GANs)」や、「遺伝的アルゴリズム(GA)」などの技術が用いられることが一般的だ。本記事では詳細な技術解説は踏み込まないものの、2つの技術の概要としては下記の通りだ。
■敵対的生成ネットワーク(GANs)
機械学習のディープラーニングの一種。生成モデルの一種であり、データから特徴を学習することで、実在しないデータを生成したり、存在するデータの特徴に沿って変換できる仕組み。
■遺伝的アルゴリズム(GA)
生物の進化(自然淘汰)を模した最適化アルゴリズムの1つ。ある条件(=評価関数)に適した値の組み合わせを探索するため、解の候補を遺伝子として表現し、遺伝子を変化させながら最適な値を探索する仕組み。
オートデスク(1):工数を短縮する「大規模製品モデル」
オートデスクは、設計者が求める製品が何であるかを理解し、製品の動作原理、製造方法、関連する制約などの要件を加味して、まったく新しい製品設計案を提示してくれるGenerative Designを開発した。これは、設計を自動化してくれるだけでなく、強度計算やコスト計算も行ってくれる仕組みとなっている。また「大規模製品モデル(LPM:Large Product Model)」を活用したAI機能も提供している。
一般的に、設計者は60%の時間を図面作成の工程に使っていると言われており、それだけこの工程には改善余地があった。そうした業務工程においてLPMを活用すれば、製品設計や図面生成・図面への寸法追記などを自動化してくれるほか、設計データに基づく工作機械のパス(製品加工における加工ルート)を自動生成してくれるなど、製造工程においても作業の効率化に貢献してくれるのだ。
これまでLPMは、少ロットかつ「特殊な形状・製法」で作られる製品領域において活用が進んでいた。たとえば、航空機部品やインフラ部品など、金属向け3Dプリンターなどを使って製造するような製品領域だ。最近では、切削加工や鋳造加工などへの適用も進み、現在では自動車業界をはじめ、量産品に対しても適用が進んできている。
そのほか、オートデスクは製造業の製品だけに留まらず、建物や都市などの計画、設計を支援するAIツールも開発・提供している。現在は単品部品のモデリングへの適用に留まるが、今後は複合製品を組み合わせた製品・部品の設計や組立の検討など、適用範囲を広げていく予定とのことだ。それにより、設計知識を持たない、経験の浅いユーザーであっても製品設計を担える世界を目指す。
オートデスク(2):建設・都市設計業界の事例
AIの活用は建設業や都市計画においても活用が進んでいる。オートデスクForma、都市設計に生成AIを採用し、ユーザーが複数のデザインを検討し、ユーザーの基準や環境への配慮に基づいて最適な選択肢を選択できるようにしている。建物の設計においては日照条件や、騒音状況、風の吹き抜けなどが最適化される建物の設計パターンの土台を提示することができる。
また、オートデスクとは別だが、同様に大手ゼネコンについても建設の初期設計を支援する取り組みを進めている。下記がその一例だ。
- 大林組
スケッチや3Dモデルからさまざまなファサードデザイン(建物の正面から見た外観)を提案できるAI技術 AiCorb
- 清水建設
設計初期段階における鉄骨造の構造検討業務を支援するAI「SYMPREST」
PTC(1):マスカスタマイゼーションを手軽にする方法
PTCは企業のGenerative Designを下記のように5段階に分けて定義している。現在、Generative Designによる自動生成の対象となる製品は、3Dプリンターによる製造部品や、航空機部品など、特定の部品単位に限られている。
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