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2024年6月末、アップルのゴーグル型デバイス「Apple Vision Pro(アップルビジョンプロ)」が日本で発売開始となり、9月にはメガネ型デバイス「MiRZA(ミルザ)」がNTTより発表されるなど、VR・AR・MRデバイスの参入が増えている。この領域には、すでにメタ社から「Meta Quest(メタクエスト)」、マイクロソフトから「HoloLens(ホロレンズ)」などもあるが、これら製品はそれぞれ何が違うのか。各社のVR・AR・MRデバイスの販売台数は伸び悩んでいるように見えるが、結局、誰が何のために使うのだろうか。産業界に与えるインパクトをはじめ、VR・AR・MRデバイスの可能性を解説する。
アップルの「Apple Vision Pro」とは?誰が何目的で買う?
今回、販売開始されたアップルのゴーグル型デバイス「Apple Vision Pro」は、どのような位置付けになるのだろうか。各デバイスが何に使えるのか特徴に触れていく前に、VR・AR・XRの違いを整理しておきたい。
■VR(Virtual Reality/仮想現実)
VRゴーグルなどを装着してデジタル世界のコンテンツに没入する
(例:360度カメラで撮影した物件の内見を体験するVR内見、仮想世界で開催されるセミナー・発表会…など)
■AR(Augmented Reality/拡張現実)
スマホやタブレット端末などを使い、本来、現実空間にはないデジタルコンテンツを現実空間にあるかのように投影する
(例:ポケモンGO、現実の部屋に家具のモデルを投影してレイアウトを確認するアプリ…など)
■MR(Mixed Reality/複合現実)
Apple Vision ProやHoloLens 2(マイクロソフト)などのMRゴーグルを装着し、現実世界と仮想世界を複合・融合させ、相互にリアルタイムで影響し合う空間を構築する
(例:現実世界の街並みの中に完成予定の建物の3D映像を投影して完成後のイメージを把握する…など)
このうち今回発売されたApple Vision Proは、MR領域の体験をするために使われるデバイスという位置付けになる。日本での発売価格は50万円超と高価であるが、本機種はPro(ハイグレード版)の位置付けであり、近いタイミングで廉価版が発売されると見られる。
それでは、今後、Apple Vision Proの登場により、産業界ではどのような変化が起きるのか。たとえば、すでに製造、建設、医療、エンターテイメントなど、社会実装が進みつつあるBtoB(企業向け)領域で、さらなる空間コンピューティング技術の活用が進むことが予想される。同時に、BtoC(生活者向け)においても、今まではアーリーアダプター層の利用にとどまっていたが、今後は、富裕層やアップル製品のファン層などへの拡大が期待される。
そして、それ以上に影響が大きいのがその次のフェーズだ。今回のApple Vision Proの投入をきっかけに競合の参入が活発化すれば、さらにはメガネ型のデバイスなど普及しやすい多様なデバイスの提供が進むことで、BtoB領域では大企業に限らず、中小企業においても空間コンピューティングデバイスが浸透していくかもしれない。
NTTの「MiRZA」とは? 誰が何目的で買う?
そして待望のグラス型のMRデバイスとしてNTTが秋から発売予定としているのがMiRZA(ミルザ)だ。価格は25万円とされており、Apple Vision Proの半分程度の価格となっている。
今までのXRデバイスは、Apple Vision Proを含めて「XRを利用していること」をユーザー自身も周りにいる人も強く意識せざるを得ないデバイスの形状であった。しかし、MiRZAはメガネ型のデバイスで、かつ125gと軽量であることから、生活の中で利用しやすい特徴を備えている。
初期段階として、販売は企業向けからとなるが、今後、このデバイスをキッカケに業務や生活にXRが自然と溶け込むようになることが期待される。
Apple Vision Pro、Meta Quest、HoloLensの違い
それでは、話題のApple Vision Proはどこが優れているのか。Apple Vision Pro(アップル)、Meta Quest(メタ)、HoloLens(マイクロソフト)の基本機能は下記の通りだ。
|
Apple Vision Pro |
Meta Quest 3 |
Microsoft HoloLens 2 |
発売日 |
2024年6月28日 |
2023年10月10日 |
2019年11月7日 |
価格(USD) |
63万4,800円(512GBモデル) |
9万6,800円(512GBモデル) |
42万2,180円 |
ターゲット市場 |
一般消費者 ビジネス |
一般消費者 |
ビジネス |
主な用途 |
空間コンピューティング エンターテイメント |
ゲーム エンターテイメント 教育 |
ビジネス 医療 産業設計 |
解像度 |
2,300万ピクセル |
2064×2208 (片目あたり) |
2K 3:2 |
操作方法 |
視線 ジェスチャー 音声 |
タッチパッド ハンドトラッキング |
ジェスチャー 視線追跡 |
重量 |
600~650g |
約515g |
566g |
バッテリー駆動時間 |
約2時間 (外付けバッテリー) |
平均2.2時間 |
2~3時間 |
Apple Vision Pro、Meta Quest、HoloLensの基本情報
これを基本としつつ、Apple Vision Pro、Meta Quest、HoloLensの各デバイスの共通点や違いを見ていきたい。具体的には、(1)映し出される空間のリアリティ、(2)カメラ機能、(3)3Dデータを現実空間に投影する機能の実力、(4)その他の機能などの項目で、Apple Vision Proと他デイバスの特徴を見ていきたい。
特徴(1):空間のリアリティ
従来のヘッドセットにおいては、実際の身体が受けている感覚と、体験する3Dの間で起こる視覚情報・ゆれ・振動などにずれや違和感が発生することにより、乗り物酔いに近い「VR酔い」が発生することが課題であった。
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