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  • 2023/06/30 掲載

Omniverseとは何か?NVIDIAがBMWら製造業のデジタルツイン作成をどう支援するのか

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製造業において「デジタルツイン」を構築する動きが活発化している。そこで注目なのが、ジェネレーティブAI(生成AI)関連でも話題のNVIDIAだ。同社が提供するメタバース構築プラットフォーム「Omniverse(オムニバース)」が、デジタルツイン構築で存在感を高めている。自動車大手のBMWは、世界規模でOmniverseを活用したプロジェクトを展開する計画。製造業において注目されるOmniverseとはどのようなプラットフォームなのか、その詳細を探ってみたい。
執筆:細谷 元
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製造業で注目されるNVIDIAの「Omniverse」とは?
(Photo:Chung-Hao Lee/Shutterstock.com)

BMW、工場のデジタルツイン化でOmniverseを活用

 生成AIブームに乗り、株価が急騰しているNVIDIAだが、同社は製造業においても存在感を高めている。

 NVIDIAが展開しているメタバース構築プラットフォーム「Omniverse(オムニバース)」が、製造業のデジタルツインの取り組みにおいて注目度が高まっているからだ。製造業の中でも、BMWやメルセデス・ベンツなど自動車メーカーで大規模なプロジェクトが進められている。

 BMWグループは、2023年3月に開催されたNVIDIAのイベント「NVIDIA GTC 2023」の基調講演で、デジタルトランスフォーメーションの一環で、NVIDIA Omniverseプラットフォームを世界中の生産ネットワークに展開する計画を明らかにした。まず2025年に本格稼働する予定のハンガリー・デブレツェンの電気自動車(EV)工場のデジタル版を構築する計画という。

 このイベントでは、同EV工場のデジタル版デモが披露され、その中で実際にロボットを製造ラインに組み込むなど、物流と生産計画最適化の可視化が実演された。

 現実世界では、一度工場の施設や生産ラインを構築してしまうと、その変更や最適化を実行するのは非常に困難となる。また変更のコストも莫大(ばくだい)なものとなり、生産ラインを停止する必要性も出てくる。

 一方、デジタルツインの工場を構築することで、生産ラインのシミュレーションが可能となり、変更プロセスを繰り返し、最適な生産ラインを容易に構築することが可能だ。このシミュレーションを現実世界の工場に反映させることで、低コスト・短時間で、実在する工場を最適化できる。

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デジタルとリアルをつなげることで、さまざまなシミュレーションが可能になる
(Photo/Shutterstock.com)

 NVIDIAの説明によると、Omniverseは、Universal Scene Description(USD)をベースとする、スケーラブルかつマルチGPUによるリアルタイムのメタバース構築プラットフォームだ。

 「Omni」は、Omni-directional(全方位)などといった言葉からも分かるように、全部や総合といった意味を持つ接頭語。Omniverseを直訳すると全方位的な世界ということになる。実際、Omniverseはさまざまな既存のソフトウェアやプラットフォームをつなげる役割を担っており、ハブ的な存在と位置づけることができる。上記USDというファイルフォーマットがこれを可能にしている。

 BMWグループは、工場・生産ラインの構築・運営において、Siemens Process Simulate、Autodesk Revit、Bentley Systems MicroStationなどのさまざまな産業用CADやエンジニアリングツールを利用している。同社は、これら既存のソフトウェアやデータリポジトリを結び付けるために、USDをベースとするOmniverseを導入した。

 NVIDIAによると、Omniverseを活用している自動車メーカーは、BMWグループだけではない。メルセデス、ボルボ、トヨタ、GM、Lotus、Lucidなども、それぞれがOmniverseの異なる要素をワークフローに組み込んでいるという。

製造業でも注目される「USD」ファイルフォーマット

 さまざまな自動車メーカーが活用し始めているOmniverseとはどのようなプラットフォームなのか。その詳細を見る前に、上記でも登場した「USD」ファイルフォーマットについて触れておく必要がある。

 USDは、ピクサーが開発した3Dファイルフォーマット。なぜ、デジタルツインやメタバースの文脈で注目されているのかというと、昨年米国で開催されたメタバース標準化団体The Metaverse Standards Forumで、USDをメタバース開発の標準フォーマットとすることが提唱されたからだ。

 フォーラムを主催したのは米国の標準規格策定に特化した技術コンソーシアムであるKhronos Group。フォーラムの主要メンバーには、マイクロソフト、メタ、NVIDIA、クアルコム、エピックゲームズ、Unity、ソニーなどの大手企業が多数含まれる。

 同フォーラムが目指すのは、「オープンなメタバース」構築を進めるために必要な「相互運用性基準」の設定に関して、企業間の協力を促すこと。

 これまで産業CADやCGソフトウェア/ツールは、それぞれのファイルフォーマットを採用しており、ソフトウェア間でデータをシェアすることは容易ではなく、メタバース構築のボトルネックになっていた。

 この状況を打破するために、USDを共通のファイルフォーマットとすることが提唱されたのだ。これを前後して、各ソフトウェアもUSDへの対応を進めている。たとえば、産業CAD/CGソフトウェア開発大手Autodeskは、3Dソフトウェア「3Ds Max」と「Maya」で、2022年版からUSDファイルフォーマットのサポートを導入、またオープンソースの3Dソフトウェア「Blender」でも最近のバージョンでUSDファイルが利用できるようになった。

 NVIDIAは、Omniverseの基本ファイルフォーマットをUSDとすることで、さまざまな3Dソフトウェアとの連携を可能にし、ハブ的な立ち位置を確立する算段だ。 【次ページ】GPUをフル活用したリアルタイムプラットフォーム「Omniverse」
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