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  • 2024/05/13 掲載

メタの新OS「Meta Horizon OS」開放、対アップルだけでなく対グーグルでも重要なワケ

連載:根岸智幸のメタバースウォッチ

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メタがXRヘッドセット「Meta Quest(以下、Quest)」シリーズのOSを「Meta Horizon OS」として外部に公開することを発表した。自社でQuestシリーズの開発も続けるが、レノボやASUSなどのサードパーティにも提供する。そのきっかけとなったのは、おそらくアップルのXRヘッドセット「Apple Vison Pro(以下、Vision Pro)」の登場だろう。グーグルも早ければ、日本時間の15日深夜から開催されるGoogle I/Oで「Android XR」を投入する可能性がある。次のラウンドに突入したXR領域の次のコンピューティングプラットフォームの今後について考えていこう。
執筆:根岸 智幸
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これから競争が激化していくと予想されるメタのQuest 3(左)とアップルのVision Pro
(出典:アップル/メタ)

そもそもXR市場に将来はあるのか?

 2021年ごろの熱狂の反動か、今もメタバースやXR(AR/VR/MR)に懐疑的な声は多い。最近だとPlayStation VR2(PSVR2)が販売不振で生産を一時休止するという報道や Vision Proの出荷台数予測を大幅に引き下げるとの報道が出ている。

 その一方で、メタのAR/VR部門であるReality Labは、Questシリーズの売上が好調で、2024年1月~3月期は前年同期から30%の売上増となったと発表した。

 ただし、赤字はまだ大きく、マーク・ザッカーバーグ氏は2030年代まで利益は出ないだろうとしている。とはいえ、メタは巨大な利益を稼ぎ続ける限り、Reality Labへの投資を継続していく考えだ。

 若年層向けで人気のオンラインゲームプラットフォームのRobloxがメタとの連携を発表し、QuestからRobloxに入れるようになったのは2023年のこと。

 RobloxのDAU(デイリーアクティブユーザー)は6600万人にのぼる。アクティブ利用率も、23年秋の31%から24年春には34%に増えた。Robloxをプレイしたことがない10代は22%で、23年秋の24%から減少しRobloxは若者世代の常識になりつつある。

 米国1000万人、日本30万人と言われるVRゲーム市場は、10年前のモバイルアプリやSteamのような状態だという。10年後、米国のZ世代やα世代が社会を動かし始めたときには、XRや空間コンピューティング、メタバースが当たり前になっていても不思議ではない。

 だからこそ、メタやアップルは次世代コンピューティングプラットフォームとしてのXR領域の覇権を狙って大金を投じて開発を続けているのだろう。

XR機器普及のカギとなるvisionOSのUI

 本題に戻ろう。VR/MRヘッドセットやARグラスなど、XR機器の用途は4つに分かれると筆者は考えている。ゲーム、ソーシャル、個人生産性、組織生産性だ。

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XR機器の利用分野
(出典:筆者作成)

 利用用途をtoB/toCとパーソナル/コラボレーションの2軸四象限に分類した。ゲームとソーシャルはtoCで、個人生産性と組織生産性はtoBだ。また、ゲームと個人生産性はパーソナルで、ソーシャルと組織生産性は複数人によるコラボレーションとなる。

 この4つの分野はすべて実用化されており、それぞれ産業として成長しつつあり、2030年代には今よりもずっと当たり前になっているだろう。

 しかし、本格的な成長と普及のためには、ハード的には高性能化と低価格化が進み、ソフト面ではアプリの拡大とUI/UXの改善と統一が重要だ。

 特にUI/UXの整備はカギとなる。昔は一部のマニアや専門家しか使いこなせなかったコンピューターを、今では途上国の子供でさえ使いこなせるようになったのは、優れたUI/UXが整備されたからだ。

 そこで大きな役割を果たしてきたのがアップルだ。マウスとウィンドウによるGUI(グラフィックスユーザーインターフェイス)はアップルの発明ではないが、シンプルで直感的な操作系を整備してサードパーティのアプリまで統一できたのは1984年のMacが最初で、Windowsその他のPCのUIはこの優れたUIととてもよく似たものになった。

 スマートフォンもアップルの発明ではないが、誰でも使えるシンプルで直感的なUIになったのは2007年のiPhoneからで、Androidはそれを取り入れた。

 PC、スマホに続く第3のIT機器として2016年以降にさまざまなXRデバイスが現れ、Questシリーズは累計2000万台以上売り上げた。しかし、現在のQuestのUIについては(やや厳しい意見かもしれないが)1980年代のMS-DOSと同じだ。QuestでXRアプリを切り替えたいとき、現在のXRアプリを終了して目的のアプリを立ち上げ直す。つまりMS-DOSと同じシングルタスクOSだ。OSはアプリランチャーでしかなく、UIはアプリごとに異なる。

 メタは2Dアプリの限定的なマルチタスク(最大3つまで)をうたっているが、MS-DOSでも限定的マルチタスクを実現する「常駐アプリ」はあった。

 この状況に一石を投じたのがVision Proだ。MacOSは操作画面を、事務机を模した「デスクトップメタファー」でマルチウィンドウとマウスによるUIのルールを定めた。

 visionOSの「空間コンピューティング」は、現実空間の上に「共有スペース(Shared space)」を重ねて、複数の「ウィンドウ」や「ボリューム」(3Dオブジェクトに特化した入れ物)を配置して、視線とハンドトラッキングで操作するUIを提案した。

 すなわち、visionOSはマルチウィンドウのマルチタスクOSなのだ(もちろん映画鑑賞やゲームなどのための没入モードも用意されている)。

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visionOSでは、ウィンドウとボリューム、それを配置するスペースという基本概念が定義されている。ウィンドウは2Dと3Dの両方に対応しているが、3Dにより適したウィンドウとしてボリュームが用意されている
(出典:アップル

 この仕組みは、iPhoneやiPad用のアプリを共有スペースのウィンドウ内で動作させることが可能で、アップルの豊富なモバイル2Dアプリ資産を活かせる点でも秀逸だ。

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MacOS上のvisionOSシミュレーターで、iPadアプリを共有スペースのウィンドウ内で動作させている様子
(出典:アップル
【次ページ】Vision ProがQuestを進化させる?
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