- 2025/04/21 掲載
なぜChatGPTから「欲しい回答」が来ない? プロンプトではない精度“爆上げ”の秘訣
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
検索で入手できない情報を「ChatGPTに聞く方法」
ChatGPTから情報を得ようとする場合、最も効率的な方法は知りたい数字、あるいは文字を適当に入れた文章を書き、<この文章で事実の誤りがあれば、修正してください>と依頼することだ。本欄でこのように述べてきたのだが、いくつかの注意点があることに気がついた。私が経験した具体例を用いて説明しよう。私は、トランプ政権の関税政策に関する文章を書いていた時、「相互関税」の中の「一律10%の基本関税」と「上乗せ関税」について、発表時点と発効時点を知る必要があった。しかも、米国東部時間で知りたかった。
つまり関税の種類、発表と発効の違い、日本時間と米国時間の違い、という3つの条件の各々で、正確に知る必要があった。
検索エンジンで新聞記事を検索しても、この要請に合う情報をなかなか入手できない。前述した関税の種類、発表と発効の違い、日本時間と米国時間の違いについて、どちらかしか示していないような場合が多いのである。また、そもそもこれらの違いを明示していない場合も多い。
このような問題には、ChatGPTに質問するのが適している。ところが、これが意外に難しかった。
だがChatGPTと“全然”話がかみ合わない…
まず、ChatGPTに次の質問を投げかけた。<次の文章で事実に反する記述があれば、訂正してください。相互関税のうち、一律10%の基本関税は5日に発効。国・地域別の上乗せ分は9日に発効した>
すると、ChatGPTから、<どの相互関税について述べているかによって答えが違う>という反応が返ってきた。
人間であれば、相互関税というだけで、いま問題になっているトランプ関税の1つである、相互関税であることが分かるはずだ。ところが、ChatGPTはそう理解しなかった。
私の質問が不完全であったために、<どの相互関税か?>と質問してきたのである。責任は、私にあった。「相互関税」は一般的な概念であるから、そのうち何を問題にしているかを明確にしなければならなかったのだ。
そこで、<トランプ政権による相互関税>と指定したところ、ChatGPTは、第1次トランプ政権における関税政策のことと理解して、<2018年3月、鉄鋼25%・アルミ10%の追加関税を世界に発動>などと説明を始めた。
また、<一律10%の基本関税が5日に発効>と私が書いたことについては、<ある国が全品目に対して一律関税を課す政策を取ったことだ>と解釈し、<一律10%の基本関税はおそらくアルミニウムに対するSection 232関税(米232条関税)のことと思われます。これは2018年3月に発表され、4月以降順次発効しました>などと説明を始めた。 【次ページ】プロンプトより「重要なこと」とは?
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