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  • 2025/04/15 掲載

メガバンク・地銀・証券が「ウェルスマネジメント」に熱を入れる理由、成功する条件とは

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近年、金融業界では、富裕層に向けた資産管理サービスである「ウェルスマネジメント」が注目を集めている。ウェルスマネジメントとは、個人が保有している金融資産に対して、資産運用アドバイスや相続税対策、事業継承支援など、資産全体を包括的にサポートするサービスだ。そんなウェルスマネジメントが今、金融機関の成長には欠かせないビジネスとなりつつある。今回はそんなウェルスマネジメントビジネスの動向について、大和総研金融調査部の主席研究員である内野逸勢氏に解説いただいた。
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なぜ今、メガバンク・地銀・証券会社がウェルスマネジメントビジネスに力を入れているのか?
(Photo:Morumotto / Shutterstock.com)

メガバンクが「ウェルスマネジメント」に熱を入れるワケ

 大手金融機関のウェルスマネジメントビジネスの重要性が増している背景には、2023年12月に政府が公表した資産運用立国の実現に向けた政策プランが端を発する。その対応においてメガバンク、大手総合証券などが資産運用ビジネス、ウェルスマネジメントビジネスへの戦略を打ち出したことである。

 特にメガバンクは、少子高齢化の急速な進展、超低金利政策の長期化、異業種による銀行業への参入による競争の激化など、銀行を取り巻く厳しい環境に直面してきた。大和総研金融調査部の主席研究員の内野逸勢氏は、金融機関の置かれる状況について、次のように語る。

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大和総研金融調査部
主席研究員
内野逸勢氏
「メガバンクを含めた銀行にとって、これまでの主な収益源は預貸ビジネスを中心とした資金運用収益によるものでした。しかし、銀行では融資を行う際に自己資本比率を一定に保つ必要があるなど、資本規制を受けるため、いわゆる“資本ヘビー”なビジネスです。2023年以来東証が主導してきている企業価値向上のための経営では資本を活用するのであれば、資本コストを上回る収益をあげる必要があるため、低金利下での融資ビジネスのさらなる拡大は難しい部分もありました。最近では、金利が多少上がってきて銀行の融資ビジネスの収益向上への期待が高まっているものの、企業価値を示すPBR(株価純資産倍率)が1倍を超える水準で推移している銀行はほんの一部に限られており、投資家の評価も依然低い傾向にあります」(内野氏)

 そうした中、銀行が、資本をあまり活用しない、つまり“資本ライト”なビジネスとして注目されるようになってきたのが、役務提供の対価を得る役務取引等収益、いわゆる「手数料ビジネス」である。この中には、為替業務などによって受け取る手数料やあるいは投資信託、保険商品の販売手数料などがある。

 内野氏は、「中でも重要になるのが、一定額以上の金融資産を保有する富裕層をターゲットとする資産管理型ビジネス(ウェルスマネジメント)の領域です。いわゆる株式の売買手数料をベースとするフロー型のブローカレッジビジネスではなく、顧客の資産形成の目的などを踏まえた顧客本位の投資アドバイスなどを伴いながら、ファンドラップなどではプロに運用を任せるための手数料、つまり預かる運用資産残高の時価に連動する手数料をベースしたストック型の資産管理型ビジネスがウェルスマネジメントビジネスと呼ばれます。得られる手数料も安定し、銀行の収益を高める非常に重要なビジネスと言えるでしょう」と語る。

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メガバンクが「ウェルスマネジメント」に熱を入れる理由とは…?
(写真:西村尚己/アフロ)

証券会社も「ウェルスマネジメント」ビジネスへ本格的なシフト

 実はメガバンクのウェルスマネジメントへ注力する以前に、ウェルスマネジメントビジネスへの本格的なシフトは証券会社が中心となって進めてきた経緯がある。内野氏はこう解説する。

「近年、大手2社を含む証券会社は、ウェルスマネジメントに本格的に注力してはじめています。主に、ラップ口座やSMAなど個人向けの投資一任商品を販売して残高を積み上げる資産管理型ビジネスへ移行し顧客本位の営業体制を構築することで、安定的な収益の獲得を目指しているのです」(内野氏)

 総合証券会社が中心となって、委託手数料に依存する収益構造から、資産管理型のビジネスモデルへと移行を進めており、収益の4割程度を占めるほど重要な領域になってきています。

地銀も注力するが…力不足かもしれない理由

 地銀の場合は、「ウェルスマネジメント」とまでは言えないが、新しいNISAなどにより証券ビジネスが盛り上がりを見せる中、地銀にとって結果として銀行の既存顧客の預金流出を防ぐことにつながる証券ビジネスの重要性が増していると、内野氏は語る。

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