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  • 2023/05/10 掲載

「ChatGPTで株価予測」が実現? 金融分野の生成AI最新動向

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投資や財務など金融分野におけるジェネレーティブAI活用が進みつつある。最近発表された論文でChatGPTに株価予測能力があることが示されたほか、ブルームバーグは独自に金融に特化した大規模言語モデルを発表、また同社の競合と目されるスタートアップもジェネレーティブAI開発に注力し始めている。金融分野におけるジェネレーティブAI活用、その最新動向を探ってみたい。
執筆:細谷 元
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ChatGPTで株価予測の可能性も。金融分野におけるジェネレーティブAI活用、その最新動向
(Photo:T. Schneider/Shutterstock.com)
 ChatGPTに端を発するジェネレーティブAI(生成AI)ブームが国内外で起こっているが、その活用範囲は主に一般消費者や個人クリエイターにとどまっている印象がある。しかし、企業や産業単位でも、ジェネレーティブAIに対する関心は高まっており、活用を模索する取り組みが始まっている。

 ヘルスケアやリテールなどさまざまな分野での関心の高まりが報告されているが、その中でも金融・財務分野は、ジェネレーティブAIのインパクトが大きいことが予想されており、実際に同テクノロジーの活用に向けた動きが加速しつつある。

ChatGPTで株価予想

 金融・財務分野においてジェネレーティブAIは、どのような役割を担うことができるのか。

 最近、米フロリダ大学の教授が発表した論文では、ジェネレーティブAIが株価予測に役立つ可能性が示唆され、話題となったところだ。この論文は同大学でファイナンスを専門とするアレハンドロ・ロペス=リラ教授が2023年4月10日に発表したもの。

 ChatGPTを使い、ニュースの見出しから翌日の株価の動きを予測したところ、ランダムに比べて遥かに高い精度を達成、ChatGPTで株価予測が可能であることが示された。

 この分析では、ChatGPTのベースモデルとなるGPT3.5が用いられ、他のモデルとも精度が比較された。比較されたのは、GPT1、GPT2、BERTの3モデル。

 比較の結果、同論文は「GPT1、GPT2、BERTなどの基本モデルは、株価の予測には精度が不十分であることが示された。これは、複雑なモデルのみが株価の予測に役立つことを示唆しており、ChatGPTのような高度な言語モデルの活用が投資決定プロセスにおいて有益であることを示唆している」と結論付けている。

 この実験ではどのようなプロンプトが用いられ、どのようにChatGPTの能力が評価されたのか、その詳細をみていきたい。

 用いられたデータセットは、主に2つ。1つは、the Center for Rearch in Security Prices (CRSP)の日次株価データ、もう1つは、主要データベンダーが配信するニュースヘッドラインだ。サンプル期間は、2021年10~2022年12月。

 ChatGPTのベースとなる大規模言語モデルである「GPT3.5」は、学習データが2021年9月までとなっており、それ以降の情報は持ち合わせていない。つまり同論文では、トレーニングデータに存在しない情報に基づいて、ChatGPTがどこまで正確に株価を予測できるのかが評価されたことになる。

 プロンプトは以下のものが用いられた。

(英語原文)
Forget all your previous instructions. Pretend you are a financial expert. You are a financial expert with stock recommendation experience. Answer “YES” if good news, “NO” if bad news, or “UNKNOWN” if uncertain in the first line. Then elaborate with one short and concise sentence on the next line. Is this headline good or bad for the stock price of _company_ name_ in the _term_ term?

Headline: _headlin_

(日本語翻訳)
過去の指示はすべて忘れてください。あなたは金融の専門家であり、株の推奨経験があります。最初の行で、良いニュースには「はい」、悪いニュースには「いいえ」、不確実な場合には「不明」と回答してください。次の行で1文で簡潔に、その理由を説明してください。

_term_期間の_company_name_の株価に対して、この見出しは良いのか悪いのか?

見出し:
 入力されたこのプロンプトに対し、ChatGPTは、ニュースの見出しが企業の株価に良いのか、悪いのかを「はい」か「いいえ」で回答。この回答と翌日の株価の相関関係が分析された。

ブルームバーグは、金融特化型大規模言語モデルを公表

 リラ教授の論文は、投資におけるChatGPTの可能性を示唆するものであるが、実際に投資判断に活用するには依然課題が多いと指摘。不適切な情報やバイアスの存在、また国内外の政治・経済情勢を含め多面的に状況判断する必要性があること、またデータの事前処理など予測精度を高める余地があると述べられている。

 それでも金融・財務分野では、タスクの自動化に対する関心は高く、ChatGPTを含むジェネレーティブAIの活用方法を模索する企業は少なくない。実際、リラ教授のもとには、ヘッジファンドからの問い合わせがあったという。

 これに関して、金融大手ゴールドマン・サックスは3月26日のノートで、金融業界の約35%の仕事がAIによる自動化の危機に直面していると推定している。

 そして、実際にブルームバーグが独自に開発した金融特化AIモデルを公開したことで、この流れは今後加速する公算が高まっている。

 ブルームバーグは2023年3月30日、金融データに特化した大規模言語モデル、「ブルームバーグGPT」を公開。上記でも触れたが、ChatGPTは幅広く一般に利用されることが想定されたもので、特定の分野に特化したものではない。

 一方、ブルームバーグGPTは、同社が長年蓄積してきた膨大な金融データを学習させた大規模言語モデルで、複雑な金融ビジネスを理解し、金融業界独特の語彙に対応、センチメント分析、固有名詞認識、ニュース分類、質問応答などのタスクをこなすことが可能であるという。

 ブルームバーグGPTの開発に用いられた学習データ量からも如何に金融分野に特化しているのかが分かる。

 この大規模言語モデルの学習には、7000億以上のトークンが用いられたのだ。内訳は、金融関連データが3630億トークン、一般データが3450億トークン。ちなみにChatGPTのベースモデルGPT3.5の派生元であるGPT3の開発で用いられたのは3000億トークン。OpenAIによると、100トークンは、英語75文字に相当する。

画像
ブルームバーグGPTなど「長年蓄積してきた膨大な金融データを学習させた大規模言語モデル」がすでに登場
(Photo:Shutterstock.com)
【次ページ】ブルームバーグの競合スタートアップもAI開発に注力
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