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- 2024/01/12 掲載
日産やモスバーガーも活用、なぜ大企業がVRChatを使うのか? クリエイター経済との意外な接点
連載:根岸智幸のメタバースウォッチ
今、VRChatに注目すべき理由
VRChatは米国VRChat Inc.が2017年から開発・運営しているVR型のSNSだ。誰でも無料でゲームやイベントを楽しんだり雑談したりできる。2022年時点で340万人、日本国内だけで30数万人の利用者がいるとされ、ユーザーが作った3Dで構築されたワールドが10万近くあるとされる。11月には待望のVRChat内の公式課金システムがアナウンスされ、ワールドの作者が訪問者に課金できる仕組みが整備された。企業での利用も広がりを見せている。サンリオは2021年12月に2日間のVR音楽フェス「SANRIO Virtual Fes in Sanrio Puroland」を有料開催し、その会場のひとつとしてVRChatを使用した。2024年は2月24日から3月10日にかけて計6日のライブパフォーマンスを行う。2023年12月には『プリキュアバーチャルワールド』が開催され、ミュージックステージやバーチャルキャラクターショーが行われた。サンリオとプリキュアのVRChatイベントを制作したのはgugenkaだ。
HIKKYが年数回開催している「バーチャルマーケット」の企業ワールドも規模を拡大しており、2023年12月の開催では、高島屋、ビームス、ロート製薬、ヤマハ発動機、日本中央競馬会(JRA)、愛知県豊田市など、計23の企業や自治体などが出展した。
もうひとつ注目すべきは、3Dアバターやワールドを作るクリエイターたちの経済だ。ピクシブは2023年1月に「BOOTH 3Dモデルカテゴリ取引白書」というブログ記事を掲載。オンライン同人マーケットBOOTHの3Dモデルカテゴリの取引高は2019年からほぼ倍々ゲームで伸びており、2022年は24億円に達したという。
BOOTHの3Dモデルカテゴリのうち、VRChat関連は8万1703件で全体の約64%だが、人気上位2000件の大半にVRChat対応のロゴが付いている。BOOTHで3Dモデルを販売するクリエイターの中には総売上が700万円に到達したとnoteで報告している人もいる。
企業と個人クリエイターをマッチさせる
名だたる大企業から制作を請け負った往来は社長の東智美氏が1人でやっている小さな企業だ。東氏はVRChat内の人脈の中から案件ごとに最適なクリエイターを抜擢してきたという。
「色々なコミュニティに顔を出して、スタッフを一緒にやったりしているうちに、『この人だったらできるんじゃないか』と思って、案件が来たときに1人ずつお声がけして口説くという感じです」(東氏)
日産自動車は軽EVのVR試乗会など4つのワールドを作成
東京の銀座四丁目にある日産自動車ショウルーム「NISSAN CROSSING」の3D版をVRChatに公開したのが2021年11月4日。グローバル企業のVRChat利用としてはおそらく世界初だろう。さらに軽EV「日産SAKURA」のVR試乗会や、EVによる環境啓発など4つのワールドを作った。「最初に日産自動車を手がけていただいたのは、VR蕎麦屋タナベさんというクリエイターでした。タナベさんはもともとVRChat内でいろんな配信企画をやっていて、そこに私が『自分も出たいです』と積極的に手を挙げて、それを半年も続けると信頼関係ができてきました。それがあってこそ、この仕事の相談ができました」(東氏)
タナベ氏はモスバーガーのワールド制作も担当した。その後、往来以外の案件も請け負うようになり、2023年10月には19年続けた現実の蕎麦屋を閉店してVRクリエイター専業となった。
京セラは技術や製品を展示、海底を自由に散歩も
京セラでは「Kyocera Tool World」と「Kyocera Laser World」を制作し、京セラの技術や製品の展示と説明を行った。「Laser World」では相模湾付近をイメージした海底ステージを制作し、そこで技術デモを見るだけでなく、海藻が揺らぎ、魚が泳ぐ海底を自由に散歩することもできた。「京セラのワールドを作っている青猫さんも、もともとは『Open Mic Bar -Spot Light Talks(以下、SLT)』という、音楽ライブハウスのワールドを運営していました。私はそこに2年ぐらい客として通っていて、青猫さんのワールドを作るセンスと能力は凄いなと思っていました。その青猫さんに京セラの案件を提案したとき、『仕事でやったことはないし、自分はそんな(大それた)人間じゃない』と言っていたのを『絶対できるから』と口説き落として大成功しました」(東氏)
ワールドを制作する場合はどういう体制で進めているのだろうか。
「ワールドを作るときは、メインのまとめるクリエイターは1人。そこに3Dモデル作る人、ギミックを作る、パーティクルを作る人、シェーダーを作る人と、案件によってマチマチですけど、いろんなクリエイターが作った技術が、その1つのワールドに入っています」(東氏)
「誰に何を頼むかは同時進行で、このワールドクリエイターさんに、こういうギミックを作れる人をぶつけたら、性格的にも合いそうだな、こことここをくっつけたら多分シナジーが生まれる、みたいなところまで、あらかじめ全部設計した上で同時に落としていきます」(東氏)
往来は東さん1人の会社で、企業案件はすべて友人知己で回している。結果として作られたワールドは他社にひけをとらない立派なものばかりだが、個人とその友人チームに、次々と大企業や自治体の案件が舞い込むのはなぜなのか。 【次ページ】きっかけはホストクラブ!?VRChatの魅力とは
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