- 会員限定
- 2024/03/21 掲載
廃業寸前のメーカーが大復活できたワケ、「豚の貯金箱と風船」を使うたった1つの方法
抽象的すぎる「パーパス」の限界
人の数だけ解釈はある──。経営方針なども同様です。そのことを、身をもって経験した出来事があります。ある時期、会社で色んな悪い噂が流れたことがありました。それは私たち経営側の発信の弱さと発信する内容が具体的に伝えられていないことが大きな原因でした。その時、『人の解釈はそれぞれで、色んな人からの話や噂の影響で大きく内容が変わったりもする。また、単なる噂が人によってはそれが事実となることもある』ということを学びました。それは、良い、悪いというジャッジの次元ではなく、それが人間というものなのだ、と。
また、社員たちの解釈をコントロールすることは無理なことです。会社の経営方針や使命を社員に伝えるには、パーパス(存在意義)やビジョン(構想)、ミッション(使命)、バリュー(価値観・行動指針)と呼ばれる経営理念の概念がありますが、誤解や噂、重い雰囲気はそれらの概念を使ってもどうすることもできない痛感しました。たしかにパーパスは大事です。しかし、パーパスだけでは抽象的すぎて解釈を統一できず、限界があるのです。
そこで、抽象的なパーパスに具体的な数字を伴わせる必要があると思いました。それも目標売上などの大きな数値だけでなく、もっと具体的に。
それと同時に、人の解釈や心を知ってその人に合った伝え方を習得する必要性も感じ、心理学を勉強しました。人は大きく分けて6つの思考タイプに分かれるそうです。それが以下です。
(1)論理的に考えるタイプ | |
(2)信念、価値観を大切にするタイプ | |
(3)調和を何よりも大切にするタイプ | |
(4)指示を受け動くのが得意なタイプ | |
(5)遊び心持っていて楽しむことが大事なタイプ | |
(6)行動力があり決断が早いタイプ |
このうち、会社のパーパスが腑に落ちるタイプとそうではないタイプがいることに気付きます。パーパスは会社の志や夢です。(2)のタイプの方々には響きますが、それ以外には響かない可能性が高いと思いました。発信の周波数と受信する周波数が合っていないイメージです。そして、どうすれば全社員(全6タイプ)の心に響くのか? を考え、全タイプに刺さるメソッドを設計しようと考えました。
パーパスは夢物語か? 社員に伝えるために「大切な2点」
そもそもパーパスは、会社の向かうべき場所のようなものです。組織が存在する意義なので非常に重要なのですが、夢物語のような響きになってしまうことがあります。社員に夢物語と思わせず、自分ごととして具体的に感じてもらうために大切なことが2つあります。1つ目は、メンバー全員が目指すべき場所を記している「地図」を持っていること。2つ目は、その地図の読み方を全員が知っていることです。到着地までどのくらいの距離があり、人員は何人必要なのか? 歩く速度は? 食料と水はどれくらい残っており、どのタイミングで得るべきなのか? など。
そして、組織でこの地図の役割をしてくれるのが「決算書」です。なぜなら決算書は、組織に残っている体力、夢を叶えるために必要な利益の大きさや達成するスピード・期間、融資を受けるタイミング、会社の現状、そして進むべき道が、数字に基づき示されているからです。地図(=決算書)を読み解く力が全社員に備わっていれば、同じ意識を持って進むことができます。
決算書が要であることは分かりました。しかし、会計知識がゼロの社員に、数字と漢字だらけの決算書では嫌悪感を抱かせてしまいます。それでできたのが、豚の貯金箱と風船を使った会計メソッドです。
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR