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  • 2012/07/12 掲載

トヨタ 新美篤志副社長が語るものづくり革新:7種の無駄を削減、「石にかじりついても日本の生産を守る」トヨタの取り組み

グローバル市場に打ち勝つ!

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トヨタ自動車は2007年まで海外を中心にグローバル生産を拡大し、その生産台数も850万台を超えた。しかし、2008年以降はリーマンショックや天変地異が重なり、同社の生産は減少傾向をたどっている。果たしてトヨタは起死回生できるのか?トヨタで長きにわたり現場を指揮・統括してきた新美篤志氏は「この難局を乗り切るために、モノづくり革新による画期的なコストダウンに取り組まなければならない」と説く。
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良いモノを、より安く提供できる企業がグローバル競争を勝ち抜く

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トヨタ自動車
取締役副社長
新美篤志氏
 いまトヨタでは、ものづくり強化に向けて挽回を図るべく、新体制を急ピッチで整えている。

 2012年1月1日付けでトヨタ車体の完全子会社化を完了。同社はミニバン、商用車、SUVなど、特定車種の企画から生産までを担当することになる。また、同7月には関東自動車工業を完全小会社化し、子会社のトヨタ自動車東北、セントラル自動車と合併して「トヨタ自動車東日本」を設立する予定だ。同社では小型車の企画・開発・生産を一貫して行い、低コストで専門性の高い車種を生産できる体制を構築する。

 円高や電力問題など、日本の製造業が置かれている状況は厳しいが、6月21日の日本 ものづくり ワールドで基調講演に登壇したトヨタ自動車 取締役副社長 新美篤志氏は現在の状況について次のように語る。

「未曽有の危機の中にあるが、我々はユーザーに良いモノを、より安く提供できる企業がグローバル競争を勝ち抜けると考えている。特に円高という環境は大変厳しいが、逆にこれをチャンスにしていける。」(新美氏)

 トヨタが海外生産を本格化させたのは1980年代に入ってからだが、言葉や文化が異なる海外においても、国内と同一品質を保つために、日本で根付いた生産方式によるものづくりを展開し、現地と根気良く話し合いながら時間をかけて定着させてきた。そしてものづくり革新によって、いまも画期的なコストダウンにチャレンジしているところだ。

ものづくり革新の2大柱「自働化」「ジャスト・イン・タイム」で100%の良品をつくる

 トヨタのいうものづくり革新には4つのポイントがあるという。「ものづくり基盤」「自働化」「ジャスト・イン・タイム」「人材育成」だ。

 特に、不良品をつくらず、生産性を向上させる「自働化」と、必要なモノを必要なときにつくる「ジャスト・イン・タイム」については、トヨタ生産方式の源流になる2本柱である。どちらも「金がない、技術がない、あるのは人だけ」という状況の中で、欧米の生産性の高い設備に対応するために同社が考え出した生産方式である。その基本には「徹底した無駄の排除」と「試行錯誤を繰り返しながら改善(カイゼン)を続ける思想」がある。

 2大柱の1つ「自働化」という側面では、不良が発生する瞬間を検知して機械を停止し、異常を取り除き、再生産を始めることに工夫を凝らしてきた。

「我々は、最近では“加工点”を科学することで、良品条件を確立する活動に注力している。100%の良品しかつくりださないものづくりを目指している。」(新美氏)

 その一例として新美氏が挙げるのが、関連パートナー会社の生産ラインだ。エンジンバルブを生産する愛三工業では、鍛造の“加工点”を研究し、部材の曲がりを防止することで、従来の生産ラインを改善。鍛造・表面処理・後加工を一気通貫で行うことで、生産摂設備を半減し、ラインの長さを従来の4分の1(15メートル)に短縮することに成功したという。これによりコストを従来より30%ほど削減できるようになった。

画像
鍛造の“加工点”を研究し、生産ラインを改善した愛三工業のライン。ライン長を従来の61メートルから15メートルへ、約4分の1に短縮。コストを従来より30%ほど削減できるようになった。

 一方、トヨタの工場においては、工程内の不良ゼロ活動も実践している。溶接時に発生するスパッタ(塗装時に悪影響を与える火花の微粒子)をゼロにすることにこだわって、工夫を凝らしている。組み立てラインなども改善を行うことで、現在では不具合件数が0.02件/台まで改善しているそうだ。これは、新美氏が現場にいた当時とくらべ、飛躍的に向上した数値だという。また、安全・安心なクルマを届けることを使命とする生産部隊が最終的な出荷品質の責任を持ち、その組織名も「車両生技部」から「車両品質生技部」へと改変した。

【次ページ】新美氏が明かす7種類の無駄とは?
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