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  • 2011/02/14 掲載

自動車のIT化が進展、EV市場とテレマティックスの最新動向

スマートフォン連携がクルマの価値を決める

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自動車業界では今、電気自動車(以下、EV)が大きな注目を集めている。日産のLeaf、三菱自動車のiMiEV、ダイムラーのSmart、GMのChevrolet Volt、フォードのTransit Connectなどが続々と発表され、本格的なEV時代に突入した。EVが注目される背景には、歴史的な原油価格の高騰、中国政府によるEV/ハイブリッド車(以下、HEV)推進、電気エネルギーの有効活用を考えるスマートグリッドの進展などが大きく影響している。さらに直近ではスマートフォンの爆発的な普及に伴って、スマートフォンと自動車を連携する「テレマティックス」も自動車の価値を決める大きなトリガーとなりそうだ。野村総合研究所(以下、NRI) グローバル戦略コンサルティング部長 北川史和氏は、「スマートフォンとクルマの融合・連携により、これまでにない新たなビジネスチャンスが勃興し、この10年間で大きな市場規模になる」と指摘する。
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(出典:野村総合研究所,2011)

図1 2030年までの世界乗用車販売台数
 NRIの試算によれば、2020年の世界乗用車販売台数は7552万台に達する(図1)。2007年時点の自動車販売台数は、米国が1608万台、欧州が1557万台、日本が440万台、中国が629万台で、合計で5361万台だった。これがリーマンショックの影響で2009年には4769万台にまで大幅に落ち込んだが、このときに下支えしたのが中国である。

 中国は2009年に米国を、2010年には欧州を抜いて、今や世界最大の自動車市場となった。その後も2010年から2020年までは、年平均成長率(CAGR)6.5%で拡大する見通しで、2020年には2500万台と「今までに見たこともないとてつもないマーケットになる」(北川氏)という。

 そこからさらに10年(2020年から2030年)は、中国は4%の伸びにとどまる見込みだが、今度はインド市場が牽引していくことになる。インドは2010年から2030年まで継続して9.14%の高い伸びを示す見通しだ。

EVには経済合理性を見出しにくい

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(出典:野村総合研究所,2011)

図2 EV市場を重要ファクターで感度分析したところ
 このように、世界規模で見れば順調に成長していく自動車産業だが、近年とくに注目を集めているのがEV(電気自動車)だ。EVは自動車の構造が簡易化しやすいため、世界各地で数多くのベンチャーが生まれている。大手自動車メーカーも本格参入を表明しており、トヨタが昨年米テスラに出資したのは記憶に新しい。また、三菱自動車は2009年にiMiEVを、日産は2010年にLeafを、海外勢もGM、Ford、ダイムラー、BMWなどがEVを発売する計画を明らかにしている。

 では、EVは自動車業界にどのような影響をもたらすのだろうか。実際の市場動向について、北川氏は次の視点でシナリオを示した。

 まずは「経済合理性」を考えた場合だ。特にLIB(リチウムイオンバッテリー)価格、原油価格、燃費規制の3つが経済性に大きな影響を与えると考えられる(図2)。結論から言えば、これらの価格がどう推移するかにかかわらず、「EV市場は相当保守的にみても2020年には100万台の大台を超える」という。さらに、LIBのWh単価が30円になれば、300万台超えも見えてくるとみる。ただ、現時点では韓国勢が価格破壊攻勢をかけているものの、「(日本勢も含めると)平均50円前後での商談が進んでいる」(北川氏)。

 一方で、NRIの消費者意識アンケート(2009年)をみると、昨年のハイブリッド車(HEV)ブームが後押しし、既にHEVユーザーも非HEVユーザーも、HEVへの乗り替えニーズが増している(図3)。こうしたアンケート需要に基づくと、総合的にプラグインハイブリッド(PHEV)やEVへの需要は少ない。「2020年まではHEVを軸として普及が進むのではないか」(北川氏)(図4)。

 総括して、「電池産業は大きくなるが、自動車メーカー全体ではコンベンショナルなエンジン(ガソリンエンジン)がメジャーであることに変わりはない」とし、「まだまだ電気自動車の経済合理性を見出すのは難しい」とした。「EVにおいて論点になるのは、コンベンショナルなエンジンがどれだけ効率化するのか、従来あるエンジンをどれだけエンハンスできるのかということ」(北川氏)

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(出典:野村総合研究所,2011)

図3 消費者が将来購入したいパワートレーン(動力および動力伝達、駆動系のこと)
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(出典:野村総合研究所,2011)

図4 日米欧中におけるパワートレーン予測

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