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  • 2018/07/05 掲載

カーシェアリングのビジネスは持続可能か? トヨタや日産の動きは

連載:クルマの進化が変える社会

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IoTによる大幅な効率化や決済システムの進化などで、各シェアリングビジネスが急速に普及している。クルマ業界でもレンタカーは高度成長期から存在していたが、ここ数年でカーシェアリングの普及が進んだ。従来は店舗型だったレンタカーが、Webによる申し込みと決済、IoTによる追跡等で来店不要となり、商圏を大幅に拡大しているのである。今後、カーシェアリングはどのように広がり、活用をみせていくのだろうか。
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拡大するカーシェアリング、その課題と可能性とは
(写真は著者撮影)

レンタカーをIoTにより効率化、手軽な存在にしたカーシェアリング

 カーシェアリングとレンタカーの大きな違いの1つは、店舗の有無だ。駐車スペースが店舗代わりのカーシェアリングは、来店不要のため貸出・返却が24時間可能で、保険代やガソリン代も費用に含まれているため、より手軽に利用できる。基本的に、短時間での利用を想定した形態といえる。

 従来のレンタカーの場合、朝早くから出掛けたい時、帰りの時間が予測できない時などレンタカー営業所の営業時間外も利用するには夜間の保管場所を確保する必要があった。しかしカーシェアリングはIoTによりスマホで24時間、予約や借り出しや返却ができるため、利用する時間だけ借りればいい。ただし、来店不要とはいえ自宅に届ける商品ではないだけに、どれだけニーズを読んでシェアカーを配置できるかが、収益率を左右することになる。

 NTTドコモはレンタカーとカーシェアリング、さらにマイカーシェア(個人のマイカーをシェアする方法)を1つにまとめて自由に利用できるサービス「dカーシェア」を立ち上げた。短時間の利用であればカーシェアリング、条件が合えばマイカーシェア、そして1泊以上の長時間の利用であればレンタカーと、使い分けることができる統合型のカーシェアリングサービスだ。

 ただし、シェアカーが配置できる駐車場とレンタカーの営業所がかなりの密度で分布している首都圏などでは十分なサービスが可能だが、郊外や住宅地では拠点単位のメッシュがかなり粗くなる。今後、クルマを所有しない世帯が増えれば、郊外の住宅地にもレンタカーの営業所やシェアカーが配置されるかもしれないが、そのようなところでカーシェアリングを定着させるのは、実はかなりハードルが高い。

問題点は利便性の持続可能性、先行するドイツも苦戦

 日本におけるカーシェアリングの先駆者と言えるのが、会員数90万人と言われる「タイムズカープラス」を運営するパーク24だろう。タイムズがコインパーキング数台分のスペースを利用してカーシェアリングを行っているのは、非常に効率のいい方法だ。そもそも遊休地などを一時的に利用したり、月極駐車場の未契約分を有効活用するのがコインパーキングであるが、そのスペースをさらに活用し、IoTによって無店舗型のカーシェアリングを提供している。

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パーク24の駐車場管理会社タイムズ24が運営するカーシェアリング「タイムズカープラス」。月額基本料(1,030円で同額分の無料利用付き)+15分206円で利用できる手軽さで会員を増やし、駐車スペースに余裕があり、需要の高い地域ではたくさんのシェアカーを用意するほどになっている

 これなら需要に応じて各パーキングへのカーシェアリングの割り当て台数を調整するのも容易であるし、コインパーキングとカーシェアリングのニーズの変化に応じて配分を調整することができる。しかし、それでもカーシェアリングを利用するユーザーの需要に対応し切れるかは難しいところだ。

 登録ユーザーなど利用客が少ない立ち上げ期のカーシェアリングは、拠点数が少ないことからユーザーは思うように活用しにくい。これが拠点数が増えていくとユーザー数も増えて、ある程度の地域に行き渡った状態がおそらく利用しやすく、ユーザーがサービスの恩恵を受けることができる環境だろう。

 しかし収益を上げるためには、より多くのユーザーに効率良く利用してもらい、空車状態をできる限り少ない状態にしなければならない。ところが、各地域によってクルマを利用したい時間帯はある程度定まってくる。住宅地なら通勤通学の送り迎え、オフィス街であれば日中の営業時間帯だ。つまり、皆が使いたい時間が集中するため、使いたい時にはクルマが不足気味となり、早い者勝ちで予約したメンバーしか利用できない状態が続けば、利用するメンバーは減少に転ずる。

 とはいえ過去のピーク需要に合わせて増車すれば、それ以外の時間帯はクルマがダブつくことになり、コインパーキングとしての収益を得るチャンスも逃す、お荷物となってしまう。結局、ユーザーを獲得し続けながらクルマも増やし続ける、成長過程のビジネスとして投資し続けていくことにより持続可能なサービスなのだ。

 ドイツでは、いち早くカーシェアリングサービスへ乗り出していたダイムラーとBMWが、レンタカー大手などと立ち上げたベンチャーをそれぞれのパートナーから共同出資分を買い取ることで完全子会社化し、合併するという動きを見せている。ダイムラーの「car2go」は300万人という登録ユーザー数を誇るが、まだまだ十分ではないのだ。BMWの「Drive Now」も100万人のユーザーを獲得するまでになったが、お互いが成長するためには合併が最も効率のいい手段と判断したのである。このサービスの理想系は、ライバルのいない公共的なモビリティになることだろう。

 最終的には街で自由に乗り捨てできるほどに普及しなければ、ユーザーにとって利便性が高く、採算ベースに乗れるビジネスには成り得ない性質のものなのだ。

 それでも別の見方をすれば、カーシェアリング本体で収益を上げなくても副次的な要素で利益を確保できれば、ビジネスとして成立する。タイムズはコインパーキングの有効活用だけでなく、カーシェアリング利用者の行動パターンをビッグデータ化してさまざまなサービス事業者に提供できれば、それも収益につながるのだ。

【次ページ】 トヨタとパーク24が提携、その狙いとは
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