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- 2025/03/24 掲載
実は対米投資「5年連続1位」、日本メーカーで「米国製」が爆増しそうな納得理由
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
製造業の「米国回帰」が進むも「雇用は低迷」のワケ
米国への製造業回帰の流れは一般的に、2017年に発足した第1次トランプ政権で始まったとの印象が強い。トランプ氏が「製造業復活」を強く唱えていたからだ。だが意外にも、自由貿易を標榜する第1次オバマ民主党政権がリーマンショック直後の2010年に、「米国を新規雇用と製造業を引き付ける磁石にする」方針をすでに打ち出していた。2012年9月には米コンサルティング大手のボストン・コンサルティングが、「2020年までに500万人分の製造業雇用が米国へ回帰する」との予測を出した。
しかし実際には、1979年6月に1955万人であった製造業雇用は、2019年6月に回復傾向を見せながらも1279万人。ピーク時の勢いは取り戻せなかったと、米労働統計局が明らかにした。直近の2025年1月も推定で1276万人と、バイデン政権が半導体やEV、太陽光パネルなどの気候変動関連に巨額の補助金を拠出し、製造業回帰を支援したにもかかわらず、全体としては横ばい傾向が続いている。
一方で、米国勢調査局のデータを基にセントルイス連銀がまとめた米民間部門の製造業関連建設費の支出の推移を見ると、第1次トランプ政権下で微増の傾向が始まり、バイデン政権下で右肩上がりに急増している(図1)。

つまりカーニーが指摘するように、「製造業の米国回帰は後戻りのないもので、勢いが増す」。その一方で、企業の利潤と効率性の追求により自動化やAIの利用が進み、必ずしも雇用の顕著な増加にはつながらない可能性が示唆されている。さらには、後ほど解説するが深刻な人手不足も問題となってくる。
ピーターソン国際経済研究所の上級研究員であるハーバード大学のロバート・ローレンス教授も、「米国の総雇用数に占める製造業の割合は1970年代の30%から2023年6月には8%まで落ちており、これは自動化、生産性の向上、国内需要のモノからサービスへの移転という構造的な変化を示唆している」と結論付けている。

こうした中、第2次トランプ政権がスタートした。製造業の雇用低迷を打破しようと試みているが、ここで重要な役割を果たしていくと見られているのが日本企業だ。 【次ページ】日本企業の生産拠点「米国シフト」が加速しそうなワケ
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