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  • 2025/03/17 掲載

補助金より減税……トランプ大統領が「EV・半導体の補助廃止」を進める興味深い思惑

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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トランプ大統領が打ち出す、米国の新産業政策の輪郭が明らかになりつつある。EV購入補助金を廃止するのをはじめ、米半導体産業に巨額の補助金を支出して国内製造業を育成するCHIPS法にも否定的な姿勢を示している。このようにトランプ大統領は補助金政策には否定的な立場であり、「補助金より減税」という経済哲学に基づいて展開されていくことになる。では、なぜそのような立場をとるのか。トランプ大統領の思考を探る。
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トランプ氏はなぜ「補助金より減税」を選択するのか
(写真:UPI/アフロ)

トランプ氏がさっそく「EV義務化政策」廃止の大統領令

 米国におけるEV販売は、2024年の夏から秋に横ばいあるいは微減の傾向が続いていた。しかしトランプ大統領が選挙期間中、1台につき最大7,500ドル(約115万円)の購入補助金の廃止を公約に掲げた。そのため、トランプ氏当選後の2024年11月、12月、2025年1月に、「駆け込み需要」で前年同月比の販売台数が1~2万台ほど伸びた。

 それでも一貫して好調が続くハイブリッド車には見劣りがするほか、1月はまだ補助金が廃止されていなかったにもかかわらず、EV販売の勢いは失速している(図1)。

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補助金が続いていた1月だがEV販売の勢いが失速している
(出典:Argonne National Laboratoryより編集部作成)

 こうした中、トランプ大統領は1月20日の就任当日に「米国のエネルギーを解き放つ」と題して発出した大統領令で、EV購入補助金(税額控除)を含むEV義務化政策を廃止する基本的な方針を示した。この大統領令では、EV補助金の財源の根拠法である「インフレ抑制法(歳出・歳入法)」(バイデン政権下の2022年8月に米議会で成立)に基づく予算支出を90日間停止するよう命じている。

 ところが2月上旬になっても、全米のディーラーにおいて依然としてEV購入時の税額控除を受けることが可能だと報じられている。税額控除の事務処理を行う米財務省に問い合わせても、「現時点では変更なし」との回答であったという。

 その理由は、国家の財布を預かる米議会が法律で決めた支出は、米議会でしか変更を加えることができないからだ。そのためトランプ政権はできるだけ早く、上下院でインフレ抑制法の修正あるいは廃止により、EV補助金の恒久的な廃止を実現させたい考えだ。

 ちなみに同法は、EV購入補助金やEVおよびバッテリーの開発・生産、充電スタンド整備に総額3,690億ドル(約57兆円)の予算をつけていた。また、2024年1~6月にEV購入者が受け取った補助金の総額は10億ドル(約1,550億円)以上に達した。

補助金廃止で「EV台数30%減」

 一方、カリフォルニア大学バークレー校のジョセフ・シャピロ教授やスタンフォード大学のハント・アルコット教授などが2024年10月に発表した論文によれば、消費者向けの購入補助金がない場合、EV新車登録台数が最大で30%減少する。

 この割合を2024年通年の米EV販売台数である130万台に単純計算で当てはめると、91万台にまで減ってしまう。現時点で、多くの一般消費者が「価格が高すぎて手が届かない」と考えており、元来、EVへの需要が弱いからだ。

 また、米新車市場におけるEVのシェアは2024年に8%であったが、EV購入補助金が廃止あるいは縮小されれば、その占有率が15~20%縮小する可能性があると、米調査会社グローバルデータが予想している。そのため、2025年2月以降の販売データが注目される。

 このようにトランプ大統領は、産業振興政策としての補助金に否定的な考えを持っている。それはなぜなのか。 【次ページ】なぜトランプ氏は「補助金に否定的」なのか?
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