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- 2025/02/28 掲載
バーバリーですらキツい...「お先真っ暗」の英国経済、空港増設で狙う「逆転」とは
英国経済が「下り坂」待ったなしのワケ
英国経済が予想外の縮小に転じ、景気の先行きに暗雲が立ち込めている。英国統計局(ONS)が2024年12月の発表によると、10月の国内総生産(GDP)は前月比0.1%減を記録。2カ月連続のマイナス成長となり、市場予想の0.1%増を大きく下回る結果となった。
経済縮小の傾向を受け、為替市場では英ポンドが対ドルで下落。2024年10月のGDPデータ発表後、ポンドは対ドルで0.3%下落し、1ポンド=1.26ドルまで値を下げた。さらに2025年1月17日には1ポンド=1.22ドルまで売り込まれる状況も見られ、2024年9月に付けた直近ピークの1ポンド=1.34ドルから約10%の下落を記録している。景気の先行き不透明感が、通貨安の形で顕在化した格好だ。
こうした動きの背景には、英国のレイチェル・リーブス財務相が2024年10月末に発表した新政権初となる予算案がある。同予算案には、400億ポンド(約7兆7,000億円)規模の増税策が盛り込まれているのだ。これには雇用主の国民保険料(社会保険料)引き上げや、キャピタルゲイン課税の強化、年金受給者向けの冬季燃料手当の廃止など、一連の増税・歳出削減策が含まれている。
特に雇用主の国民保険料引き上げについては、企業からの反発が強い。人材採用サイトのIndeedによると、この政策はすでに求人市場に影響を及ぼしており、新規雇用を控える動きが広がっているという。
CNBCが2024年12月に伝えたところでは、RSMのエコノミスト、トーマス・ピュー氏は、インフレ率が3%台に近づく中での今回の経済縮小が「スタグフレーション(景気停滞下のインフレ)の領域に逆戻りするリスク」を示すものだと指摘し、2024年第4四半期の成長率予測0.3%は、「野心的すぎる」との見方を示していた。
実際に今年2月13日にONSから公表された2023年第4四半期のGDP成長率は、速報値で前期比0.1%増となったものの、ピュー氏が指摘していたように予測値の0.3%にはとどかない結果となった。また、プラスを後押ししたのは政府部門で、民間部門に限ってみれば2四半期連続のマイナス成長が続いているなど、先行きは依然明るいとは言えない。
英国政府が抱える「ジレンマ」とは
英国のインフレ率も市場予想を下回る水準まで鈍化している。英国統計局が今年1月に発表した最新データによると、2024年12月の消費者物価指数(CPI)は2.5%と、同年11月の数値2.6%を下回った。また食品とエネルギーを除くコアインフレ率も2024年11月の3.5%から同年12月は3.2%へ、サービス価格のインフレ率は同年11月の5.0%から同年12月には4.4%へと下落した。2024年9月には1.7%と3年超ぶりの低水準を記録したインフレ率は、燃料費やサービス料金の上昇を背景に再び上昇基調に転じていたが、足元では落ち着き始めているのが現状だ。
この予想外のインフレ鈍化を受け、市場は、2月6日のイングランド銀行の金融政策委員会で、政策金利が4.75%から4.5%へ0.25%引き下げられると予想。実際イングランド銀行は当日、予想された通り政策金利を4.5%に引き下げた。
リーブス財務相は生活費負担の軽減に向けた取り組みの必要性や経済成長を最優先課題に位置付けることを強調してはいるものの、2024年10月の予算案で示した財政規律遵守にも強いこだわりを見せており、経済のかじ取りは非常に難しい状況にあるというのが大方の見方となっている。
実際、ロンドンに拠点を置く経済研究所Institute for Fiscal Studiesのベン・ザランコ副所長は、リーブス財務相が「極めて困難な選択肢」を突き付けられていると指摘する。
その背景には、厳しい財政状況の引き継ぎに加え、複数の相反する約束が存在するという。たとえば、数値目標を伴う厳格な財政規律の遵守、公共サービスの優先と緊縮財政の回避、主要税目の据え置き、秋季予算以降の増税回避、財政イベントの年1回開催などだ。金利上昇により財政余地が失われた場合、「何かを諦めざるを得ない」状況に追い込まれる可能性が高いとザランコ氏は指摘する。
4月に予定される一連の増税措置に対しては、企業からの反発も強まっている。投資や雇用、成長が抑制されるとの指摘が相次ぎ、英国の経済見通しや財政計画に対する不安が拡散中だ。これを受け、国債の借入コストは上昇し通貨も下落傾向にある。 【次ページ】バーバリーさえも「業績悪化」の苦しい事情
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