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  • 2024/11/19 掲載

製造物責任法(PL法)とは?わかりやすく解説、「損害賠償金」支払った10社の事例紹介

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製造物責任法(PL法)とは、製造業者が作った製品によって、誰かが生命・身体の危機にさらされたり経済的損害を被ることがあった場合に、その被害者が製造業者に対して損害賠償を求めることができる法律である。時々、企業の製品欠陥によりケガをしたり火災が発生したりといったニュースを目にすることがあるかもしれないが、このように製品欠陥が原因の事故が起きれば、製造業者である企業はPL法に基づき損害賠償金を被害者に支払うことになる。それでは、どんな製品がPL法の対象になるのか、製品の欠陥で損害賠償請求があったらどう対処すれば良いのか。本記事では、PL法をわかりやすく解説する。
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企業が損害賠償を負うケースもある製造物責任法(PL法)とは?
(Photo/Shutterstock.com)

製造物責任法(PL法)とは何か

 製造物責任法(PL法)とは、製造業者が製造した製品の欠陥によって、誰かが生命や身体または財産に損害を被った場合、その被害者が製造業者などに対して損害賠償を求められることを規定した法律である。1994年に「被害者を保護し、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与すること」を目的として制定された法律だ。

 これを踏まえると、製品を製造するすべての企業には、少なからず損害賠償請求を受けるリスクがあり、そのため、自社がどれだけPL法に関わっているのか、対策はできているのかを理解しておく必要がある。

 PJ法を考える際にポイントになるのが、「自社の作る製造物は、PL法の対象になるのか」だ。たとえば、「自動車の欠陥により事故が起きた場合、自動車はPL法の対象になるのか、その部品を作ってる企業は対象になるのか」や、「加工食品で欠陥が見つかった場合、その原材料を提供する企業も対象なのか」などがポイントになる。

 また、「どのようなケースの場合、製品自体に欠陥があった、と判断するのか」や「どこからを損害と考えるのか」などだ。製品を製造する企業は、これらポイントを理解しておく必要があるのだ。

 ここからは、PL法の対象製品の見極め方をはじめ、PL法の対象となる事業者、過去の「損害倍書」の事例を解説する。

PL法の対象となる製造物とは

 PL法は、すべてのモノが対象になるわけではない。以下の3つの要件を満たす製造物が同法の対象となる。

  1. 有体物である
  2. 動産である
  3. 製造または加工されている

 ここでは、同法の対象となる製造物について解説する。

■ポイント(1):製造または加工された「動産」かどうか
 PL法では、製造または加工された「動産」を対象物と定義している。具体的には、人為的な操作や処理が加えられ、引き渡された「不動産以外の形のあるもの」を指す。

【例】
対象 対象外
家電製品・食品・衣料品・化粧品・日用品・家具など 不動産(宅地・家屋・樹木など)・電気・ソフトウェア・未加工農林畜水産物・サービスなど

 実際には、個別の判断が必要だ。たとえば、不動産を構成するエレベーターは、製造業者などから引き渡された段階では動産であったとみなされ、その時点において存在した欠陥が原因で引き起こされた損害について製造物責任を問われるケースがある。

 またソフトウェア自体はPL法の対象から除外される一方、ソフトウェアを組み込んだ製造物については同法上の「製造物」に該当する可能性がある。その場合、ソフトウェアの不具合を原因とする事故を起こしたケースでは、その製造物に欠陥があるとして損害賠償責任が認められることがある。

■ポイント(2):「製造」と「加工」の違いは?
 PL法の対象となるのは、「製造または加工された動産」である。

 このうち「製造」とは、主に原材料に手を加えた上で新たに作られた物品のことを言う。基本的には、製品の設計・加工・検査・表示に至るまでの一連の行為を指す。

 「加工」とは、動産を材料とし、その本質を保持した上で、工作により新たな属性を付加し、価値を加えたものを意味する。加工に該当するかどうかは、個々の事案の下で諸般の事情を考慮して、社会通念に照らして判断される。

【例】
対象 対象外
牛乳・ジュース・ソーセージなど
製造物の設置・組み立てなどの改良・改造行為
畑で収穫された野菜・生乳・鶏卵・冷凍肉など
修理・修繕・整備などの行為

どんな事業者がPL法の責任を負う? 見極め方とは

 PL法では、賠償責任を負う対象となる者を「製造業者等」として、以下のように定義している。
    ■賠償責任を負う対象「製造業者等」に該当する事業者
  • 当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者

  • 自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者

  • 当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者

 ポイントは、「製造物の欠陥創出に関わったかどうか」だ。たとえば、製造に一切関わっていない設計事業者は製造業者等には当たらない。

 一方、自ら製造物の欠陥を生み出していない輸入業者は、製造業者等に含まれる。外国の事業者に一般消費者が訴えを提起するのは難しく、輸入業者は国内市場に危険のある製造物を供給したとも捉えられるためだ。

 「業として」とは、反復継続していることを意味する。必ずしもその行為が利益目的である必要はないため、無償で製造している事業者でも製造業者等に該当する可能性がある。

どこからが「欠陥」と言える? PL法の定義とは

 製造物責任が生じるのは、製造業者が引き渡した製造物について「欠陥」が認められる場合である。ここでは、同法における「欠陥」の定義や判断基準について解説する。

■ポイント(1):製造物責任が生じる「欠陥」とは
 PL法では、製造物に関するさまざまな事情を総合的に考慮した上で「製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」を「欠陥」と定義している。具体的には、次の3点が考えられる。
■「欠陥」と定義されるポイント
  1. (1)設計上の欠陥
    設計段階で十分に安全性に配慮がされなかったことで、製造物が安全性に欠けた場合

  2. (2)製造上の欠陥
    製造過程での粗悪な材料の混入、組み立て時のミスなどにより、所定の仕様通りに作られず安全性が欠けた場合

  3. (3)指示・警告上の欠陥
    危険性の除去ができない製造物において、危険を回避・防止するために必要な情報を与えなかったことにより、安全性に欠けた場合
■ポイント(2):PL法における欠陥の判断規準
 製造物の「通常有すべき安全性」の内容や程度は、個々の製造物や事案によって異なる。そのため、欠陥であるかどうかは、製造物に係る諸事情を総合的に考慮して判断される。

 PL法では、欠陥の判断における考慮事情として、「製造物の特性」「通常予見される使用形態」「製造業者等が当該製造物を引き渡した時期」の3点を例に挙げている。 【次ページ】どんな時に損害賠償? いすゞ、ダイキン工業ら10社事例
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