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  • 2018/04/10 掲載

トヨタが衝撃の新ビジネス 他業界は「オーナー情報」を金脈にできるか?

新連載:クルマの進化が変える社会

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日本の基幹産業の1つであるクルマが、大きな変革を迎えている。それは環境問題への対応や、IT技術の高まりによる運転支援システムや自動運転開発のムーブメントが原動力となり、産業構造やビジネスモデルすら大きく変えてしまうほどの勢いにまで成長しようとしているのだ。今回は、すべての産業界に普及していくIoTがクルマをどう変え、その他の業種にも大きな影響を与えていくのかについて考えてみたい。
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トヨタもまったく新しいビジネスモデルを模索している。これからのクルマ産業、サービスはどう変化していくのか


電子制御されたクルマも「車外との通信」は遅れていた

 あらゆるモノがインターネットにつながるIoTで、次世代の製品やサービスが登場し、いろいろなコトがより便利に、快適になりつつある。もっともこのIoT、このところやや過熱気味でもあり、たとえば家電のIoT化などでは、スマホをリモコンにしている程度で、今後スマートスピーカーに集約されてしまいそうな製品も、IoTを謳って次々に登場している。

 こうしたIoTの狂騒に飲み込まれようとしているのは、自動車業界も変わらない。いや、インターネットへの接続で、クルマほど環境が激変する業種もないだろう。

 もちろん、クルマはエンジン車であっても電子制御のカタマリで、高級車となれば今やマイコンを50以上も搭載して車内通信による制御を行っている。しかし「車外との通信」となると、これまではカーナビの渋滞情報や携帯電話の接続によって、お気に入りの音楽を聴いたり、メールを読み上げたりという程度でしか使われていなかった。

 一方、自動車ディーラーでの整備環境に目を向けると、本国のホストコンピュータと接続された端末をクルマに接続して、故障診断だけでなく整備歴やリコールの状況、ソフトウェアのアップデートなどを行う。エンジンオイルやブレーキパッドの交換さえも診断機を接続して手順を踏まなければシステムから拒絶されてしまうほど、最新のクルマはIoTによって管理されている。

 つまり、販売やメンテナンスの現場ではIoTが進んでいたが、ユーザーがクルマを使用する環境では、ここ20年近く大した変化はなく、車内通信だけが高度化していたのだ。

コネクテッドカーはクルマ離れに対抗する武器となるか

 ところがここにきて、いよいよクルマ自体も外の通信網と本格的なつながりを持とうとしている。いわゆる「コネクテッドカー」の登場である。これによりあらゆるモノがオンライン化し、クルマのオーナーにヒモ付けられることで、ユーザーは効率的にサービスを受けられるようになっていく。そのビッグデータを握ることで、自動車メーカーは新たなビジネスへの武器を手に入れるのだ。

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三菱自動車のコンパクトSUV(スポーツタイプ多目的車)、エクリプスクロスに採用されているスマートフォン連携ディスプレイオーディオ。iPhoneを接続すればCarPlayが使え、アンドロイド機であればAndroid Autoが使える。現在は電話やメール、インターネットラジオとナビ機能程度だが、普及していくと共にアップデートされ、さまざまな機能が追加されていくことになる


 これは若年層のクルマ離れや高齢者の免許返納、カーシェアリングの普及といった自動車需要の減少といった自動車業界をジワジワと弱体化させていく問題への対抗策でもある。ディーラーでクルマを販売し、メンテナンスや車検などで入庫させ、下取り価格を提示して買い替えを勧め、再び囲い込むというビジネスモデルはすでに頭打ち、いやハッキリと減少傾向にある。

 郊外型の自動車ディーラーは、ここ5年ほどの間に次々と立て替えられ、集客能力を高めてきた。しかし、いくら残価設定ローンやメンテナンスパッケージでユーザーを囲い込みしても、国内販売台数の減少に歯止めをかけることはできないのだ。

トヨタの「e-パレット・コンセプト」の衝撃

 2018年初め、米国ラスベガスで開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で、トヨタ自動車の豊田 章男社長はユニークな電動の自動運転車「e-パレット・コンセプト」を発表した。これは目的に応じて移動販売車、宅配便運搬車、コミュニティバスといった、近距離走行で想定される車両のほとんどの用途をカバーできるもので、焼き立てのピザをユーザーの自宅前で提供することもできる、としている。

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トヨタがCESで発表したコンセプトモデル「e-パレット」。自動運転のEVで走る倉庫や会議室、移動販売車などさまざまな使い方が想定されている。そのビジネスモデルは従来のクルマを販売してメンテナンスで利益を得るものではなく、あらゆる業種と結び付き、ユーザーを囲い込むものだ。実現性はともかく、コネクテッドカーの1つの可能性を示したものと言える


 従来の販売と物流の構造からすれば、売れていない商品までユーザーの元へ運んで回るのはかなり非効率に見える。

 しかし人工知能(AI)が予測した在庫管理を行い、ユーザーからの注文に的確に応えることができれば、話は別だ。近い将来、電気自動車(EV)が主流になれば、移動のためのエネルギーコストは大幅に下がる反面、人件費は高騰を続けるから、こうしたビジネスモデルが成立しても不思議ではない。

 それよりもトヨタが、こうした新しい乗り物の使い方をコンセプトモデルとして提案したのは、クルマを作って販売するビジネスモデルからの変換を示唆している。こちらの方が衝撃的だ。EVやハイブリッドといった車種の枠を飛び越え、トヨタはあらゆる方向性を想定した技術開発に挑んでいる。それは企業規模を考えれば当然とも言えるだろう。

【次ページ】 独占が崩れる「オーナー情報」を金脈にできるか
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