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  • 2019/11/29 掲載

ヤマトも赤字…「物流ソリューション」は苦境の業界を救えるか? 最新動向まとめ

連載:クルマの進化が変える社会

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少子高齢化社会を迎えた日本では、どの業界も人材不足という課題を抱えている。中でも深刻なのが、物流業界である。宅配大手のヤマトホールディングスが、中間決算で「2年ぶりの赤字」を計上したのは記憶に新しい。圧倒的な人手不足の一方で、荷主側の要求も肥大化し続けている。「コストを抑えつつ、より速く、確実に」という要求に対して、物流業界からは悲鳴が上がっている。こうした課題を解決するため、革新的なテクノロジーを活用したソリューションが続々登場している。日本の物流は今後どう変革するのだろうか。
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物流業界は課題が山積み。革新的なテクノロジー導入で激変するか
(Photo/Getty Images)

負のスパイラルに陥っている物流業界

 2019年10月末に発表された中間決算によると、ヤマトホールディングスは赤字に転落した。このニュースは驚きをもって伝えられたが、物流業界の苦しさが改めて浮き彫りになったとも言える。

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宅配便取扱個数の推移
(国土交通省「平成30年度 宅配便取扱実績について」より)
 日本国内の荷物取扱量は、右肩上がりで上昇し続けている。国土交通省が2019年10月に発表した「平成30年度 宅配便取扱実績について」によると、平成30(2018)年度の宅配便取扱個数は、43億701万個で、前年度と比較して5568万個・約1.3%の増加となった。10年前と比較すると3割以上も増えている。

 ヤマト運輸を筆頭に宅配便の送料は値上がりし、アマゾンでも送料の有料化が図られるなどユーザーの負担も上昇しているが、荷物取扱量の増加傾向は変わらない。ただ、重量ベースで見ると、直近10年はほぼ横ばいで推移している。そのため、国内の物流は「小型軽量化」が進み、取扱個数の大幅な上昇が続いている傾向が分かる。

 日本の物流業界は「薄利多売で価格勝負、スピード配達勝負」という負のスパイラルに陥っているように見える。そのため物流業界で働く人は、ほぼすべての人が多くの負担を強いられていると言える。

 この状況を改善するには、人件費の抑制や作業の効率化を進め、少人数で従来以上の作業量を時間内に終わらせるしかない。国内の生産工場は自動化が進んでいるが、物流はまだまだ人の手に頼っている部分が大きい。その結果、作業効率を高めることが難しく、労働時間の短縮が叶わずに、長時間労働や人手不足を招いているのである。

大型トラックでも自動運転を実現、ドライバーの負担を軽減

 そこで、物流業界の効率を高めるため、新しいテクノロジーを活用したソリューションが続々登場している。

 その筆頭となるのは物流の要となるトラックの「自動運転」だ。「東京モーターショー2019」では、三菱ふそうが大型トラックに「レベル2」(アクセル、ブレーキ、ハンドリング操作をシステムが行うが、人の監督が必要)の自動運転を装備することを発表した。



 ダイムラー・トラックは、全米で「レベル4」(運転の全操作をシステムが行うが、道路、敷地、天候等の条件が付帯)の自動運転トラックを公道実験しており、「レベル2」に関してはすでにメルセデス・ベンツのトラック部門が、大型トラックのアクトロスに搭載して欧州で発売している。

 パワーステアリング機構が油圧式なため、これまで操舵支援の実現が難しかった大型トラックだが、各トラックメーカーは電動パワーステアリングの技術を組み合わせることで、トラックの操舵支援を実現しつつある。国内では三菱ふそうが、その先陣を切ることになる。

 こうしたシステムの導入により、高速道路上でのドライバーのわき見運転や過労運転、居眠り運転による追突事故、路線逸脱事故は確実に減少していくだろう。しかし、今後販売されるトラックに普及していくには相当な時間がかかる。そこで注目したいのは、「後付け可能」な安全性向上のためのシステムだ。

 日立物流が開発した「SSCV(スマート安全運行管理システム)」は、AI(人工知能)とクラウドを活用して運行管理とドライバーの体調管理を実施することで、コスト削減と安全運行を実現させるというものだ。既存の車両にIoTドライブレコーダーと後付けの危険運転検知器、生体情報をセンシングできるハンドルカバーを装着する。

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日立物流のSSCV(スマート安全運行管理システム)

 これにより、走行中のドライバーの疲労による集中力の低下や事故の危険性を検知。運行管理者がその場で連絡を取り、休憩を促すことも可能だ。警告装置だけでは過労運転の抑止力は限られるが、常に運行管理者側が見守れる環境にあれば、さらに高い安全運行が実現するというものだ。

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