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  • 2025/02/10 掲載

いよいよ「天王山」のセブン買収、自社MBO実現でもこの先「苦戦必至」と言えるワケ

連載:大関暁夫のビジネス甘辛時評

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2024年8月、カナダのコンビニ経営大手のアリマンタシォン・クシュタール(以下ACT)からの買収提案を受けたセブン&アイ・ホールディングス(以下セブン&アイ)。 その後同年11月には買収対抗策として創業家による自社MBOが提案されるも、事態は硬直している。今年1月の第3四半期決算会見では、来る5月に開催される株主総会を1つの目安に判断を行う意向が示されており、セブン&アイにとって今年は大きな岐路を迎える年と言えそうだ。同社の行く末はどこに向かうのか、ACTと創業家、双方の買収提案の経緯とともに企業アナリストの大関暁夫氏が解説する。
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カナダのACTによるセブン&アイ買収提案の行方とは
(Photo:NP27 / Shutterstock.com、JHVEPhoto / Shutterstock.com)

5月の株主総会で判断へ

 セブン&アイが、カナダのコンビニ経営大手のACTからの買収提案を受けたのは、2024年8月のことです。これまでの当事者間の動きを見るに、本件から示唆される外国資本からの買収に対して、既存株主の立場で考えた場合に企業としてどのように対処すべきであるかをはじめとして、セブン&アイは様々な問題提起をしてきたように思います。今回は、買収提案に関するこれまでの経緯を整理しつつ、同社は今後どのような対処が求められているのかを考えてみたいと思います。

 ACTから買収提案を受けて、セブン&アイは取締役会の諮問機関である社外取締役からなる特別委員会を組織して諾否を検討しましたが、ACTの提示額約6兆円に対して「当社の企業価値を著しく過小評価している」として拒否しました。

 その後、ACTは買収価格を約7兆円に引き上げて再度の買収提案を提出。その再検討の最中である2024年11月に、今度はセブン&アイ創業家である伊藤家の資産管理会社が、大手商社やメガバンクの力を借りた買収提案を提出するという、込み入った情勢に転換しつつ現在に至るのです。こうした双方の動きに対して、セブン&アイは今年1月9日に開催された第3四半期の決算会見で今年5月に開催される株主総会を目途に判断を行う旨を明らかにしています。

創業家の「防衛策」は功を奏すのか

 まず、ACTが当初提案で提示した買収額の約6兆円ですが、これは当時の為替で株価に引き直すと約2,200円であり、セブン&アイの株価が約1,800円程度で推移していたことから考えれば、2割以上のプレミアムを上乗せした価格でした。

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セブン&アイは当初、ACTから約6兆円の買収提案を受けた
(Photo:A.Sontaya / Shutterstock.com)

 その後、セブン&アイの株価は買収提案の影響もあり上昇、現在は2,400円前後で推移しています。再提案の総額約7兆円は株価約2,800円程度と計算されるので、現状でなお約10~15%、買収提案直前からは約50%のプレミアムが上乗せされているのです。

 当初の6兆円(株価約2,200円)を「過小評価」としたセブン&アイは、再提案の7兆円(同約2,800円)をどう評価するのか。さすがに当初株価の1.5倍と評価した買収価格を再度「過小評価」とは言いにくいのではと思っていた矢先に、先に記した創業家による買収提案が明るみに出たのです。

 この創業家による買収案を額面通りのM&Aと受け止める向きはほとんどなく、セブン&アイグループの実質的MBO(経営陣参加での買収)での買収防衛策であるとの見方がされています。要するに、一度は跳ねのけた買収圧力がそれに屈せず再チャレンジしてきたと見るや、大手商社や銀行を巻き込んでの巧みな防衛策を繰り出してきた、と言えるのです。 【次ページ】セブン&アイの株価が伸び悩む「2つの原因」
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