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- 2025/04/07 掲載
Zoom(ズーム)がビデオ会議から劇的進化、AIエージェントで何がどう変わったのか?

Zoomがビデオ会議ツールからの大きな転換
パンデミック期に一躍脚光を浴びたZoom(ズーム)だが、その後シンプルなビデオ会議ツールの範ちゅうにとどまらない存在になっている。2023年5月のアンソロピックとの提携を皮切りに、水面下でAI統合を推進し、同年9月にAIアシスタント「AI Companion」を発表した。その1年後となる2024年10月には、企業固有のニーズに対応できる機能を持つ「AI Companion 2.0」をリリース。そして直近2025年3月には、AI CompanionにAIエージェント機能を実装したことを明らかにした。これら一連の動きは、ビデオ会議ツールからの完全な脱却であり、重要な戦略転換を意味するものとなる。
実際、同社は2024年11月に「Zoom Video Communications」から「Zoom Communications」へと社名を変更し、AIファーストの企業へと生まれ変わる決意を示している。同社のエリック・ユアンCEOの「我々はAIファーストの企業であり、シームレスなコラボレーションを可能にするモダンなハイブリッドワークソリューションを提供する」という声明からも、同社が目指す方向性は明らかだろう。
この変革を牽引するのが、2023年6月にマイクロソフトからZoomに移籍したシュエドン・ファン最高技術責任者(CTO)。マイクロソフトで30年にわたり音声技術とAzure OpenAIサービスの開発に携わった経験を持つファンCTOは、まず同社のAIアーキテクチャの再構築に着手し、単なる会話の要約にとどまらず、タスクの実行まで可能な基盤の構築を進めてきたという。
Zoomがどのような進化を遂げているのか、次からより詳しく見ていきたい。
AI Companionがもたらした業務効率化
Zoomの変革を象徴するのが、冒頭でも言及したAI Companionだ。2023年9月にリリースされ、2024年10月には400万件以上のアカウントで利用されるまでに急成長を遂げたAIアシスタント。AI Companion 2.0では、情報の収集と処理の範囲が大幅に拡大し、Zoom Workplace全体に組み込まれたサイドパネルを通じて、ミーティング、チーム チャット、ドキュメント、カレンダー、メールなど、あらゆる機能にアクセスできるようになった。
さらに、マイクロソフトのOfficeやOutlook、グーグルのGmailやカレンダーなど、外部サービスとの連携も実現した。
企業が独自の知識ベースやワークフローに合わせてAI Companionをカスタマイズできる機能も備わり、柔軟性も大幅にアップした。人事関連の社内文書をアップロードすれば、AIアシスタントは従業員からの人事関連の問い合わせにも正確に対応できるようになる。またIT部門の技術文書と連携させれば、システムサポートの効率化も実現可能となる。
機能の向上も目覚ましい。たとえば、チャットチャンネル内の未読メッセージを要約し、重要な更新情報を自動的にリスト化することも可能だ。電子メールのスレッドも、個々のメッセージを読む必要はなく、全体像を即座に把握できるようになった。
さらに2025年3月には、一連のAIエージェント機能が加わり、AI業務効率化プラットフォームとして、さらなる進化を見せる。その1つ、AIボイスレコーダーは、対面での会議で、自動的に文字起こしを行い、要約とアクションアイテムを抽出することができる機能。これにより、ユーザーは、会議でメモを取る必要はなく、対話に集中できるようになることが期待される。
BairesDevの最高情報セキュリティ責任者パブロ・リボルディ氏によると、同社はAI Companionの導入後、わずか4カ月で約1万9000時間の業務時間削減を達成することに成功したという。会議後の議事録作成を自動化することで、より本質的な業務に集中できる環境を整備できたと語っている。 【次ページ】Zoomを変革させたAIエージェントの役割
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