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  • 2017/11/24 掲載

ヤマダ電機「EV参入」の勝算とは? 航続距離の”短さ”が生むパラダイムシフト

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家電量販店のヤマダ電機がEV(電気自動車)に参入する。EVは異業種からの参入が容易と言われているが、それでも自動車とは無縁だった企業がEVの販売で成功するのは容易ではないだろう。だが、長期的に見れば必ずしもそうとは限らない。ヤマダ電機は家電量販店という業態から、住宅インフラを総合的に提供する業態へとシフトしている。EVの普及はクルマというものの位置付けを根本的に変える可能性も秘めている。EVを住宅インフラの一部と考えるなら、勝算はあるかもしれない。
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EVへの参入を発表したヤマダ電機。このタイミングでの参入にどのような勝算があるのか?


ベンチャーと提携し、100万円以下のEVを提供

 ヤマダ電機は10月、EV開発を手がけるFOMMと資本提携し、同社が開発する4人乗りのEVをヤマダ電機で販売すると発表した。発売開始は2020年までをメドとしており、価格は1台100万円以下になる見通しだという。資本提携したFOMMは、スズキ出身の技術者が設立したEVベンチャー企業で、水に浮くタイプのEVなどを開発している。

 内燃機関の自動車は約3万点の部品で構成されている。製品そのものに高い付加価値があり、他業種からの参入が極めて難しい。だがEVは、内燃機関の自動車と比較して部品点数が圧倒的に少なく、しかもモジュール化が進んでいるため、他業種からの参入が容易である。EVが本格的に普及した場合、理屈上、どのような企業でも自動車産業に参入することが可能となる。

 だが、現実問題として自動車をまったく扱ったことがない企業が、いきなりEVを販売してもそう簡単にビジネスは進まないだろう。自動車メーカーは長年の経験から、自動車が持つあらゆる問題に対処するノウハウを持っている。新規参入の企業が一連のノウハウを身につけるのは容易ではない。

 だが、自動車業界におけるこうした常識は、必ずしも永続的とは限らない。自動車が本格的な移動手段や嗜好品として使われるフェーズから、家電製品の延長として利用されるフェーズにシフトした場合、自動車が持つ特徴や売り方も変わってくる可能性がある。

 今後、家をスマートハウス化するケースが増えてくると考えられるが、それに伴って、EVのバッテリーを家庭用に転用したり、家電とEVを連動して運用するといった使い方が広まる可能性が高い。自動運転システムが普及すればその傾向にさらに拍車がかかるだろう。EVに乗って外出している間、自宅の駐車場は他のEVに電源を提供する充電ステーションになっているかもしれない。こうした状況を総合的に考えると、家電や住宅販売とEVの親和性は高い。

急ピッチで住宅関連販売にシフト

 ヤマダ電気は家電量販店の最大手だが、郊外型の店舗が多く、人口減少の影響を受けやすい。実際、同社の業績は伸び悩んでおり、2017年3月期の決算は、売上高が前年比3.1%減の1兆5630億円、営業利益は0.5%減の578億円と減収減益だった。業績がピークだった2011年3月期と比較すると、売上高は3割近くも減少している。

 こうした状況を受け、同社は家電からの脱却を積極的に進めてきた。2011年に中堅住宅メーカーのエス・バイ・エル(現ヤマダ・エスバイエルホーム)を、2012年には住設機器メーカーのハウステックホールディングス(現ハウステック)を買収して住宅事業に進出。今年の6月には、住宅のリフォームやホームファッション、インテリアなどを総合的に提供する新型店舗「インテリアリフォームYAMADA」前橋店をオープンさせた。

 インテリアリフォームYAMADAでは、家具やインテリア雑貨、ホームファッションを扱っており、住まいに関する商品が一通り揃っている。当然のことながら、この新型店舗は同社が買収した住宅メーカーや住設機器メーカーとシナジー効果が得られるよう工夫されている。店内には新しく設立した住宅メーカーであるヤマダ・ウッドハウスのショールームも併設されており、家の建築についても相談できる。

 資金面でも抜かりはない。同社は住宅ローンとリフォームローンへの参入も表明しており、顧客の資金調達を支援することで販売を促進する。

 インテリアリフォームの店舗は新業態の「顔」として全国展開する予定となっており、各地でエリアに特化した販売を実施していくと考えられる。

【次ページ】ヤマダ電気が狙う商圏は「地域」? EVが自動車ビジネスにもたらす非連続的変化
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