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  • 2022/03/10 掲載

企業に脱炭素を要求する国際組織「Climate Action 100+(CA100+)」とは?影響力を解説

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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ここ数年の世界的なESG投資の拡大の背景には、世界各地域の機関投資家によって作られた気候変動に関するイニシアティブの存在があると言われます。今回は、気候変動に関わるイニシアティブのうち、影響力のある「クライメート・アクション100+(Climate Action 100+、以下CA100+)」と「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス(Net-Zero Asset Owner Alliance、以下AOA)」を解説します。
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CO2排出企業に圧力をかける投資家団体「クライメート・アクション100+(Climate Action 100+)」「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス(Net-Zero Asset Owner Alliance)」とは?
(Photo/Getty Images)

Climate Action 100+とは

 気候変動に関するエンゲージメントを推進する投資家グループに、「クライメート・アクション100+(Climate Action 100+、以下CA100+)」というグローバルイニシアティブがあります。

 CA100+の活動内容は、温室効果ガスの排出量の多い投資先企業をはじめ、加盟企業およびそのグループ企業、および取引先(部品・資材・設備の調達先、販売先など)に対し、投資家の権限として2050年までにカーボンニュートラルの実現を要求するというものです。CA100+は各企業の取締役会が責任を持って遂行することを期待しており、履行されない場合、取締役の解任や、要求事項に従う取締役の選任を迫るといったこともあります。

 実際にエンゲージメントの対象となる企業は、温室効果ガス排出量の高いとされる167社になります。

Climate Action 100+の対象となる日本企業とは

 CA100+は、世界全体の温室効果ガス排出量の80%を占めていると言われる167社に対し、温室効果ガス排出量削減を求めています。この中には日本企業も含まれており、下記の10社が対象となっています。

  • トヨタ自動車
  • 本田技研工業
  • 日産自動車
  • スズキ
  • 日立製作所
  • パナソニック
  • 東レ
  • ダイキン工業
  • 日本製鉄
  • ENEOSホールディングス

 対象となる企業は、毎年要求アクションの成果を開示しており、2020年の活動の結果として、BP(イギリス)、ペトロチャイナ(中国)、ロイヤル・ダッチ・シェル(オランダ)、SKイノベーション(韓国)、BHPグループ(オーストラリア)、ウールワース(オーストラリア)、ユニリーバ(イギリス)、アメリカン航空(米国)、デルタ航空(米国)、ロールス・ロイス(イギリス)、フォード(米国)、ENEOSホールディングス(日本)などが、要求事項の方向に動いたとして評価されています。

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Climate Action 100+によって、温室効果ガス排出削減を要求されている日本企業とは?
(Photo/Getty Images)

Climate Action 100+の構成メンバー

 CA100+は、2017年12月に世界各地域の機関投資家などにより設立しました。構成メンバーには主に下記のような団体が含まれます。

  • アジア太平洋地域の機関投資家で構成されるAIGCC(Asia Investor Group on Climate Change)
  • 北米地域のESG投資推進NGOであるCeres
  • 欧州地域のIIGCC(Institutional Investors Group on Climate Change)
  • オーストラリア・ニュージーランド地域のIGCC(Investor Group on Climate Change)
  • 国連責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)

 2021年12月時点で615の年金基金、保険会社、運用会社が加盟しています。運用資産合計は60兆ドル(約6,900兆円)と言われており、これは米国の国家予算の10年分以上に相当します。

日本政府にも口を出す? Climate Action 100+の影響力とは

 2020年2月にはCA100+に取り組む国際的な機関投資家グループが共同で、パリ協定で日本が定めた温室効果ガスの削減目標の引き上げを日本政府に提言したと言われています。

 その時点の日本の温室効果ガス削減目標は、2030年度に2013年度比で26%削減するというものであり、これを「国が決定する貢献」(Nationally Determined Contribution: NDC)として2015年7月および2020年3月に国連に提出しています。また、今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会を実現し、2050年までに温室効果ガスを80%削減することを「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」として2019年6月に国連に提出しています。

 一方、2020年10月の臨時国会の所信表明演説において日本政府は、日本が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。また、2021年4月の地球温暖化対策推進本部および米国主催の気候変動サミットにおいて、2030年の温室効果ガス排出量を2013年度比46%に削減することを目指し、さらに50%に向けて挑戦を続けていくことを表明しました。

 日本政府がそれまでの温室効果ガス削減目標を大幅に引き上げ、カーボンニュートラルの達成時期を大きく前倒しする宣言を行った背景には、CA100+による提言があったと言われます。

 ここからは、CA100+とは別の気候変動に関するエンゲージメントを推進するグローバルイニシアティブ「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス(Net-Zero Asset Owner Alliance)」を解説していきます。

【次ページ】Net-Zero Asset Owner Allianceとは
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