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- 2021/10/05 掲載
「欧州グリーンディール」とは?1兆ユーロの投資を見込むカーボンニュートラル戦略
連載:第4次産業革命のビジネス実務論
世界の年平均気温は上昇傾向で、直近は特に顕著
気象庁によると、2020年の世界の平均気温(陸域における地表付近の気温と海面水温の平均)の基準値(1991〜2020年の30年平均値)からの偏差は+0.34℃で、1891年の統計開始以降、2番目に高い値となりました。世界の年平均気温は、さまざまな変動を繰り返しながら上昇しており、長期的には100年あたり0.72℃の割合で上昇しています。また、最近の2014年から2020年までの値が上位7番目までを占めています。
これにより、地球温暖化や海面上昇、氷河の後退などが起こり、世界各地でかつてない規模の森林火災や豪雨などの大災害が頻発していると言われます。
このような事態を受け、世界ではさまざまな取り組みが行われています。
たとえば、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんがリクスダーゲン(スウェーデン議会)で行った気候変動に関する呼びかけは、それに賛同する人々によって「未来のための金曜日(Fridays for Future)」という国際運動となり、政策立案者に気候変動対策を求める活動が行われています。
今や多くの人々が、より野心的な気候変動に対する対応などを要求するようになっているのです。
ドイツにおける再生可能エネルギー利用状況
ドイツの研究機関であるFraunhofer Institute for Solar Energy Systems(Fraunhofer ISE)によると、ドイツの発電量に占める再生可能エネルギーの比率は2019年に石炭などの化石燃料の比率(約40%)を超え46%となり、2020年には51%に達しています。また、ドイツの脱原発政策も最終局面を迎えています。2021年3月現在で残り6基となった原発を2022年末までに停止し、再生エネルギーを軸とした電力供給へと切り替えることを表明しており、エネルギー業界にも大きな影響を与えています。
再生可能エネルギーのうち2020年の時点で比率が最も高いのは風力発電(27.0%)で、太陽光発電(10.5%)とバイオマス発電(9.7%)がそれに続いています。
Fraunhofer ISEは、再生可能エネルギーの割合が化石燃料を逆転した理由として、低価格な再生可能エネルギーの普及と、欧州排出量取引制度(EU-ETS)による排出権取引価格の上昇を挙げており、これにより、CO2排出の多い発電では利益が出なくなってきていることを指摘しています。
【次ページ】包括的なEUの新経済成長戦略「欧州グリーンディール」
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