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- 2017/10/26 掲載
EVとシェアリングで自動車業界は今後どうなる? 失われる事業、伸びる事業
迫りくるEV化の転換点は2025年
また、シニアマネジャーの尾山耕一氏によれば、EV市場が本格な拡大へ進む背景として、地球温暖化を防ぐためのCO2削減が社会的に大きくクローズアップされている点があるという。
「中国・インドの経済成長に伴い、自動車市場が拡大すると2050年までに2.5倍のCO2排出が想定される。そうなると燃費改善やハイブリッドだけではCO2を劇的に減らすことは困難だ。そこで“ゼロエミッション・ビークル(ZEV)”が求められる。試算では、2030年に25%、2050年には100%の次世代車の普及が必要になる見込みだ」(尾山氏)
ZEVにはEVとともに一昨年から市販がはじまったFCVも含まれるが、その割合はどうなのだろうか。近年はEVに注目が集まりFCVがEVに駆逐される可能性あるといった話も耳にする。
「やはりEVとFCVが共存していく形を目指すべきだ。たとえばEVでは現状バッテリが重く、ある程度以上の航続距離になるとFCVに優位性があるなど双方に利点がある。ただし水素ステーションの整備が緩慢なので、普及はまずEVのほうから先行し、FCVはじっくり広がるだろう。将来的にはEVとFCVの割合は7:3ぐらいになる」と尾山氏は予測した。
予測を具体的に考える上では、燃費規制の観点を見る必要がある。ヨーロッパだけでなく、新興国、ASEANなどでも、2020年までに規制が強化される方向だからだ。
「各国の規制が強まった場合、2030年までに約4%以上はEVが求められる可能性がある。より規制が強まると7%ぐらいになるだろう。調査では20%以上というアグレッシブなEV販売を予測するところもある。パリ協定を踏まえ、本気でCO2削減を進めるべきという認識があるようだ」(尾山氏)
本当にEVが普及するのか。その条件として、尾上氏は充電利便性、価格、航続距離のポイントを挙げる。
「充電の利便性に関しては公共の場でも実現しつつある。欧米では超高速給電も発表され、時間待ちも解消されるだろう。価格について燃費(電気代)はEVが有利だが、車両が高額なのが従来からの課題。しかしバッテリも今後は安価になり、2030年にはガソリン車並みの価格になると思われる。総合すると本格的な普及の転換点は2025年ぐらいだ。そのタイミングでは航続距離も500キロメートル以上への伸びが期待されている」(尾山氏)
自動車メーカーの思惑もあるが、やはりEVの普及に関しては、2025年以降が大きなマイルストーンになっているようだ。
EV普及の台風の目となる中国
尾山氏は「中国は次世代車製造を国策とし、内製化と生産、輸出拡大を本気で狙っている。たとえば電池メーカーのホワイトリストがあり、国産品を搭載するように誘導している。主要な電池メーカーで400万台の電池パックを生産する予定だ。外国企業も中国市場でのEV開発体制を強化する方針がある。市場でどこまで中国がプレゼンスを発揮するか。彼らが台風の目になるかもしれない」と指摘する。
では中国の自動車産業が台頭してきた場合、日本はどう対応していくのか。すでに国内製造業の出荷推移は自動車と部品を除いて縮小傾向にあるという。EVシフトが起きると部品メーカーも影響を受ける。内燃機関車よりもEVのほうが1万点も部品点数が少ないからだ。
尾山氏は「まだ日本は2次電池や燃料電池で技術的な優位性がある。日本企業に必要不可欠な対応は、EVバリューチェーンの強化だ。これでコストを低減して価格競争力をつけ、付加価値を向上できる。EVの付加価値については、次世代電池や航続距離の伸長、コネクテッド・自律運転・シェアリング対応の車両開発もある。しかしモノ売りでなく、コトづくりも競争の源泉になり、さらなる企業努力が求められる」と強調する。
また企業努力のみならず、国としての政策支援も大切な要素だという。各国のようなEVの普及のためのコミットが必要であるが、それと並行して国策としてFCVの普及も重要だからだ。
「EVとFCVには、一長一短がある。どちらか一方の偏重よりも、共存が望ましい方向性だと考えている。産業という観点だけでなく、水素社会の成立は、エネルギー社会やユーザーにとっても意義がある。現在のエネルギーフローは原子力と化石燃料が中心だ。しかし2050年には、再エネ電力・天然ガス・水素により構成され、それらの組み合わせでエネルギーが賄われるだろう」(尾山氏)
【次ページ】モビリティ革命によって、自動車業界に構造変化が起こる
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