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  • 2024/09/26 掲載

トヨタ・BMWが協業でも「お先真っ暗」な燃料電池車、普及を阻む「ある難題」とは

連載:EV最前線~ビジネスと社会はどう変わるのか

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トヨタ自動車(以下、トヨタ)とBMWが今月5日、水素分野での協力を強化する覚書を締結し、燃料電池の共同開発などを行うと発表した。環境に優しく「究極のクルマ」とも評される燃料電池車(FCV)だが、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッドカー(PHEV)の代わりとなるには、越えなければならない「難題」がある。一体その難題とは何だろうか。モータージャーナリストの御堀直嗣氏が解説する。
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両社が越えなければならない「難題」とは何だろうか
(出典元: emirhankaramuk / Shutterstock.com、出典元: Stoqliq / Shutterstock.com)

トヨタとBMWが燃料電池で協業

 トヨタとBMWが、共同で第3世代の燃料電池を開発し、BMWは2028年にその第1弾となる燃料電池乗用車(FCV)を発売すると今月5日に発表した。

 今回の発表に先立ち、BMWは、トヨタの燃料電池セルを活用した実験車両iX5 hydrogenを製作し、世界各地(欧州、日本、韓国、中国、米国、中東)で走行を重ねている。このFCVの性能は、一回の水素充填で、WLTP(乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)基準で504km走行可能というもので、最高速度は時速180km以上としている。

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BMWのiX5 Hydogen
(写真:ZUMA Press/アフロ)

 ちなみに、トヨタが展開するFCVであるMIRAIは、一回の水素充填で走れる距離を約850km(参考値)と公表している。参考値なので、国土交通省による審査値ではない。ちなみに、MIRAIは7つのグレードがあり、価格は726万1,000円~861万円の幅がある。

 世界的に、水素は究極のエネルギーと評価され、FCVは「究極のクルマ」との世論もあり、両社の協業強化は話題を集めている。今回のBMWとの協力について、トヨタの佐藤恒治社長も「水素社会の実現を目指して協力関係を深めていく」と期待を寄せており、両社の協業によりFCVの未来がどう変化するのかはこの先注目していくべきだろう。

FCVとEV「もはや昔と違う」関係性

 とはいえ、EVが性能を高め、充電網も整備が進む中、FCVはこれまで目立った販売実績を得ることができずにいることも事実だ。

 果たしてFCVはEVやPHEVに替わるクルマとなり得る可能性はあるのだろうか。

 かつて、初代の日産リーフや、三菱i-MiEV、あるいはBMW・i3が発売された初期の量産EVでは、一充電走行距離が200~250km程度であったため、1回の水素充填でより長い距離を走れるFCVには利点があった。なおかつ、EVが急速充電で30分ほどかかるのに比べ、水素充填はガソリン給油と同じくらいで済むとされた。

 だが、その後の10年ほどでEVの性能は急速に向上し、一充電走行距離は500km前後が標準的になった。

 たとえば現在、日産アリアB9が一充電走行距においてWLTC(国土交通省審査値)で640kmの性能で、車両価格は738万2,100円である。輸入車では、テスラ・モデルYのロングレンジAWDが605km(WLTC)走行でき、622万6,000円で購入可能だ。走行距離や購入コストの観点からは、先ほど紹介したBMWとトヨタのFCVと互角と言えるだろう。

 さらにEVは、急速充電器の性能も上がり、同じ30分の充電でも多くの電力をリチウムイオンバッテリーに貯えることができるようになりだしている。

 たしかに今、EV販売はかつての勢いが陰り「踊り場」に差し掛かっていると言われている。それに伴い、ガソリンエンジンを併用するPHEVの需要が見直されている現状もある。

 しかし、FCVが、EVやPHEVの代わりとなるには、もっと難しい課題を解決しなければならないのだ。ではその難題とは具体的に何を指すのだろうか。 【次ページ】FCV普及における「最大の難点」とは
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