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- 2024/06/20 掲載
テスラ充電部門「500人首切り閉鎖」の衝撃、裏にある「聞いて納得」の業界事情とは
連載:EV最前線~ビジネスと社会はどう変わるのか
テスラ充電部門が閉鎖で「500人」解雇
今年4月末、EV普及で先頭を歩んできた米国のテスラが、充電部門を閉鎖したとの情報に世界が揺れた。充電ステーションを手掛ける部門の約500人が解雇されたというのだ。プラグインハイブリッド車(PHEV)を含んだ2023年のEV新車販売台数で、中国のBYDに1位の座を奪われたとはいえ、長年にわたりEV販売をけん引してきたのはテスラだ。
その後ろ盾となったのは、同社の製品が持つ車両としての先進的魅力に加え、同社がEVを日常的に利用する上で欠かすことのできない充電器を普及させてきたこと、そしてその充電器の性能の高さであり、多くの消費者がその優秀さを知るところとなっている。
現在テスラの充電規格は、ほかの自動車メーカーも適合を進める米国での事実上の標準規格となっており、その充電器に関する部門が整理されるとなると、テスラユーザーの不安はもとより、業界としても先行きへの不安が生じることになりかねないとの論調がある。
しかし、筆者はそう考えず、テスラ自体もなお盤石の地位を堅持し続けると考える。その理由を解説していこう。
設置実績は圧巻の「5万基」
テスラは、急速充電のための「スーパーチャージャー」と名付けた独自の機器を世界に5万基以上自社で設置してきた。ちなみに日本発の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)は、2010年からの積み上げで、世界3万2000基(2019年度実績)のため、スーパーチャージャーの設置数の多さがわかるだろう。テスラがスーパーチャージャーの設置を始めたのは、同社の主力車種であるモデルSの発売を開始した2013年からだ。
日本においては当初、スーパーチャージャーの設置数が追い付かず、同社CEOのイーロン・マスク氏が来日してCHAdeMOの規格整備などを手掛けるCHAdeMO協議会と会談し、テスラ車がCHAdeMOの充電器からも充電できるよう、アダプターの使用を求めたという経緯がある。そのため今日も、テスラ車はCHAdeMOのアダプターを利用して、日本国内においても急速充電をすることが可能だ。
一方、テスラ以外の自動車メーカーは、自社単独での充電網構築をほとんど行っていない。
ただ日産自動車は、初代リーフを発売した当初、やはり充電網が整っていなかったため、自社で急速充電器を開発し、全国の販売店に設置することで、各店舗を中心に半径40km圏内に急速充電が可能な拠点が存在する充電網を構築している。これらの店舗は、日産車だけでなく国産車輸入車を問わずCHAdeMOでの急速充電ができ、今日なお頼りとなる充電拠点としてユーザーに安心をもたらしている。 【次ページ】テスラが事実上の「米国標準」に
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