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Otto(オットー)は自動運転技術を大きく進歩させ、運転席に誰もいない状態で190キロ以上を走行するなど、大きな実績を積み上げてきた。その技術に注目した米ウーバー・テクノロジーズ(ウーバー)に買収され、ウーバーが目指す信頼できる交通・物流ネットワークの構築に寄与している。オットーの創業者アンソニー・レヴァンドフスキ氏は、スペイン・バルセロナで行われたモバイルワールドコングレス(MWC)2017に登壇し、自動運転開発の現状や、それを実現する未来について語った。現在開発するソフトウェアやセンサー技術に加え、5Gの高速通信インフラによって「自動運転車は最も大きなモバイル機器」になるというビジョンを示している。
ウーバーがオットーの自動運転に目をつけた理由
オットーの創業者アンソニー・レヴァンドフスキ氏が同社を創業したのは2016年1月のことだ。
グーグルの自動運転車開発部門を率いていた同氏は、他のグーグル社員と共にオットーで自動運転開発のプロジェクトを開始した。
創業から数か月後の2016年8月にはすでに従業員90名を抱えるベンチャー企業へと育っていたオットーは、配車サービスを展開するウーバーへと買収された。
ウーバーの目的は配送ネットワークを自動運転で効率化するためで、オットーは買収された後もそのブランドを維持したまま、開発を続けている。
スペイン・バルセロナで行われた「モバイルワールドコングレス(MWC)2017」の基調講演に登壇したレヴァンドフスキ氏は、自動運転開発の現状とそれを実現する技術について語った。
レヴァンドフスキ氏がオットーを創業した背景には、運転の頻度が高い市場に自動運転車を投入し、できるだけ早く世界の物流を効率化させるという戦略がある。
具体的には、高速道路を走る運送業者を対象に自動運転を普及させたいという。そして、創業して間もなくウーバーからの買収提案を受け入れた理由として、ウーバーの「全ての人にどこでも信頼できる運送手段を提供する」というビジョンへと目標を拡大するのも良いと考えたと述べた。
オットーはトラックの自動運転化に注力しているが、その社会的インパクトは大きいと同氏は主張する。「トラックは全車両の1%、全走行距離の5%、そして交通死亡事故者の90%」を占めているからだ。自動運転の実現によって、安全性と効率性の向上がもたらす意義は大きい。
高速道路での完全自動運転を実現した「オットー」
会場では、オットーが試験走行を成功させた完全自動運転車の様子が映像で紹介された。2016年10月、5万本のビールを積んだ大型トラックが米国コロラド州で190キロ以上を走行し、荷物の配送を成功させている。
高速道路区間では、運転手が完全に運転席を離れ、自律的に運転を行っている。米国運輸省などが定めた自動化レベルの定義において、完全自動運転を意味するレベル4に達しているオットーは、このような実証実験が可能になったのだ。
もう一つの事例として、米国ピッツバーグとフェニックスで行われたウーバーとの実証実験についても解説がなされた。
つまり、ウーバーのアプリで配車を依頼すると、オットーの自動運転車が迎えに訪れ、目的にまで連れて行ってくれるのだ。
この実証実験の目的として、実際の道路状況を使って技術を検証し、顧客からのフィードバックを集め、そして、最も重要なものとして、人々が新しい技術への理解を深められる点を指摘した。
若い学生から94歳の女性までが利用しており、さまざまなフィードバックを収集しているという。
「市民との対話を通じて、物流ネットワークがどのように変わるか、社会を教育していくプロセスがオットーにとっては重要だ」(レヴァンドフスキ氏)
センサー技術と深層学習技術によって自動運転を実現
オットーは自社で自動車を製造しているわけではなく、通信・制御機能を付加して、既存の車に自動運転の機能を導入する戦略をとっている。そのため、自動車業界との提携は極めて重要な課題だ。
レヴァンドフスキ氏は消費者が多くの選択肢を得られるよう、複数の会社と手を組む「オープン・パートナーシップ」戦略に触れた。
すでにボルボとダイムラーとの提携は発表されているが、それぞれの企業で提携の内容は異なっている。
ボルボとの提携は技術的に深いレベルで行われている。オットーのエンジニアが、ボルボの自動車で自動運転が実現できるよう、細かい仕様まで確認してきた。一方、ダイムラーでは、オットーのネットワークへの接続を行うにとどまっている。
オットーの自動運転技術は何がスゴいのか
大企業との提携も行われているオットーの技術は、どのようなものだろうか。モバイルワールドコングレスの会場では、オットーの自動運転車が屋根の上部に取り付けているセンサーや、それが検知しているリアルタイムの映像が紹介された。
360度全方位を3次元でとらえるセンサー群は、信号機や周囲の車、歩行者を正確に捕捉する。現実世界の状況が逐一理解できるので、コンピュータによる走行が可能になる。
さらに、自動運転車が「学習」する環境についても動画で紹介された。さまざまな交通状況をコンピュータに読み込ませた上で、ディープラーニング(深層学習)を使って、走ってよい場所とそうでない場所をコンピュータが判断できるようにしているのだ。
たとえば、工事が行われている場所ではコーン標識などが置かれており、そのような特殊な状況でもコンピュータが判断を誤らないようにしている。
会場の映像では、走ってよい場所が緑色、走れない場所が赤色と分けられた映像が流れ、まるで、人間が学習しているのと同じように、コンピュータも学習している様子が伝わった。
衝突されたことはあっても、事故を起こした事例はないと言ったレヴァンドフスキ氏は「市街地での自動運転は技術的に難易度が高く、安全性には十分に注意している」と述べている。
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