【連載】現役サプライチェイナーが読み解く経済ニュース
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対話型AIの「ChatGPT」は、これまでの業務の在り方を大きく変える可能性があるかもしれません。実際に、日本政府も対話型AIの業務利用を検討するなど、大きなトレンドとなっています。このようにAIが世界を大きく騒がせている中、サプライチェーンマネジメント(SCM)の領域においてもAI活用はトレンドとなっています。今回は、サプライチェーンの効率化に向けAI活用に取り組むメセデスベンツ、BMW、P&Gの事例を解説します。
SCM領域における生成AIの活用イメージ
近年、AIに関するニュースを見ない日はありません。特に2022年11月にサービスが開始されたChatGPT(AIを利用した対話型の自動応答システム)のアクティブユーザー数が、サービス開始からわずか2カ月で1億人を超えたことは大きな話題となりました。
ChatGPTなどのように、利用者の指示に従って文書や画像、プログラミングコードを生成してくれるAIは、“
生成AI”と呼ばれており、従来のAIと比べて文脈や背景などを理解する能力が飛躍的に高まっているのが特徴です。そのため、業務の効率化に活用できることが期待されています。
そうした生成AIのサプライチェーンマネジメント(SCM)分野での活用方法についてはどうでしょうか。
グローバル展開する企業は、コストの上昇や需要の変動といった問題に取り組むためにサプライチェーンの透明性を高めたいと考えています。そこで、生成AIを活用することによって、さらにモノの流れの可視化をすすめ、世界中から収集されたデータを基に分析・予測し、意思決定を迅速に行うことで、サプライチェーンで何か問題が起こる前に課題を発見・解決する、といったことが期待されています。
たとえば、トヨタやソニーなども含まれるフォーブス世界トップ公開企業2000社のうち、55%の企業に関係するサプライチェーンがAIによって2026年までに再構築されるという予測レポートもあります。具体的には、次のような活用方法が想定されています
(注1)。
(1)高度なデータ分析
発注や請求情報・出荷追跡情報・ニュース情報など、ERP・倉庫システム・一般公開されている情報などのさまざまなデータソースを組み合わせてデータ分析を行い、パターン特定や改善余地を提案する独自の洞察を作成することができます。
(2)ワークフローのボトルネックを解消
生成AIは要約機能が優れており、製品や材料に関するさまざまなトランザクション情報からロジスティクスの管理者・実行者向けの簡潔な要約を作成することができます。この情報を用いて業務に問題が発生することを防ぐ対応策を事前に事項することができます。
(3)トレーニングやサステナビリティ資料などのドキュメント作成のサポート
生成AIによってベストプラクティスを特定し包括的なドキュメントを作成することができるようになります。配送条件の更新や持続可能性についての管理方法を含むサプライヤー管理のガイドラインを作成したり、データの分析を行い新たなレポートを作成・自動化したりすることが可能となります。
(4)多国籍/多文化の環境でコミュニケーション促進をサポート
生成AIを用いることで、より理解しやすい形で翻訳された文書を作成することで、関係者間の情報伝達の早さやコラボレーションが向上し、より効率的な意思決定が可能となることが考えられます。
ここからは、生成AIに限らず、SCM分野におけるAIの活用事例を見てきます。メルセデスベンツやBMW、P&GはどのようにAIを活用して、SCMを高度化しているのでしょうか。
【次ページ】SCM領域のAI活用事例(1):メルセデスベンツ
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