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- 2025/03/19 掲載
中継輸送とは何か、静岡・浜松の拠点を直撃取材、メリット・デメリットや課題など解説
連載:「日本の物流現場から」
中継輸送とは
中継輸送とは、貨物をリレーしながら輸送する方法を指す。トラック→鉄道→トラックのように輸送手段が変わる中継輸送もあるのだが、最近ではトラックのみで行う中継輸送が注目を集めている。トラックの場合、1つの輸送工程を1人のドライバーが運転し続けるのではなく、複数のドライバーがリレーしながら行う。長距離輸送においてもトラック輸送の存在は大きく、たとえば関東から近畿に運ぶ場合の輸送手段はトラックが9割超を担っている。一方で、長時間労働など働き方に課題があり、その改善策として中継輸送が期待されているのだ。
今回取材したコネクトエリア浜松の場合、東名阪の貨物輸送を担うトラック同士の中継輸送が行われている。
午前0時を回ったコネクトエリア浜松には、次々とトラックが入場してくる。入場してきたトレーラーは、既にトラクター(けん引側)とトレーラー(非けん引側)を分離して待っていたドライバーに挨拶をすると、隣に駐車し、自身もトラクター・トレーラーを分離、お互いのトレーラーを交換した。
「コネクトエリア浜松を利用するのは、4割がトレーラー、4割がドライバーの乗り換え(トラック交換)、2割がスワップボディです」と遠州トラックの担当者は語る。
スワップボディとは、トラックのコンテナ(荷台)部分だけを分離できるトラックのこと。スワップボディはトレーラーと違い、けん引免許が不要だ。

コネクトエリア浜松は、ネクスコ中日本と遠州トラック(静岡県袋井市)が共同運営している中継輸送拠点である。
新東名自動車道 浜松サービスエリア(下り)に隣接する土地をネクスコ中日本が提供し、遠州トラックが運用を担っている。浜松サービスエリアから徒歩でコネクトエリア浜松にアプローチすることは可能だが、トラックは高速道路を降りてアクセスしなければならない。
コネクトエリア浜松は、大阪から3時間強、東京から3時間弱。中継輸送拠点としてうってつけの立地だ。
施設そのものは、入場ゲートが付いた駐車場にしか見えない。約2400坪の敷地に、セミトレーラー、スワップボディが駐車可能な駐車枠が計30台分用意されている。駐車枠の幅は4メートル(一般的な大型トラック用駐車枠の幅としては3.5メートルが多い)、相対する駐車枠同士の距離は20メートルと、かなり余裕のあるつくりになっている。これは、スワップボディに対応するためだ。
スワップボディのコンテナは自立するための脚(アウトリガー)を出さなければならないし、コンテナ入れ替えの際には、トレーラーと比べてより長いトラック前方向スペースを必要とするからである。
中継輸送の「2つのメリット」
(コネクトエリア浜松に限らず)中継輸送における最大のメリットは、「トラックドライバーの働き方改善」に貢献できることにある。
長距離輸送を担うドライバーは、行き先で宿泊することになる。しかもホテル等に泊まれるわけではない。たいていは、トラック内の就寝スペースで寝ることになる。長距離ドライバーにとって、「毎日自宅で就寝できるわけではない」ことは当たり前のことだが、昨今、特に若者を中心に、こういう働き方は敬遠される傾向にある。
しかし中継輸送拠点を上手に活用すれば、宿泊を回避し、日帰り運行を実現できる。たとえば、東京~大阪間の長距離輸送で、コネクトエリア浜松を活用すれば、大阪・東京それぞれから荷物を運んできたドライバーは、お互いの貨物を交換し、そのまま出発地へと戻ることができる。
それでなくとも高齢化が進み、若手不足を課題として抱える運送業界。現役ドライバーの働き方改善というメリットに加え、コネクトエリア浜松のような中継輸送拠点を活用することで、「日帰り勤務を原則とする」若者に嫌われにくい働き方を実現することは、ドライバー不足対策にも貢献できる。
2つ目のメリットが、貨物輸送におけるリードタイムの削減である。
たとえば、九州から関東など、片道2日以上かかる行程では、ドライバーの勤務間インターバル(推奨11時間以上、9時間未満は禁止。長距離運行時の例外として8時間以上)が輸送リードタイム短縮のネックとなる。だから、以前お届けした「迫る農水産業の崩壊、『法令違反』でも長距離輸送する『九州の運送会社』の苦悩と本音」のように、九州~東京間を4~5時間の仮眠を取っただけで無理やり運行するようなコンプライアンス違反の運行を行う運送事業者が現れるのだ。
だが、長距離運行を2回以上に分割して中継輸送すれば、理論上、勤務間インターバルが、輸送リードタイムに加算されることはなくなる。
片道2日間の運行であれば8時間以上、片道3日間の運行であれば16時間以上のリードタイム短縮につながることになる。
ちなみに国土交通省は、「2024年4月に改正された改善基準告示(トラックドライバーに対する労務コンプライアンス基準のこと)を考慮すると、日帰り運行は片道約300キロメートルを超えると不可能。片道約280キロメートル以内が適当」としている。
東京インターチェンジから約224キロメートル、吹田インターチェンジから約245キロメートルという立地に位置するコネクトエリア浜松は、中継拠点としてうってつけというわけだ。
中継輸送の「4つの方式」
中継輸送の方式は、「ヘッド交換方式」「貨物積み替え方式」「ドライバー交代方式」の大きく3つ(スワップボディ方式を含めると4つ)ある。それぞれの特徴と、メリット・デメリットをまとめた表が以下の通りだ。方式 | 特徴 | メリット | デメリット | |
トレーラー・トラクター方式(ヘッド交換方式) | 中継拠点でトレーラー(スワップボディの場合は、荷台)の交換を行う方式 | 比較的短時間で交換作業が完了する | けん引免許が必須 | |
スワップボディ方式 | けん引免許不要で、大型免許だけで運転できるが、スワップボディという、まだ一般的とは言い難い特殊車両が必要。 また荷台交換には、通常よりも広いスペースが必要 |
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貨物積み替え方式 | 中継地点で貨物を積み替える方式 | 他方式と比べ、トレーラー・荷台を含む車両を交換する必要がない | 積替え荷役に時間と手間、あるいは荷役機器(フォークリフト等)を要する。 また雨天時でも積み替えを行うためには、屋根のある施設が必要 |
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ドライバー交替方式 | 中継地点でドライバーが交替する方式 | もっとも短時間で交換・交替が完了する | 異なる運送事業者間で実施するのは、車両管理の都合上、とても難しい。 同じ運送事業者間で行う場合でも、営業所をまたいだ車両管理問題や、「別のドライバーが管理する車両に乗らなければならない」という、ドライバー同士の心理的抵抗が発生する可能性がある |
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