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  • 2021/09/24 掲載

中継輸送とは何かわかりやすく解説、事例やメリットは?なぜ国交省が期待するのか

連載:「日本の物流現場から」

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トラックドライバーの人材不足は、依然として深刻な状況にある。厚生労働省によれば、2021年7月における「自動車運転の職業」の有効求人倍率は2.07倍。全産業の有効求人倍率が1.02倍だから2倍である。背景には、職業としてのトラックドライバーの不人気がある。この状況を改善するために国土交通省が期待をかけているのが、「中継輸送」だ。同省の資料では、中継輸送はトラックドライバーの厳しい労働環境を改善し、労務負担を軽減する方法の1つであると位置づけられている。
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中継輸送の仕組みとメリットを解説する
(Photo/Getty Images)

中継輸送とは何か、3つの方式

 中継輸送とは、1つの輸送工程を1人のドライバーが運転し続けるのではなく、複数のドライバーがリレーしながら担う輸送方式を指す。

 中継輸送の方式としては、以下3つが考えられる。

  1. トレーラー・トラクター方式
    トレーラーはそのままに、トラクターを入れ替えて貨物の中継を行う方式。けん引免許を持つドライバーが必要となるが、中継にかかる作業時間は短時間で済む。ニトリの物流センターに利用されたことで知名度を上げた、スワップボディ(トラックのコンテナを簡単に積み替えることができる架装車両)による中継輸送もこれに分類される。なお、スワップボディの場合、けん引免許は不要となる。

  2. 貨物積み替え方式
    文字通り、中継地点で貨物を積み替える方式。積み替えのための荷役を要すること、(荷姿にもよるが)積み替え時間が長くなりがちなこと、積み替え作業時に貨物を破損するリスクが高まることがデメリットだが、ドライバーはトラックを乗り換える必要がなくなる。

  3. ドライバー交代方式
    トラックを乗り換えてドライバーが交代する方式。中継地点での荷役作業は不要になる。


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中継輸送の方式
(出典:国土交通省「中継輸送の実施に当たって(実施の手引)」より)

中距離輸送が解決する、長距離輸送の課題とは

 近距離の輸送で中継輸送を行うメリットは少なく、宿泊を伴うような長距離輸送においてメリットが出やすい。

 東京の日本橋から愛知県名古屋市の名古屋駅までの輸送工程を例にして考えよう。Googleマップによれば、距離352km、(出発時間や渋滞の有無にもよるが)時間にして4時間10分から5時間30分の行程となる。

 トラックドライバーには、「改善基準告示」という厳しい労務管理規定が存在する。改善基準告示はとても複雑なのだが、基本中の基本とも言える、以下ルールを抜粋して考えよう。

  • 1日の拘束時間は、13時間以内
  • 1日の運転時間は、9時間以内
  • 運転開始後4時間以内、もしくは4時間経過直後に、30分以上の休憩を取ること

 仮に、東京の日本橋~名古屋駅間を、4時間10分で走行したとしよう。単純計算では、拘束時間は下記(1)+(2)の9時間20分となり、「1日の拘束時間は、13時間以内」というルールに収まるように思える。

  1. (1)東京日本橋~名古屋駅間の運転時間=8時間20分
  2. (2)休憩時間=1時間(30分×2回)

 だが現実的には、東京日本橋~名古屋駅間を日帰りでこなすことは、限りなく難しい。拘束時間には点呼や始業前点検、そして荷役の時間が含まれるからである。

 国土交通省の調査によれば、1回の運行における平均荷役時間は2時間44分とある。始業前点検と乗務前・乗務後点呼を30分で終えたとしても、拘束時間合計は12時間34分。ちょっとした渋滞や荷役等のトラブルなどがあると、もはや改善基準告示という厳しいコンプライアンスを遵守することは難しくなる。

 ちなみに東京を基準とすると、片道4時間を超えるのは仙台市、新潟市など。大坂を基準とすると、静岡市、広島市、松山市、金沢市あたりで、ドライブが好きな方の中には「いや、日帰りできるだろう?」と思う方もいるかもしれない。だが、安全を守るために設けられたコンプライアンスをきちんと遵守しようとすれば、それは難しくなるのだ。

 日帰りで運行できない場合、トラックドライバーは、次の乗務まで最低8時間の休息を取らなければならない。多くの場合、トラックドライバーはトラック内の寝台で車中泊することとなる。「家でゆっくりと休みたいのに」── 当然ながら、そう思うドライバーは少なくない。自宅と違い、トラックの寝台では、趣味に打ち込むなどプライベートを満喫することは難しい。子供のいるドライバーであれば、宿泊を伴う長距離運行に駆り出されると子供の顔を見ることもできなくなる。

 こういった不満を解消し、トラックドライバーの負担を減らす施策の1つとして期待されているのが、中継輸送なのだ。

【次ページ】中継輸送は運送会社にとってもメリットあり
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