- 2025/02/04 掲載
運送業の営業損益率0%…でも三重の社長が「儲かる」と断言する営業・人材戦略の秘密
連載:「日本の物流現場から」
営業損益率「なんと0%」、でも「意外と潰れない」ワケ
全日本トラック協会では毎年、会員である運送会社の決算をまとめた「経営分析報告書」を発表している。公開されている最新版の2022年度版によると、運送会社の貨物運送事業における平均の営業収益額は2億5,383万円、営業損益率は0%である。運送に従事していない一般の人々からすると、「運送会社ってそんなに儲からないのか?」と思うかもしれないが、これでも前年の営業収益額から4.4%増加し、営業損益率も前年度のマイナス0.9%から上昇している。川北氏はこう指摘する。
「運送会社の社長って、だいたい皆さんレクサスとかベンツとか、いいクルマに乗っているじゃないですか? そして、皆さんゴルフもうまいし。そう考えると、赤字だなんだと言っても、意外と運送会社って潰れないんですよ」
その上で、「今の運送業界の課題って、ズバリなんだと考えていらっしゃいますか?」という筆者の質問に対し、川北氏は「運送会社経営者のマインドこそが、最大の課題です」と断言する。
川北氏は、「運送業界をどうしたいのか、本気で考えている運送会社経営者は少ない」と憂う。この憂いから川北氏が導いたのが、「社長は誰でもなれるが、経営者になるためには努力しなければならない」という川北流の経営哲学「カワキタイズム」だ。
川北氏が断言「運送会社は儲かる」
川北氏が起業したのは、1989年、25歳のときである。高校を卒業し、工場で働き始めた川北氏だが、7年後に退職し、貨物軽自動車運送を始める。ビジネスは順調で、宅配のほか、納品代行や海外引っ越しなどもやがて手がけ始めた。さらに2001年には、求貨求車のマッチングを行うためロジネット協同組合を設立し、理事長に就任する。その後もさまざまな運送系ワーキンググループや協会に参画し、順風満帆と思われたが、ある仕事上のトラブルからうつ状態に陥ったそうだ。
このとき、自らうつ状態を脱しようともがいた川北氏は、心理学を学ぶなど、自己研鑽を積んだ。自身のPodcast番組では、このとき「挫折と、自己研鑽の努力」の経験こそが、川北氏自身が経営者へと変わるきっかけであったと語っている。
「運送会社に限ったことではありませんが、大会社の社長であっても、挫折を経験したことがない方もいます。そういう方の中には、社長という肩書はあっても、本当の意味で経営者には達していない方もいると感じています」(川北氏)
そんな川北氏は、Podcast番組において、「運送会社は儲かる」と断言している。取材を通じ、筆者が理解したカワキタイズムにおける「運送会社がきちんと利益を出す秘訣」は、2つあるという。 【次ページ】秘訣1:あえて「スポット輸送」中心のワケ
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