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- 2025/02/18 掲載
配送「1日110時間減」など特大成果、Pasco「超熟」敷島製パンが荷主でも配車する理由
連載:「日本の物流現場から」
意外と少ない「物流改善は荷主の責任」の意識
パンに限らず、量販店への配送を行う食品配送はさまざまな制約がある。敷島製パン パスコウエストカンパニー 物流部長 今西勝之氏は「当社の中日本・西日本エリアにおける配送先は、1万2000~1万3000店(注1、注2)ありますが、その半数で、時間指定(あるいは時間帯指定)配送が求められます」と話す。加えて、配送先店舗独自の納品ルール、配送先店舗が入っている商業施設独自の納品ルールなどに従わなければならない。さらに言えば、パン配送はリードタイムが短い。パンは、乳製品や生麺などとともに、製造から消費期限までの期間が短く、日持ちのしない日配食品にカテゴリーされるからだ。このようにパン配送にはさまざまな制約があり、難しい。
だが敷島製パンは荷主として物流改善を主導し、トラック輸送コースを計画立案・運用する配車業務も運送会社任せにせず、自ら取り組んでいる。「そもそも、運送会社に配送を丸投げして『後は任せました』というのは荷主として無責任です」と今西氏は強調する。
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荷主としてまず大切なことは、大事な商品を顧客(販売店)にお届けすること。理屈で言えば、その過程であるトラック輸送の効率化・改善は、運送会社が行っても、荷主側が行っても、結果さえ出れば良いことになる。
しかし現実的には、運送会社側ができることには制限がある。運送会社が、荷主を飛ばして配送先と個別交渉を行うことは、商慣習上、原則としてNGだからである。そして、パンの配送を改善・効率化しようとすれば、どうしても配送先との調整・交渉は避けて通れない。
パンという商品の物流事情もあり、本気で物流を改善しようとすれば、荷主が主体的に動かなければならないことを、同社はきちんと理解している。当たり前のようだが、「物流改善の責任は荷主にある」ことをきちんと理解し、そして実行に移すことができる荷主は、これだけ物流クライシスが叫ばれる今になっても、意外と少ない。
同社では、物流クライシスだけではなく、CO2削減といった自社商品配送に関係するさまざまな社会課題に対し、比較的早い時期から取り組みを開始していた。その1つが、「運行計画立案を運送会社に丸投げするのではなく、配車システムを用いて自社で立案・運用する」という取り組みである。
【次ページ】配送距離「1日110時間」削減など特大成果
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