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  • 2018/08/08 掲載

カーデザインの現場で今、何が起きているのか

日産のVR活用事例とは

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3D・VR技術はもはや「未来のテクノロジー」ではないのは周知の事実だろう。今日、カーデザインの世界においてはさまざまな場面で日常的に活用され、そのプロセスの抜本的な変革に寄与している。それでは実際どのような場面で使われているのか? リードエグジビションジャパン主催「3D&バーチャル リアリティ展」に登壇した日産自動車 専務執行役員 グローバルデザイン担当 アルフォンソ・E・アルバイサ氏は、日産のデザイン現場の過去と現在、そして未来までを語った。

グローバルデザイン戦略担当が語る、「日産デザイン史」

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日産自動車
専務執行役員 グローバルデザイン担当
アルフォンソ・E・アルバイサ氏
 アルバイサ氏は、新卒で北米日産に入社、一貫して同グループのデザインセクションで実力を発揮してきた人物である。1988年、北米日産に入社。2004年に同社日産・デザインアメリカ デザインダイレクターを務めたのち、翌年には日産自動車のプロダクトチーフデザイナーに就任した。その後、日産デザインヨーロッパでのバイスプレジデントを経て、2012年より日産本社でグローバルデザイン戦略担当およびインフィニティブランドデザイン担当を務めている。

 アルバイサ氏はまず、日本および日産のカーデザイン史を語った。日本で産業革命が現実のものとなり、自動車メーカーが産声を上げたのは1911年のことだ。

「日本の自動車業界のパワーというのはほんとにめざましいものでした。この国は自動車を民主化し、すべての人々に自動車を提供しようとしていました。そうした中、われわれ(日産)の最初の車はダットサンでした。田健治郎氏、青山禄郎氏、竹内明太郎氏の3人が東京で自動車ビジネスを立ち上げたのです」

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現在、ダットサンは新興市場向けブランドとして再リリースされている(画像はインド市場を担う「redi-GO」)
(出典:日産自動車)
 実は、もうこのころから米国人が同社のビジネスに関わっていた。エンジニアのウィリアム・ゴーハム氏がその人だ。1920年代に来日、もともと日本の飛行機業界で活躍するつもりだったが、自動車が人々の生活を助けている点に魅かれて彼らと合流したという。しかし、1930年まではダットサンに専業のデザイナーは存在しなかった。エンジニアがエンジンや車体を設計する延長線上でデザインを担当していたのだ。

 その後、デザイナーが入社し、サーフェス(表面)のスケッチが登場する。また、クレイモデルの作成もデザイナーの仕事だったが、当時はスケッチを測定してクレイを作り上げていくというもので、完成までに非常に時間がかかった。1970年代に入ってようやくデジタル化がスタートするが、クレイモデルからデジタルの点を取ってコンピュータに取り込むという非常に初歩的なもので、「結局、1930年代から1980年代までデザインプロセスはあまり変わりませんでした」と、アルバイサ氏は語る。

日産のデザインプロセス革新の歩み

 大きな転機は、アルバイサ氏のオフィスに“誰も使っていないコンピュータ”が登場したときに訪れた。上司から「この中のソフトウェアは使えるのか?」と聞かれた同氏が、試しにコンピュータを立ち上げ、人の写真を取り込んで髪や目の色を変えられるソフトウェアがあることを知った。これが初期のPhotoshopだったのだが、同氏はその操作に夢中になり2日間徹夜したという。そして、このソフトやIllustratorなどをデザインプロセスに本格的に導入していく。

「一番大きな変化は、クレイモデルに重点を置かなくてもよくなったことです。サーフェスをスケッチしたら、すぐにコンピュータでデータを作れるようになりました。入社した当時(1980年代)、フルスピードで働いても、1年間で2つの外装と1つの内装を完成させるのがやっとでした。しかし2012年、32の外装と27の内装を1年で成し遂げました。テクノロジーによって私たちの仕事は大きく変わったのです」

 レーザー技術でデザインのスキャニングが可能になったこともまた、抜本的な変革だった。一人のデザイナーが6~7つの物理モデルを担当でき、そうしたデータをエンジニアリング部門に送ってフィードバックをもらうこともできれば、すべてのサーフェスを精査して内装を結合するといったことができる。

 また、同じデザイナーがアニメーションを作成して、その情報をエンジニアリング部門だけでなく、製品開発部門、マーケティング部門と共有することもできる。「弊社の製品は、常にデザイナーとモデラーの会話から始まります」と同氏は話す。

【次ページ】日産のVRの実態、カーデザインの現場で今何が起きているのか
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