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「軽であること。それ自体がエコカー」だと思われていた軽自動車にも今年、ハイブリッド化の波が本格的に訪れている。ほんの数年前はゼロだったハイブリッド車の比率もあっという間に1割を超えた。現在はエンジンの始動を電気モーターがアシストする「マイルドHV」が主流だが、EV単独走行も可能な「ストロングHV」の車種も登場している。軽のハイブリッドを「そもそも必要なものなのか?」と疑問視する人もいるが、新車販売の現場では「値落ちしない」という大きな武器を持つ。
ゼロからわずか2年で軽のシェアの1割を奪取したHV
「軽のハイブリッド車」は現在、軽自動車の販売台数全体の約1割を占めている。
一般社団法人次世代自動車振興センターの調査によると、2015年度に国内で販売された軽自動車規格のEV(電気自動車)は1043台、HV(ハイブリッド車)は18万5152台で、合わせて18万6195台だった。
その2015年度に国内で販売された軽自動車の台数は、一般社団法人全国軽自動車協会連合会の集計によると181万3328台で、その10.2%をEV、HV車が占めていたことになる。ハイブリッド車だけでも、軽自動車全体の約1割を超える(乗用車、商用車を全て含む)。
次世代自動車振興センターの調査結果では2011~2013年度の「軽のハイブリッド車」販売はまったくのゼロで、日本では新車は売られていなかった。それが2014年度に5万4805台売れると、その翌年度には軽自動車全体の販売シェアの1割を取ってしまった。
軽ではない「登録車」のほうは2015年度、国内全販売台数312万4406台に対し、EV、HV、PHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(水素自動車)の合計販売台数は99万682台で、31.7%を占めていた。
軽の10.2%はその3分の1程度の比率だが、ほとんどゼロから2年間でシェアの1割を奪取できたのは、注目に値する。
2016年度の数字はまだ出ていないが、登録車のほうはハイブリッド車の販売台数の伸びがなおも続いているので、ハイブリッドの軽自動車の販売は伸びこそすれ、減ることはないだろう。
「マイルドHV」と「ストロングHV」の違い
2017年7月現在、軽の乗用車でEV(電気自動車)、HV(ハイブリッド車)として販売されているのは11車種ある(軽自動車の総合サイト「Oh!軽」による)。EVは三菱、HVはスズキと、スズキからOEM供給を受けているマツダが発売し、ダイハツやホンダは出していない。
内燃機関(エンジン)を搭載していない純粋な電気自動車「ピュアEV」は、発売当初に大きな話題をふりまいた三菱の「i-MiEV(アイミーブ)」1車種だけ。それ以外の10車種は内燃機関と電気モーターを併用し、モーターが走行を直接アシストするHVである。
軽のハイブリッド車には2種類がある。
アイドリングストップからの始動時に電気モーターが駆動をアシストするが、電気モーター単独での走行(EV単独走行)はほとんどできないタイプの「マイルドHV」が現在の主流で、7車種ある。それを「ハイブリッド車と呼ぶのは疑問がある」と思っている人は、少なくない。
もう一つは、モーターがエンジン走行をアシストするだけでなく、平地、短時間など条件はあるものの、エンジンをまったくかけないままのEV単独走行が可能なタイプ「ストロングHV」で、3車種ある。
マイルドHVより技術的に一歩、先んじ、EVの「急所」といわれるリチウムイオンバッテリーがより小型に、より長寿命に、より安価になれば、「軽のPHV(プラグインハイブリッド)」化にもつながっていきそうな存在だ。
マイルドHVは2014年に再登場したが、当時、メーカーは「ハイブリッド」とは呼ばなかった。たとえばスズキは「S-エネチャージ」という名前で呼び、表向きはハイブリッドカーとは言っていなかった。
そのスズキも2017年2月、新型「ワゴンR」にEV単独走行が可能なストロングHVのラインナップを加えた際、車種グレードの表示だけでなく、車体にも「HYBRYD」のエンブレムを堂々とつけている。それはまさに「『軽でもハイブリッド』宣言」だった。
【次ページ】日本の軽のハイブリッド化は世界戦略上も重要
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