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  • 2017/05/08 掲載

クルマが日本の製造業の底力を感じさせる、これだけの理由

連載:クルマの未来

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クルマを取り巻く環境が急速に変化している。カーシェアリングなどの使用環境の変化もあれば、プラグインハイブリッドのような環境性能の進化も著しい。また安全性を大幅に高める先進運転支援システムも急激に充実している。その先にあるのは自動運転とコネクティビティな交通による安全で快適な移動だろうか。あるいはパーソナルモビリティによる自由で手軽な移動の楽しみかもしれない。とにかく、これからのクルマは開発や生産の方法も使い方も、これまでとは大きく変わってくることだけは間違いない。これからのクルマはどうなっていくのか、今のクルマのメカニズムを深く知るほどに魅力も見えてくる。まずは序章として、クルマを取り巻く全体の展望を語らせていただこう。
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燃料電池車トヨタ・ミライの生産工場
(写真:筆者撮影)


なぜクルマは技術力の証明になるのか

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 クルマという乗り物はパーソナルな移動手段としての役割だけでなく、製造産業の工業製品としても重要な存在だ。さらにはプライベート空間やステイタスの象徴といった、さまざまな需要が複雑に絡み合った商品である。

 それだけに環境問題やエネルギー問題、高齢化社会…クリアしなければならない課題や法規制なども多いし個々のハードルも高い。

 また税制面でもクルマは高額商品であるだけに、購入時には消費税や取得税など結構な税金を納めなければならない。その上、登録時や車検時には自動車税、重量税、さらに給油時には燃料税も課せられるなど、税収の面でも日本の経済を支えている。

 クルマが売れなくなったと言われながらも、国内の保有台数はいまだ8000万台を数えるし、年間の販売台数も500万台を超える。さらに海外生産分も考えれば、日本の自動車メーカーは世界中で生産と販売を行い、むしろ海外で収益を上げているグローバル企業なのである。

技術の進化は相乗効果をもたらす

 一方、技術面にフォーカスすると材料技術や設計、開発、生産、リサイクルに至るまで、クルマにはおよそ工業技術のほとんどの要素が駆使されている。つまり日本の製造業の技術力の高さの証明でもあり、その象徴と言ってもいい。

 しかも今やガソリン車であっても電子制御のカタマリ、すなわち電気で走っていると言っても言い過ぎではない。車内にはワイヤーハーネスが張り巡らされ、センサーとマイコンがインターネットのごとく情報をやりとりしてクルマの走りを支えているのだ。

 つまり、実はクルマを取り巻くさまざまな技術的課題は、それぞれが独立したものであると思われがちだが、実はお互いに大いに影響を与えている。ということは、ある領域の技術が進化すれば、それが相乗効果となって、異なる問題にも解決の道筋を見いだせることが少なくないのである。

 たとえば、環境技術を高めるためにエンジンの制御技術が進化すると、ドライバーの操作を反映するセンサーも高度化され、車内通信が高速化されるために安全装備の処理速度も向上することにつながるのだ。

 それくらい個々の技術は根幹ではつながっており、これまでのノウハウがアドバンテージであるというだけでなく、突発的な進化を遂げる可能性を秘めているのである。

クルマの性能差はなぜ生まれるのか

 現在、新車市場に並べられているクルマたちは完成度が高く、どれを選んでも一定以上の満足度が得られるものではある。だがそこに注ぎ込まれた技術、エンジニアたちの情熱を知るほどに、個々のクルマたちに個性が感じられるようになり、クルマ選びもより一層楽しくなるはずなのだ。それを伝え切れていないのは、我々自動車ジャーナリストの怠慢と思われても仕方のないところである。

 また、同じ機能をうたう装備であってもシステムの違いによって、おそらく読者諸兄姉の想像以上に実際の効果についても差があるものもある。

 たとえば、「ぶつからないクルマ」などのキャッチコピーで知られる自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を見比べてみても、車種やメーカーによってレーダーセンサーのみで機能させるものもあれば、カメラとレーダー、レーザーセンサーを併用するもの、ステレオカメラで識別する車種もある。

 高級車になるほどセンサーの数は増える傾向にある。当然これらは作動する範囲も異なれば、精度や能力にも差が表れるのだ。

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EPS(電動パワーステアリング)世界トップメーカー、ジェイテクトの生産工場
(写真:筆者撮影)


 環境問題から排ガス規制や燃費規制はますます厳しくなっていくことが明確であり、それをクリアするために自動車メーカーや主要部品のサプライヤーたちのエンジニアらは日々頭を悩ませ、不可能を可能にする技術の開発に挑戦を続けている。

【次ページ】エンジンの時代は終わったのか?
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