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- 2016/11/02 掲載
バス・トラックの「自動運転化」で過労死問題は解決するか
独モーターショーで見えた可能性
バス・トラックの世界にも浸透する自動運転
これに対してバス・トラックなど商用車のモーターショーは、ドイツで開催されるIAAが有名だ。これらのモーターショーでも、EV、自動運転、コネクテッドカーなどへ展示のトレンドがシフトしている。
現在、ダイムラー、ボルボトラックス(乗用車のボルボカーズとは別会社)、MAN(フォルクスワーゲン(VW)傘下のトラックメーカー)、DAFトラックス、IVECO(イタリア)、スカニア(スウェーデン)など、バス・トラック市場での主要なメーカーは、なんらかの形で自動運転技術に取り組んでいる。
この中で自社技術で先行しているのは、ダイムラーで、ボルボトラックス、MANなどが続く。今年のハノーバーモーターショーで、トラック、バスの自動運転技術で最も注目を集めていたのはダイムラーだった。
先行するダイムラーの自動運転実験
ダイムラーは2014年にHighway Pilotとして高速道路での大型車両の自動走行実験に成功している。2016年7月にはアムステルダムにおいて空港と市内をつなぐバスの自動運転実験を成功させている。CityPilotと呼ばれるこの機能は、バス専用レーンでの走行が基本となるが、市街地での信号、歩行者、バス停、トンネルなどを認識する。CityPilotは、ハノーバーモーターショーでも車両展示のほか、簡単なデモ走行も披露された。
また、Vision Vanと呼ばれる配送の自動化を目指したデリバリーバンのコンセプトも紹介された。肝心のバンこそ自動運転化されていなかったが、荷室が無人倉庫のようになっており、荷物の積み下ろしが自動化されている。そして、ルーフに2機のドローンを搭載し、配送のラストワンマイルも自動化する。ドローン以外にもクローラー型のロボットも搭載可能だ。
ダイムラーは乗用車部門(メルセデス・ベンツ)と同様に、自動運転技術では、他社と比較しても先行している。世界で初めて貨物を運ぶための自動車、すなわちトラックを商品化したメーカーとしての自負もあるからだ。
ダイムラーは、現実的な市場要請から低燃費ディーゼル、ハイブリッドディーゼル、燃料電池車の製造も続けているが、EV化、自動化、コネクティビティは同社の今後の最重要戦略となっている。トラックの自動運転やEV化でも、いち早く実験を成功させ、市場投入でも世界初を目指している。
ADASの延長というアプローチ
他のメーカーはどうだろうか。前述した主なトラックメーカーも自動運転技術への取り組みは行っているものの、今回のハノーバーモーターショーでそれを前面に押し出しているメーカーはあまりなかったといえる。しかし、彼らも自動運転バス・トラックを考えていないわけではない。ダイムラーと市場戦略や自動運転技術への考え方について、やや異なるアプローチをとっている。
バスやトラックそのものは、運行管理のためのテレマティクスシステム、環境性能を上げるため、ドライバーの安全性向上や負荷を軽減するため、ADAS(高度運転支援システム)と呼ばれる技術の採用は進んでいる。
EUでは、事故時の緊急通報機能やタイヤの空気圧センサーの装着が法制化されていることもあり、貨物・旅客分野でのIT化は進んでいる。
ボルボトラックスは、傘下のUDが開発したESCOT-V(コンピュータ制御トランスミッション)をベースにI-シフトを開発し、燃料消費が最適化される自動シフトチェンジを実現している。I-シフトは、坂、市街地、高速道路、山岳路など走行条件ごとに最適なアクセルコントロールとシフトポジションを自動的に選択してくれる技術だ。
ADASの延長アプローチだからといって、他のメーカーの技術が低いとか先進的ではないということにはならない。乗用車も含め、各社が2020年、2025年とマイルストーンを定めている自動運転は、いまのところベースは各種ADAS技術を組み合わせて統合制御する方向で開発が進んでいる。ダイムラーも例外ではない。
【次ページ】サプライヤーのプレゼンスが高い大型車の自動運転技術
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