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エコカーに追い風が吹き、車輪に直結して駆動するタイプのインホイールモーターの世界市場は2019~2027年の8年間で10倍以上に拡大すると予測され、今後EV駆動方式のデファクト・スタンダードとなる可能性がある。その利点は弱点を補っても余りあるとも言われ、日産やトヨタはEV搭載車のプロトタイプを発表。インホイールモーターの開発競争にはベアリング、電子部品、タイヤ、重電といった異業種も続々と参入して、期待の次世代技術は熱気を帯びている。
世界的に来ている「エコカー」の波
2015年12月に「パリ協定」が採択された後、2017年にイギリス、フランスは2040年をめどにガソリン車、ディーゼル車(内燃機関を動力とする自動車)の販売を禁止する方針を決めた。今、二酸化炭素(CO
2 )の排出量が小さく環境にやさしいエコカーには追い風が吹いている。
中国は「2025年までにエコカー比率を20%に引き上げる」目標を打ち出し、日本の経済産業省は「2050年までに世界で供給する日本車について世界最高水準の環境性能を実現する」という長期ゴールを定め、同年のエコカー比率100%達成を想定している。
そんな流れを受けてHV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、EV(電気自動車)の世界市場は21世紀前半、大きく伸びるのはまず確実だ。
富士経済が2019年8月に発表した「2019年版HEV、EV関連市場徹底分析調査」の予測によると、2018年から2035年の間に乗用車の新車販売台数は、HVは3.4倍、PHVは17.8倍、EVは16.9倍に拡大する。3種類合計では2018年、前年比31.2%の成長をみせていたが、それが2035年までに9.6倍になる。
国別では日本はHVの成長率が1.48倍と大きいが、中国はPHVが15.6倍、EVが13.7倍。今やエコカーの開発、市場投入の主戦場は中国と言って良い。
成長期待大の「駆動用主機モーター」と「インホイールモーター」とは?
HVやPHV、EV、水素と酸素の化学反応で電気を起こす水素自動車(FCV)、太陽光で電気を起こすソーラーカーには、電気エネルギーで車輪を駆動させるモーターが搭載されている。
それは内燃機関のエンジンにあたり、ワイパーやパワーウインドなどを動かす車載モーターと区別して「駆動用主機モーター」と呼ばれている。
その世界市場は2016年から2020年にかけて2.3倍になり、さらに2020年から2025年にかけて4.9倍になると予測されている。
内燃機関の乗用車ではガソリンエンジンやディーゼルエンジンは1台に1個だけ搭載され、ドライブシャフトで動力を2つの車輪(FF車、FR車、RR車)または4つの車輪(4WD車)に伝達する構造になっている。エンジンを複数搭載するのは戦車のような特殊な車両に限られる。
ところが、HVやPHVと違って内燃機関と決別するEVでは、「使用される駆動用主機モーターは従来のエンジンを置き換えて1台に1個だけ」とは限らない。
1個のモーターからドライブシャフトで動力を伝達して車輪を駆動させるタイプ(日産「リーフ」など)とは別に、それぞれの車輪の車軸に直結した「インホイールモーター」で駆動させるタイプのEVもある。それにはモーターと車輪を直結するダイレクトドライブ方式と、間で減速ギアを介するギアリダクション方式がある。
インホイールモーターを複数搭載するタイプは将来、EVの駆動方式で主流の座を占める可能性があり、それを裏付ける将来予測がアメリカで発表されている。
MarketsandMarketsが2019年に発表した「In-Wheel Motor Market」によると、インホイールモーターの世界市場は、2018年は3.23億米ドルだったが、2019年は27.2%増加して4.11億米ドルになり、8年後の2027年には11.8倍の48.66億米ドルになる。CAGR(年間総合成長率)は36.2%もある。
EV1台に2個、4個と使われるので数が出るとしても、2020年代後半に駆動用主機モーターの主力を占める可能性は大きい。
その理由は、インホイールモーターは数々の優れた特徴を持っているからである。
【次ページ】インホイールモーターの何がスゴイのか? 弱点は? 自動車メーカー各社の開発状況、意外な企業も参戦
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