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  • 2014/02/14 掲載

トヨタ自動車 奥平総一郎 専務が語る次世代自動車、ハイブリッドでハイグリッド社会へ

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20世紀以降における工業技術のグローバルな発展に伴い、化石燃料の大量消費が始まり、環境に対する深刻な問題が起きている。山積する問題を解決するために、トヨタ自動車は「省エネルギー」「燃料多様化への対応」「エコカー」というテーマを掲げ、“サステイナブル・モビリティ(環境に配慮した持続可能な乗り物)”の実現に向けた取り組みを進めている。トヨタ自動車 専務役員 奥平総一郎氏は、「省エネ・燃料電池への対応はハイブリッド技術が鍵だ。次世代環境車は、燃料やパワートレインの特徴を活かした使い方が重要。これに合わせて電気グリッド・水素グリッドを組み合わせた“ハイグリッド(Hygrid)社会システム”が生まれる」と示唆する。

「やるべきことをやる」という使命感に燃えたハイブリッドカー開発

 1次エネルギーからつくられる自動車用燃料には、ガソリン・軽油、ガス燃料、合成液体燃料、バイオ燃料、電気、水素などがある。それらの燃料が、従来車から、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)まで、多くのパワートレインに使われている。この中で石油は安価で扱いやすい燃料であるため、現在の主流だが、今後は徐々に多様化が進んでいくものと考えられる。すなわち「省石油」と「燃料多様化」の取り組みがますます求められる。

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自動車用燃料パワートレインの多様化

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 まず、省石油を実現する技術として、トヨタが最も重要視しているのがハイブリッド技術だ。オートモーティブ ワールド2014の基調講演に登壇した奥平氏は、その代表格として誕生したHVである「プリウス」の開発経緯から紹介した。

 プリウスは1993年秋から開発が始まった。「開発チームに与えられたテーマは2つ。21世紀のクルマをつくること。もう1つはプリウスの開発を通して、従来の開発方法を変えることだった」(奥平氏)と当時を振り返る。新しいクルマをつくるにあたり、利便性・快適性を維持しながら、21世紀の大きな課題である「資源・環境問題」を解決することもコンセプトにした。

 そして1997年12月に、エンジンとモータを併用したHV・プリウスが誕生した。「21世紀にも、COP3にも間に合った。わずか4年間という短い期間だったが、実はそれまでに積み上げた長い蓄積があって初めて実現できたものだった」(奥平氏)。現在、トヨタはHVを、乗用車からSUV、ミニバン、商用車までの全カテゴリに拡充している。HVの販売台数は、2012年に初めて100万台を達成。2014年1月に600万台を超え、本格的な普及期に入った。現行プリウスは3代目に進化し、燃費は38km/リットルまで伸び、さらにTHSのコストも約3分の1まで下がった。

 奥平氏は、第3世代を超える環境性能を目指す次世代プリウスの概要について「いっそうの小型化、軽量化、低価格化を進めていく。具体的には、エンジンの最大熱効率の目標を現行の38.5%から40%以上とし、モータの小型化や出力密度も高めていく。またエネルギー密度を向上させたバッテリの開発も進めているところだ」と語った。

HV技術のノウハウを次世代環境車に転用

 トヨタではこのように、ハイブリッド技術を燃費向上の切り札にしているが、これらは、PHV、EV、FCVといった次世代環境車に共通利用できるコア技術でもある。HVの電池容量を増やし、外部充電機能を追加すればPHVになるし、PHVからエンジンと燃料タンクを取り除くとEVになる。さらにHVのエンジンと燃料タンクを、燃料電池と水素タンクに換装すればFCVとなる。HVで培ったノウハウが迅速に転用できるわけだ。

 代替燃料の多様化により、将来的にさまざまなモビリティが登場してくるだろう。奥平氏は、現時点でのモビリティの棲み分けについて次のように説明する。

「航続距離や充電時間に課題が残るEVは近距離用に使われる。またPHVはEVに比べて航続距離が長く、エネルギーの充電時間も短いこともあり、乗用車全般の広い用途に適する。ただし新たなインフラが必要で、インフラとセットで普及していかねばならない。FCVは中距離用というイメージだ」

 石油に代わる電気・水素・バイオ燃料・天然ガスなどの代替燃料はどれも一長一短がある。国・地域によってエネルギー政策も異なり、トヨタでも将来の自動車用燃料の方向性を絞り切れないため、全方位での開発を考えているそうだ。

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ITS世界会議東京2013のトヨタブースにて出展されていた超小型EV・CMOS。豊田市の「ハーモ ライド」プロジェクトの概要も紹介(筆者撮影)
 まずEVだが、走行中の排ガスがなく、騒音も小さく、家庭で充電ができるという特徴を持つ。一方で、航続距離は短く、電池コストが割高、急速充電にインフラ整備が必要という課題も抱えている。そのため近距離用やフリートユースで使われる。たとえば特定目的で活用されている事例として、豊田市の「ハーモ ライド」というプロジェクトがある。これは超小型EV・CMOSを利用したシェアリングサービスだ。

「現在100台のCMOSを導入しており、公共交通機関と連動することで、CO2排出の削減と利便性の双方に配慮した最適な移動手段を目的に実験を行っているところ。経産省の次世代エネルギー社会システム実証地域の選定を受け、2010年から14年までの5ヵ年計画としてスタートした、低炭素社会実証プロジェクトの一環だ」(奥平氏)

 次にHVとEVのメリットを活かしたPHVだが、トヨタのPHVは電気だけで25kmほど走行できる。EVの場合は、すべての電気を使うと停止してしまう不安感があるため、実際に乗れる距離はどうしても短めになってしまう。PHVの場合は、日常は電気だけで走行し、充電能力を使い切ったら、燃費の良いHVとして使えるため、遠出しても心配がない。

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ITS世界会議東京2013のトヨタブースにてにて参考出展されていた非接触充電技術。磁束の強さの変化と磁場の共振現象を利用した新方式で充電効率を向上(筆者撮影)
「我々は、PHVをHVに続く次世代環境車の柱として開発を進めてきた。プリウスPHVの走行実績(約680名のユーザーデータ)では、1回の運転あたり平均燃費は33.9km/リットル。驚くべきことに約2割のユーザーで50km/リットルを達成している」(奥平氏)。

 EVやPHVには、リチウム電池が搭載されている。トヨタでは、電池で航続距離を伸ばすために、従来のエネルギー密度を遥か超える次世代電池として、「リチウム空気電池」の方向へ研究をシフトさせている。将来の電動化技術に向け、新たな固体電解質も開発し、出力密度も従来の5倍になったという。

 また将来の非接触充電の開発にも取り組んでいる。充電時にその都度プラグをさす手間を省き、簡単に充電できる仕組みだ。同社では、電磁誘導による従来方式でなく、磁束の強さの変化と磁場の共振現象を利用した新方式を開発中で、2014年に日米欧で実証実験をする予定だ。

【次ページ】FCVの最新動向、電気・水素グリッド融合のハイグリッド社会へ
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