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  • 2016/09/26 掲載

三菱電機はなぜ「競争力の源泉」である生産現場のノウハウをオープンにするのか

連載:「デジタル革新」実践企業のノウハウ

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三菱電機といえば、以前からサーボモータやシーケンサー(PLC)のように、工場現場で使うコンポーネントを開発し、市場に投入してきた企業だ。同社は、いま巷で流行りのインダストリー4.0が騒がれる以前から、生産工程の自動化と合理化を図る新しいFAのコンセプト「e-F@ctory」に取り込み、自社内でデジタルトランスフォーメーションを成功させている。その取り組みには、どのような決断や危機感があったのだろうか? 同社 執行役員 FAシステム事業本部 副事業本部長の山本 雅之氏に、経営コンサルタントの野間 彰氏が切り込んだ。
(聞き手:アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰)

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三菱電機
執行役員 FAシステム事業本部 副事業本部長
山本 雅之氏

工場を見える化する! FA化に先鞭をつけた「e-F@ctory」の取り組み

野間氏:貴社は2003年頃から「e-F@ctory」のコンセプトで、デジタル化による工場の合理化を進めています。なぜかなり早い段階から、このような取り組みを始められたのでしょうか?

山本氏:我々は、もともとサーボモータやシーケンサーのように、現場で使う自動化のコンポーネントを開発していました。これらを自社工場で使ってみると、いろいろなアイデアが生まれてきました。各機器をつなげることで、自動化とデータの価値がわかるようになったのです。そこで、まずは工場内に埋もれている情報を見えるようにすることが、今後のトレンドになると考えたわけです。

 e-F@ctoryの背景には、ネットワーク技術が加速度的に発展してきたことにあります。我々は以前からオープン・フィールド・ネットワークの「CC-Link」を提唱してきました。データを見える化するには、機器を接続する必要がありますが、そのためのインフラ技術が育ってきたのです。それ以前は技術的に追いつかず、やりたいこともできなかった。ところがネットワーク技術の進展により、需要と供給がマッチして、一気に広がったのです。

野間氏:骨格となる基本コンセプトはどのようなものですか?

山本氏:やはりデータの見える化により、コストを下げ、品質を向上することが主な目的です。e-F@ctoryによって、現場起点の経営改善をめざし、人・機械・ITの協調による柔軟なモノづくりを活用することで、サプライチェーンやエンジニアリングチェーン全体にわたるトータルコストを削減できるようになります。

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e-F@ctoryは、現場起点の経営改善をめざし、人・機械・ITの協調による柔軟なモノづくりを活用することで、サプライチェーン・エンジニアリングチェーン全体にわたるトータルコストを削減し、支援する概念だ

 2004年から2008年にかけて、e-F@ctoryの取り組みにより、サーボモータの生産性が180%ほど上がり、不良率が10分の1に減りました。従来、故障や不具合が起きると、品質管理の担当が製造プロセスを順番にさかのぼり、要因を洗い出していました。しかしデータが見える化され、問題が起きる前にプロセスの変化を視覚的にとらえられるようになったのです。そこで傾向を分析して短時間で原因を発見し、不具合の発生を抑えられるようになり、トータルの生産性も上げられました。

野間氏:e-F@ctoryでは、改善につながるようなデータを、最初からすべて取り込んでいるということですか?

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アクト・コンサルティング
取締役 経営コンサルタント
野間 彰氏

山本氏:いいえ、すべてを取り込むビッグデータとは違います。やはりデータの取得と見える化には、我々の知見とノウハウが生きています。サーボモータであれば、分析に求められるデータを最低でも100以上は収集しています。モータの構造や製造法によって欲しいデータも変わってきます。メーカーによって必要な情報も異なってくるでしょう。

【次ページ】 自社の他工場で生産性を30%、稼働率を60%アップした具体的手法
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