【連載】現役サプライチェイナーが読み解く経済ニュース
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2023年11月末から12月にかけて、世界の国々が気候変動の問題を話しあう「COP28サミット」が開催されました。各国が企業による温室効果ガスの排出量の開示の義務化を決定、または審議が進んでいます。いよいよ本腰を入れて対応する必要が出てきましたが、何からはじめれば良いのでしょうか。今回は、先行して対策に取り組み、すでに温室効果ガス9割削減を実現したシーメンスの事例を解説します。
COP28サミットで合意された「超重要テーマ」
2023年11月末から12月初旬にかけて、世界の国々が気候変動の問題を話しあう「COP28」がUAEのドバイにて開催されました。
これは、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出削減の目標や、気候変動対策について議論される「国連気候変動枠組み条約締約国会議」の28回目の会議になります。締約国198カ国が参加し、日本からは岸田首相、各省庁の閣僚や関係者が参加しました。
今回の会議で焦点の1つとなったのは2015年のCOP21で採択されたパリ協定の「グローバル・ストックテイク(GST)」が初めて実施されたことです。
GSTとは、パリ協定で掲げられた目標「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」の達成に向けた世界全体の進捗を評価する仕組みであり、5年ごとに行われます。パリ協定以降、今回初めて実施されました。
今回のGST評価の結果は厳しいものでした。世界各国が今の削減目標のままでは、気温は今世紀中に3℃近く上昇してしまう恐れがあると報告されています。気温の上昇を1.5℃に抑えるには、2030年には二酸化炭素などの温室効果ガスを43%削減、2050年ごろには実質ゼロにする必要がありますが、現状では世界の二酸化炭素排出量は増えている状況です。
また、今回のCOP28では、2030年までに世界の再生可能エネルギーを現在の3倍まで急増させて、エネルギー効率を2倍にすること(たとえば、蛍光灯をLED照明に変えるとエネルギー効率は約2倍)、またこの10年で化石燃料からの脱却を加速することも合意されています。
なお、日本は2030年に温室効果ガスを46%削減(2013年度比)、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを宣言しています。これは企業にとってどのような意味を持ってくるのでしょうか。
温室効果ガス排出量開示の義務化、企業は何をすべき?
すでに日本と英国は、企業の温室効果ガス排出量の情報開示を義務付けており、EUは2024会計年度から大企業に開示を義務付ける予定です。オーストラリア、ブラジル、カナダ、香港、ニュージーランド、シンガポール、スイスなどでも気候関連財務情報開示タスクフォース(TCDF)の枠組みに沿って、気候リスク報告の義務化が提案され、審議が進行中です。
サプライチェーンにおけるGHG排出量の算出の仕方として、スコープ1・スコープ2・スコープ3という分類方法があります。これは、GHG排出量を算定・報告するために定められた国際的な基準「
GHGプロトコル」で示されているものです。この基準に基づき、カーボンニュートラル達成のために、自社だけでなく、事業活動に関係するサプライチェーン全体で削減に取り組むことが求められています。
■スコープ1:自社が直接排出するGHG
燃料の燃焼や、製品製造などを通じて企業・組織が「直接排出」するGHGを指す
■スコープ2:自社が間接排出するGHG
他社から供給された電気・熱・蒸気を使うことで「間接的に排出」されるGHGを指す。(例:オフィスビスで消費される電気…など)
■スコープ3:原材料仕入れや販売後に排出されるGHG
自社の「上流」にあたる原材料や部品やその輸送・配送、また「下流」にあたる販売会社、消費者、廃棄される場合のスクラップ業者から排出されるGHG排出までもが対象
なお、2023年6月には、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)がスコープ3の情報開示を基準に含めることを決定し、グローバルで事実上のスタンダードとなると報じられました。この基準は2024年度から適用可能で、日本でも2026年3月期の有価証券報告書からこの基準に基づく開示ができるとの見通しです。
すでに2009年からスコープ3を含むGHG排出量を算出している日立建機では、サステナブルファイナンスの資金流入が期待できるといった声も上がっていると日本経済新聞は
報じています。
こうした中、先行して対策に取り組む企業は何をしているのでしょうか。ここからは、世界でモデルケースとされている企業のサステナビリティの活動例について見てみたいと思います。
【次ページ】温室効果ガス9割削減、シーメンスの最強工場の秘密
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