現在、第4次産業革命に続く「第5次産業革命」の議論が盛んに行われており、各国は第4次産業革命の次の姿、つまりNext Industry 4.0に関するコンセプトを続々と発表している。たとえば、ドイツはIndustry4.0に続く方針として「2030 Vision for Industrie 4.0」を発表したほか、欧州委員会は「サステナビリティ」「人間中心(ヒューマンセントリック)」「レジリエンス」をコンセプトに持続可能な産業のあり方を目指す「インダストリー5.0(Industry 5.0)」を提唱している。日本でも経済発展と社会的課題の解決の両立を目指す「Society5.0」が打ち出されるなど、世界の第5次産業革命に向けた動きが加速しているのだ。ここでは、各国の第5次産業革命の最新動向を解説する。
そうしたドイツでは、現在どのような動きがあるのだろうか。主要な動きとしては、2019年の産業見本市ハノーバーメッセにおいて、Industry 4.0が2030年までにどのように進められるべきかを示した「2030 Vision for Industrie 4.0」が発表された。
また2020年11月には、この2030 Vision for Industrie 4.0に沿う形で、「Sustainable production: actively shaping the ecological transformation with Industrie 4.0」というレポートが発表され、具体的な取り組みのためのシナリオも提示されている。
ここからは、「2030 Vision for Industrie 4.0」と「Sustainable production: actively shaping the ecological transformation with Industrie 4.0(持続可能な製造 ~Industry 4.0によるエコロジカルな変革~)」について解説する。
■2030 Vision for Industrie 4.0
2019年6月、ドイツのIndustry 4.0推進機関である「Platform Industrie 4.0」が、今後10年の指針となる「2030 Vision for Industrie 4.0」を発表した。
2030 Vision for Industrie 4.0では重要なコンセプトとして「自律性(Autonomy)」「相互運用性(Interoperability)」「持続可能性(Sustainability)」が提唱されている。
2030 Vision for Industrie 4.0におけるサステナビリティとは経済・環境・社会の持続可能性を指し、その方向性としては(1)Industry 4.0の取り組み自体が持続可能であること、(2)Industry 4.0の取り組みが経済・環境・社会の持続可能性へ大きく寄与することである。
■Sustainable production: actively shaping the ecological transformation with Industrie 4.0
2030 Vision for Industrie 4.0によるビジョンの提示にとどまらず、具体的なシナリオの定義・社会実装に向けた取り組みが進んでいる。